呂建華黒檀北京六角人工皮二胡1 - 二胡弦堂

 

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 呂建華師の工房は実際には様々な質の材を使うのですが、安価な材はご本人は非常に嫌っています。だけど呂建華二胡が買いたいけれども予算がないという人は多いので、しょうがなくそういうものも供給されています。また外国の販売店が安価な呂建華二胡を仕入れたがるようです。これは理由はわかりますね。弦堂も仕入れたいけれども呂建華師から「やめてくれ」と言われています。それぐらいなので、妥協して安価な材を使うとしてもなるべく良いものを使いたいということで、材全般は呂建華師自ら香港まで行って調達しています。

 ある時弦堂が1把の二胡を取り上げて「素晴らしい材ですね。これは花梨ですね」と言うと「違うよ、酸枝だよ」。どちらも黄檀だし、薔薇科なのでほとんど一緒だと思うし、海南花梨は特別なのでこれを省いたその他の上質の花梨は酸枝というのですが、何れにしてもそういうものです。大陸で花梨というと安価な材になってしまうので、呂建華師の言われる意味はそれではないという意味でしょう。花梨の一級材は非常に音が良いので「これは良いですよね」と言っても「良くないよ」とまあ、こうなるわけですが、プロの演奏家で、これまで様々な二胡を購入したけれど、一番良かったのは安価な紅木だったと言う人がいますね。その紅木の最高材がこれです。「よく見つけられましたね」「・・・」とこうなります。

 そこで予てからの懸案だった、手頃な人工皮の二胡をどうやって調達するか、この材だったらどうかということになりました。人工皮は本物の皮よりコストがかかるので、それでも尚、コストを圧縮して質を落とさずに作ろうと思えば、ちょうど良いのがこれなのです。演奏旅行に持ち歩くので、あまりに高価なものは困りますね。それともう一つはサイズです。短い方が持ち運びしやすいということと、一番破損しやすい琴頭をどうするかという問題があります。そこでこの写真のタイプが良いのではないかということになるのですが、これは元々、王暁南さんがすぐに二胡を折ってしまうやんちゃな生徒さんのために呂建華に特注したものでした。子供用だったのです。しかしデザインが良いということでご本人も特注してこれでテレビに出演したりしています(写真)。しかも少なくとも2把は持っていて、そのうちの1把はオリジナルデザイン1で使われた白木の弦軸を採用しています。この軸は呂建華師が非常に良いと評価しているもので、白軸の最初の発注者は弦堂で馬骨胡2のオーダーで使われました。その時に材が選定されたものです。その後、棒型琴頭は台湾の温金龍も使うようになったとのことで、まあせいぜいこれぐらいしか広がっていないので、市民権を得ているとは言い難いですが、人工皮二胡の用途を考えれば有用なデザインではあります。「もっと短い方が持ち運びは良いけれど格好は悪いですね」「そうだよ君、そんな短いのはまともに見れないよ」となって、長さについては適当と思われるあたりに落ち着いております。

 ところが出来上がってきたものを見に行くと何か変です。「これ、酸枝ですか?」「違うよ。黒檀だけど」「え?高くなるんじゃね?」しかし呂建華さんにはすでに人工皮二胡に関する条件を伝えてあったので「金額は心配ない。しかし・・」とのことで最初に言われていた金額よりは少し上がりました。どうしても酸枝は使いたくないみたいですね。ということで、こういう経緯で結局楽器そのものに関しては"安価品"にはならず値段もそこそこになっておりますが、当初よりも相当なディスカウントになって他は何も変わっていないというありがたい状況に落ち着きました。銘は胴の中に入っております。駒は呂建華師が削ったものが1つ入っています。

 人工皮の製造者は黄顕海という人物で、噂では1000もの試作品を作ったと言われています。闵惠芬が演奏会用の二胡2把を彼の人工皮に張り替えて10年使っていたということも知られています。黄師は現在、中国音楽家協会二胡学会の理事です。従って一発屋では断じてない、怪しいものではない、いきなりポケットから出してきたようなマジック的なものではないという点はご理解いただきたいところです。弦堂が入荷しているものも黄師が皮を張ったものです。黄師の教官だった人物は呂建華です。

 人工皮は気候などの外的要因でコンディションを乱されないので移動の多いプロ奏者は使いやすいものです。音も安定しているので二胡の面倒をあまり見なくても良いということでステージで演奏機会の多い人には重宝されます。海外の場合であれば税関の問題も回避できるし、そういう面で望まれていたものですが、どうしてもちょうど良いものがなかったので特注になりました。黄師によるとすべて人工皮に変えてしまっても良いと、それぐらいのクォリティですが、問題はそこではなく、本皮の不安定さ、弱点こそが本当に重要なのだということがこういうものを見て感じられます。特に初心者は人工皮の方が扱いやすいでしょう。しかしそれでもやはり本皮に悩まされた方が身に付くのでは?と思ったりもするし、本皮特有の雑味を体感することは重要なのではないかとも思ったりします。

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