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ピックアップ(PU)は、貼り付けたり、挟んだり、内蔵したりといろんな方法で楽器の直近から音を振動として拾うものです。PAでマイクを使うと他の楽器の音被りとか色んな問題があって、理想としてはPUが望まれることがあります。以下、NHKの技師と思われる方が書かれた論文はPUのためのものではありませんが、テレビの収録でも同様の音被りがあることが書かれています。
電気楽器類、特にエレキベースの音が、リードボーカルやサイドボーカルのマイクロホンにかなり高いレベルでまわり込むために、いろいろな位相差が生じる。そのためにVU計はダンピングが悪くなったような振れを示し、聴感上躍動感が乏しく、エネルギーを感じない音になる。筆者はこれを”ライブミキシングのヘドロ現象"と呼んでいる。このヘドロの量が多ければ多いほど迫力に欠けた音楽になる。このヘドロを少なくするためには、音のかぶりをできるだけ少なくするよう、収録前に充分な対策を立てておかなければならない。
レコード録音においては、レコーディング用スタジオがマルチブースとして使用でき、理想的な条件のもとでクリアな音創りができるように配慮されているが、テレビの歌謡番組は、前述のように悪条件下で収録しなければならないところに、大きなハンディキャップがある。(放送現業技術講座第5回 2. 音声技術II -番組制作技法- 浜田宏 テレビジョン学会誌 Vol. 36, No. 8 (1982) 746~747頁)
演奏する場所は色んなところがありますが、拡声装置(PA)のいらないところが一番いいですし聴衆にとってもそうでしょう。音だけに関して言えばスピーカーではCDと変わらないし、むしろCDの方が音はいいでしょう。それでも色々な、特に商業的な理由で大きなホールが求められたりしますので、拡声装置を使うのはある程度割り切るしかありません。この場合、二胡以外に大きな音の楽器があるとか、演出上の都合などで、二胡の音よりも他の音の方が集音されてしまうということがあります。完全に仕切って音被りがないようにするというのも簡単なことではありません。そういう場合にPUが良いのですが、実際の現場では胴のすぐ後ろに近接したマイクで集音されています。
音かぶりがあろうとも、最終的にはすべてミックスされて拡声されるのだから気を遣わなくてもいいのではないかという考え方もできるのでしょうし、PUに納得がいかないという事情もあって、2020年時点では割り切っている現場がほとんどです。ですから、ライブでの二胡の音というのはかなり独特だったりします。以前に小さなライブハウスで金管楽器やドラムセットが並んでいる前に二胡という配置を見ましたが、マイクは全ての楽器に立ててあり、見た目はきちんと分離できている感のあるものでした。しかしドラマーが違和感を感じたのか、マイクをスタンド毎触って調整したらそもそも音が入っていないことが判明してニヤニヤしていました。おそらく金管もマイクは入れていなかったと思います。
数十人収容の狭いところで必要とは思えません。しかし二胡にはマイクは付けています。ですからすべての音がそこに入って拡声されているのです。音量バランス的にちょうど良かったのでしょうか。二胡の音だけはっきり電子音系で、それ以外は生の音の方が大きいのでナチュラルでした。PUを使えば全然違っていた筈です。
ライブハウスなどでは、そこで雇われているエンジニアが音響を担当したりします。PUを使うのであれば、そこに設置してあるであろうダイレクトボックス(DI)に繋げば後はやってくれます。スタジオにおけるシェアは「パラアコ」という機材がほとんどを占めていると言われています(入力インピーダンス:10MΩ)。しかし二胡の場合、PUから直接DIの音は硬くて良くありません。これはエンジニアの方ではどうしようもないことがほとんどです。それで演奏者の方でPUとDIの間で何かするか、DIも交換させてもらうことになりそうです。PUが使われていない理由は、これが難しいからです。
二胡の場合、PUを使うと硬く変に鋭利な音になったり、鈍い音になったりするのは、インピーダンスがマッチングしていないからです。DIの入力インピーダンスが極力大きなものを選べば問題は出にくいですが、正確に合わせた方がナチュラルです。そこでAco Flavorのようなもので合わせ込むことで自然な響きにできます。
PU出力は微弱な信号で鮮度を失いやすいので、早い段階でノイズの乗らないクリーンな増幅をすることでより鮮明な音にできます。クリーンブースターという増幅器、EQが付いたものであればアコースティック楽器用プリアンプが使えます。
DIは高インピーダンスから低インピーダンスに変換するバッファーですが、その前後で使う機材は違うものです。何らかのやり方で音質に関与しようとする場合、高インピーダンス側では「エフェクター」と呼ばれる小型の機材を使い、低インピーダンス側では主に録音用の機材を使えます。API 500 ランチボックスのユニットはコンパクトということもあり普及しています。電源スロットにモジュールを差し込んで使います。
高インピーダンスで処理する場合に使われるエフェクターについては製造メーカーをわかる範囲で以下に列記します。リンクがないものはすでに倒産か死去、或いはウェブサイトがないものです。その場合でも中古では手に入るであるということでリストしてあります。左欄は国産、その下に東アジア、右欄はその他の外国製です。
メーカーの方から東洋楽器にも使えるものを出していると推薦があった場合、またユーザーが東洋楽器で使っているとレポートがあった場合は、マーキングしています。個人で作っているものは特に、ビルダーの考えが反映されていると思うのですが、我々は東洋楽器なので、これらの中から選択するのであれば国産の方が比較的合う可能性は高いと思います。中国のもので良いものがあるのであればその方が良いのでしょうけれども、2008年北京オリンピックで二胡の拡声装置を開発して上海民族楽器廠に納入したのはローランドでした。

エフェクターの類は、北京・新街口を回りますと比較的大型の店であれば置いていますが、数はそんなに多くはなく、BOSSが人気があるようでたいていどこでもあるので、市場の志向が偏っていることがわかります。BOSSは歴史がある、日本製、比較的安価、信頼性など中国人が好む要素を満たしています。それで中国メーカーはBOSSをコピーする傾向があります。激安で提供し人気もありますので、今度はそのコピーのコピーが出るなど、割と活況のようです。コピーはハンドワイヤードでの制作なので本家よりもクォリティが高い可能性もあり、実際一定の評価を得ています。しかし中国メーカーに面白みを求めるのは難しいと思います。中国人の場合、オリジナリティとか面白みを求めることについて「どういうメリットがあるのか?」という考え方をするので、根本のところから違うと思います。手堅いものが好まれます。そして徹底分析の結果によって右へ倣え的に皆同じものを買います。製作家にとってはホームランが打てないなら三振しかない市場です。中国の個人ブランドはウェブサイトを持っていない傾向がありますが、自社の製品について説明をほとんどせず、問い合わせにもほとんど答えません。これはおそらく市場の傾向と関係があると思います。顧客が自分の考えではなくて他人の動向を見て買うのであれば説明しても意味はありません。ウェブサイトを持つと自社の製品が中国製ということが明らかになるだけなのでメリットがありません。こちらが真面目に考えて中国製を選択するようだとメーカーの人からも「あなたおかしい人」とはっきり言われるぐらいです。「他人の意見はいらない。自分で見なければ何もわからないのと同じである」とこちらもはっきり言うと「外国人?」とこう来ます。そして驚くべきことにメーカーの人が自社製品も含めて中国製を買わないように助言します。調査はしないで欲しいという意味だと思われます。ともかくこういう状況であれば、スタンプを押したような似たものしか出てきません。驚きの費用対効果であるとか、BOSSが好きだけどハンドメイドが欲しいという面に惹きつけられるのであれば、中国製は面白いと思います。
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