インピーダンス ~ 中国音楽の再生と録音 - 二胡弦堂


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 インピーダンス(単位:Ω オーム)とは、電気の流れを止める抵抗のことで、ケーブルように率直に電気を通すものは0Ω(完全に0Ωではない)で、絶縁に近づく毎に数値が上がります。1000Ω=1kΩ(キロオーム)、1000kΩ=1MΩ(メガオーム:Mは大文字)で、使われるのは特殊な場合を除いてほとんど1MΩ以下です。最初に作られた抵抗はおそらく電球のフィラメントです。電気の流れがフィラメントで阻害されることで発熱、発光させています。もし電球内部のインピーダンスが0Ωであれば、電気は素通しされるだけで何の作用も及ぼしません。同じく、音響機器は内部インピーダンスを持っていて電気を含んで活用できるようになっています。内部インピーダンスはその機器の出力インピーダンスと同じです。入力と出力があればほとんどの場合、それぞれ異なるインピーダンス値になります。そして前後の機器のインピーダンスとの関連が重要になります。もしある機器のインピーダンスが1kΩだったとして、その後段に繋ぐ機器が10Ωだった場合、信号はほとんど流れていきません。低域に少し存在を感じられる程度かもしれません。しかし逆だった場合は、信号の受け渡しに問題はなさそうです。インピーダンスが高いというのは、表現が適切かわかりませんが、電気を吸う力が強いという感覚なのです。ですから低い出力インピーダンスに高い入力インピーダンスで受けます。これを「ロー出し、ハイ受け」と言い、重要な原則とされています。

 マイクは空気中の音の集音なので入力は関係ありません。しかし出力の方はヘッドアンプに接続するのでインピーダンスがどれぐらいかは必要になり、必ずスペック表に記載されています。20~600Ωぐらいでいろんなものがあります。200Ωや600Ωが一般的かもしれませんが、受けるアンプの方もそれに合わせて200,600Ωに合わせることができます。しかしこれは昔のやり方で、今は最低でも1kΩぐらい、できればマイクの10倍はあった方が良いとされています。現代の安価なミキサーは2k~4kΩぐらい、現代のプロ機器は10kΩとかなり高くなっています。いろんな考え方がありますが、しかしマイクのインピーダンスより低く受けるというのはどの時代にもありません。

 トランジスタが出始めた50年代頃にはヘッドアンプのマイク入力が200Ωとか400Ωというものがありました。写真例は独クラングフィルム Klangfilmが設計したミキサーで、a1~a5の入力がマイクになっており200Ωと記載されています。昔の高品質のマイクはインピーダンスが非常に低く、リボンマイクは30Ωぐらいでした。ダイナミックマイクは現代と比べて規格は揃ってはいませんでしたが、200Ωぐらいというところだったようです。それでちょうど200Ωで受けるようなこういう機器があったようです。

 マイクは可能な限り最大の信号電圧をロスなくアンプに供給するのが理想です。そのためにはマイクへの負荷を軽減する必要があります。そのため受けるアンプの方で1kΩ以上の入力インピーダンスが望まれるようになってきました。こうすることによって信号が大きくなり、マイクのインピーダンス変動による周波数応答の偏差が小さく、その結果、歪みが少なくなりました。Neve1073は1.2kΩ、API512は1.5kΩ、UA610はおそらく1.6kΩ、ICの時代に入ってSSL4000番台にもなると4kΩでした。初期には200Ωなどを使っていたドイツも、トランジスタ時代のだいぶん早い段階で2kΩや4kΩに進んでいました。ドイツ系は主にクラシック用途なのでこの辺りが主導して高く高くとなっていったのかもしれません。この流れで最終的に10kΩまで到達したようです。

 このような要求の背景にはポピュラー音楽、これは現代基準のポピュラー音楽ではなく、昔のジャズからロックなどそれぞれの時代で流行していた音楽ですが、これらがますます大きなサウンドレベルを必要としたことと関係があります。現代人が欧州などでクラシックのコンサートやオペラに行くと最初にまず思うのが「こんなに音が小さいのか」ということです。そこで現代の常識に合わせるため、オペラハウスに目立たないようにスピーカーを仕込むようなところが出てきて、そういうものをヤマハが提供したりしています。それぐらい昔と現代では音量の認識にギャップがあります。ドラムの音などに従来より破壊的なパワーを求め、そういうものが普通になってしまっていますが、このような音を採る時にコンソールの入力インピーダンスを高めることで大音量入力時の歪みを減らし、高い透明度を得ることができました。

 ヘッドアンプの入力インピーダンスを高めるのはコスト面も含めて容易ではないので、現代でも安価なミキサーなどはインピーダンスはそんなに高くありません。それでも幾ら安価なものでも2kΩはあるので必要性は十分なのでしょう。こういうものが鈍った安っぽい音になりがちなのはこのインピーダンスとも関係はありそうです。現代でも昔の設計のまま継続されているAPI512、UA610はインピーダンスも低いままなので鈍った古い音がしますが、こちらは愛されています。単に質の違いですが、インピーダンスを下げれば、現代的な透明度は失うが甘美な太い音になりやすくなる傾向があります。Neveの古い音はたいへん人気がありますが、昔は1.2kΩだったのに今は10kΩになっていることについてRupert Neveにクレームをつけるプロのエンジニアが結構いるようで、Neve本人が公開で反論するなどしていますが、「昔に戻れ」とあまりにも言われるのでようやく対応するとそれはかなり人気になったりしています。有名なところではジャスティン・ビーバーがNeveのそれをレコーディングはもちろんライブでも使用するようになっています。それはトランスインプットになり2.2kΩと昔よりは高いですが、現代は低くても2kΩということを考えるとこれで限界なのかもしれません。特に現行のリボンマイクで2kΩ近くを、マイク自体の出力インピーダンスはもっと低いのですが、合わせるアンプについてはそれぐらいを公式に要求しているものもあって、そういったものが使えなくなると困るので昔のような1.2kΩには戻せなくなっているという理由もありそうです。

 大音量が要求されるようになった頃には、少なくとも1kΩ以上にしてくれと言われるようになり、現代では低くしてくれと言われるという、どんどん高度になってゆく現代ではどちらも必要な筈です。トランスは中点タップを使って巻線を半分にするとインピーダンスが1/4になるのを利用し、ヴィンテージ機器のクローンはスイッチで2段階に切り替えて、かなり低い、つまり大昔のクラングフィルムのような凄く低いインピーダンスも選択できたりするものが結構あります。例えばNeve1073のクローンであれば、1.2kΩと300Ωが選択でき、現代人気があるマイクを使う時に、それらはほとんど200Ωぐらいですから、かなり接近してのマッチングができるようになっています。300Ωはオリジナルにはなかったものです。その上で大音量を突っ込めば飽和(サチュレーション)して、ヴィンテージ独特のサウンドの太さや味が得られるというわけです。

 日本で昔、松竹、東宝、大映、東映、日活などでスターが活躍していた時代に作られていた国産のマイクアンプは現在ほとんど残っていないので全貌がわからず、ここに回路図も貼れないぐらい何もわからなくなってしまっているのですが、日本の場合はもうこれぐらいの時代からインピーダンスを切り替えていたと言われています。その種のアンプに内蔵されていたインプットトランスの1つで、タムラ TPS-77(昭和30年代)というものがあり、これは30Ω、250Ω、600Ωのタップが出ています。30Ωというのは明らかに昔のリボンマイク用で、後の2つは現代でも普通に使えそうな感じですが、マイクの微弱な電圧が通るところにスイッチを入れるわけで、そこまでしてマッチングさせたいのか?と思うのが普通です。600Ω固定でなぜいけなかったのか?・・とことん音の太さにこだわっていたのでしょうね。TPS-77は二次側が1.2kΩなので現代のアンプでトランスレスのものであれば、ノイズは気にせねばなりませんが、インプットに挿入することは可能だろうと思います。他のマイクトランスについても、より二次側のインピーダンスが高いものであっても現代の10kΩなどのアンプであれば同じことは検討できます。そう考えると10kΩのように高いものはトランスを嵌め込むには使いやすいと見ることもできます。ただこれは理論上であって、実施する場合はノイズ対策に悩まされそうです。

 似たようなものとしては東独RFTのモジュールでは昇圧比率の変化で記載されており切り替えも4段階、インプットは1kΩ固定で2次側を変化させていたというものがありました。一次側を変えているわけではありませんが、しかし味は変わるはずで、トランスの持ち味だけでなくアンプに突っ込む音量も変わることでイメージも変わってきますから、ここでいい感じのポイントを探し、そのため4段しかなかったのだと思いますが、その上でメインボリュームは後段に配するという構成でした。コンソールではこのメインボリュームの位置にフェーダーが置かれ、基本的にはユニティ(+-0の位置)に合わせた上で状況によって上下に調整できるようになっています。ということはユニティから離れると理想のスイートスポットから逸れることになり、その理想は標準的な理想に過ぎませんから、そこをフェーダーがないヘッドアンプではトリムという微調整的なものに置き換えてプラスマイナスに振って音の感じを調整するというものなどがあります。

 では、中国音楽の場合はどうなのでしょうか。中華業務用の古いヘッドアンプは250Ωから始まって、すぐに600Ωが主流になりました。切り替えなどの面倒なものはなく600Ω固定です。録音の時のマイクの使い方もいろいろで、二胡であれば、楽器に近くから向けて録るものは600Ωで使いたくても、それ以外に離してステレオで立てたものは10kΩの方が良いという場合もあるかもしれません。これはおそらく上手く行かせるのは簡単ではないかもしれない、やはり600Ωが合いそうですが、中華業務機器がステレオ仕様になっても600Ωのままだったので、中華はこれぐらいが標準だったようです。このようなインピーダンスのヘッドアンプは今時ないので、実施は難しいと思います。

 現代の多くの機器の出力インピーダンスは150Ωです。ヘッドアンプも含めて入力は10kΩが標準になっているようです。安価な機器でもヘッドアンプ以外はそれぐらいはあるようです。昔の機材はいろいろですが、そういう一般的でない値のものを持ってきても10kΩもあればほとんどのものに対応できます。機器の接続の間に好みのトランスを挟みたい場合も、インピーダンスマッチングに留意する必要があります。トランス自体が推奨インピーダンスを持っている場合と、単に比率だけというものもあります。比率の場合は、1:1とか1:3などと記載されていますが、音量が上がるか下がるものは適切なレベルに保てるか気をつけなければなりません。インピーダンスが決まっているものはその定格で使わないと周波数特性が狂います。150Ωの出力に一次600Ωのトランスを繋ぐのは大丈夫ですが、100Ωなど繋ぐと音が曇ったりします。トランス2次側は8kΩだったとします。そこへ10kΩの入力に繋ぐのは理論上問題ありません。しかしスペック表に書いてある10kΩが正しいかどうかはわからず、またデジタル機器が相手であれば合わないことがあります。1次側の方の状況で2次が必ずしも8kΩで出ているかもわかりません。よく「トランスは使えない。音が曇るだけだ」という人がいますが、彼らが聴いたことのある音はマッチングしていない音です。それぐらい結構はっきりわかります。測定で合わせ込むのが正しいかどうかもわかりません。トランスの周波数スペックがナローレンジ、こういうものをかまぼこ型特性と言い、音声用であれば400~3.5kHzなどというものもありますが、実際に測定すると上は16kHzぐらいまでは伸びているようなものもあります。ですから音楽でも使えるのですが、メーカーの方ではおいしい音が鳴るのは3.5kHzまでと認識しています。しかし声の帯域で美しく作ってあるものは非常に魅力があるので、多くを理解した上で音楽鑑賞に使う人もいます。スペックやグラフだけでは全てはわかりません。客観的指標としては有用なので、できればあった方が良いものです。

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