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音楽を聴くのにスピーカーというのは重要なので、パソコン内蔵とかそういうものから離れて、スピーカーの選択で自由を得ようと思えばパワーアンプも用意する必要があります。録音でも録ったものを確認することは極めて重要です。適切なパワーアンプを一台持っておけば、どんなスピーカーを持ってきても鳴らすことができます。
アンプは増幅素子に何を使っているかで3種類に大別されます。真空管(チューブとも言う)、トランジスタ(ディスクリート)、IC(集積回路の略。回路を共通規格化してブラックボックスの中にコンパクトにセットでまとめたもので誤差を減らして安価に製造可能)です。それぞれ支持者がいますので、例えば真空管が最高だと思っている人は他のものは否定するし、一方で真空管は使えないと思っている人もいます。ICは結局インスタントなものだから、ディスクリートには勝てないという人もいます。またICが最も進化したデバイス、デジタルはさらに素晴らしいという人もいます。しかし結局、何を選ぶにしても良いものは良いし悪い物は悪いです。真空管でも良し悪しがあって、ICでも同様です。結局、プロの録音技術者たちがこれらの全てを適材適所で使い回していることが全てです。どれかが悪いのであればプロに使われることはありません。良し悪しではなく傾向があるというだけです。2008年のリーマンショックの時に音響用ICを作っていた優秀メーカーがかなり倒産したので、最近は音響メーカー製でもディスクリートで組む場合が多くなっています。古い優秀なICが中古市場で見つかれば自作ができるなら使うことはできます。こういうのはオペアンプと言うこともあります。オペアンプはICですが初期の大型のものは中身がディスクリートになっているものもあります。FETという真空管の特性に近いトランジスタもあります。最近はコルグがNutubeという蛍光管を使ったミニチュアの真空管を開発し、真空管特有の問題点を解消しました。
現代製品の真空管アンプはいんちきが多いです。つまり、真空管を抜いても普通に動作する、点火しているだけで騙しているようなものが平気で何年もベストセラー的に売り上げていたりします。安過ぎるとそんなものでも売れるんですね。買う方も格好がつけばいいから買うんですね(このヒーター点火だけでも音は一応変わります)。そういうのを見て、真空管は悪いと思っている人が結構います。まともに真空管を使っているアンプでも、真空管が電源喰らいであるのを無視して細い供給しかしなければ持ち味を失い元気がなくなります。市販品ではそういうのが多いです。本当に良いものを適切な価格で入手するのは難しいものです。これは真空管だけでなく他の素子についても言えることです。マイクアンプについては、真空管を本格的に使ったもので中古やヴィンテージは避けた方が良いでしょう。ノイズ対策がたいへんなのです。これは多少ノイズが出ようとも構わず使っていくのですが、オープンリールなどのアナログ機器で記録するならいいですがデジタルは合わない、だけどデジタル対応してある最近の製品だと問題ないだろうと思います。SN比と言いますが、Sはシグナル、Nはノイズでその比率ということですが、SNがアナログとデジタルでは同じようには捉えられないので、真空管に関してはですが古いものは改造して使うのでない限り難しいと思います。現代のメーカー品は特に電源周りを強化して厳重にクリーンにすることでSN対策をしています。
真空管はメンテナンスとかいろいろ面倒な要素があるので、まずはディスクリートやICの方から考えたいものです。出力が大きい傾向がありますが、実際家庭で鳴らすのに、かなり大きな家に住んでいたとしても数十W(ワット)もの出力は必要ないし、小出力の方が音質は良いです。
実際には家庭で1W使っているかどうかというところでアンプのポテンシャルの1/100ぐらいで鳴らすということであれば性能が出ないのは当然です。1Wのアンプを持ってきてしっかり流した方が良いわけです。その機器のちょうど具合が良い音量レベルのことを「スイートスポット」と言い、この言葉は主に録音関係で使われますが再生では議論されません。なぜならスイートスポットがどこかよりも適切な音量にしないとどうしようもないからです。音が良いからと言って巨大な音を出すわけにはいきません。また再生ではそういう意味でのデリカシーは録音ほど重要ではありません。しかし録音では具合の良い音量レベルでの受け渡しがかなり重要になってきます。再生においてもこの概念はある程度は持っていた方が良いでしょう。大出力アンプは全然スイートスポットに届かないことが多いのです。アンプは音を突っ込んだ方が持ち味が出るので、それが良いかどうかはまた別ですが、能力の範囲でしっかりと流した方が良いのは確かです。
30年代のトーキー映画時代には巨大な映画館でも3Wぐらいで鳴らしていました(写真右はNHK博物館に保管されている米WEの小出力アンプで、左はその中国のコピー、上海新亜無線電廠生産によるGY2と275C-1です)。その上で能率の高いスピーカーユニットを使い拡声していました。だけどこれはすごく贅沢で、能率の低いスピーカーに大出力アンプの方が安く作れるので現代の大部分の音響機器はそうなっています。一般家庭で聴く場合に高能率のユニットは要らないですが、大出力アンプも不要で、小出力の方が音が良いんだったらその方が良かろうと思います。しかし高能率ユニットの魅力に開眼すると「スピーカーは高能率に限る」と思うようになります。音の反応とか鮮度が違います。また永久磁石がなかった時代のスピーカーはボイスコイルに電源を供給しないと音が出ないという面倒くさい代物でしたが、なみなみと電源を供給したこの種の励磁型スピーカーは圧倒的な説得力があります。永久磁石スピーカーなんてゴミという人もいますがそれぐらいインパクトがあります。小出力というのは必ずしも音が小さいということではありません。確かに小さいのを小出力というのは間違いないですが、1Wでも普通の家庭ではかなりの爆音です。音質を徹底追及するメーカーは小出力アンプを作る傾向があります。スペック表を見ると大出力に数字で劣るので、わかっている人しか買いませんから狭い市場ですので、見つけるだけでも結構たいへんです。それだったらまだ真空管アンプの方が見つけやすいぐらいです。弦堂では10年以上前に個人で制作しヤフオクで販売していた方からモノラルのアンプを買ったことがあります(上掲の写真)。12,000円ぐらいでした。電源が日本の100V仕様なので中国の220Vに対応するため自分でトランスを上に載せて降圧していました。出力は1W以下です。でも大音量で鳴ります。これはオペアンプとトランジスタの両方が使われています。内部は完全にトランスレスなのでこの価格で提供できたのだと思います。こういうものを見つけた上で入力に自分でトランスを入れると一気に高級アンプに変わります。極めて密度の高い芳醇な音を吐き出すようになります。
アンプのクォリティはトランスに支配されます。しかしアンプがこんなに安かったらトランスの方がコスト高です。だけど価値はあります。トランスは製造国の個性が出ます。
小出力アンプというのは安い小さなアンプであると勘違いしてはいけません。出力が小さいということを意味しているに過ぎないので高価で大きいものもあります。タンスのように巨大なものも既に見ていただいた通りです。つまりここで言っている小出力アンプはデジタルアンプとして1万円前後で出ている製品とも違います。これらは小さくても20Wぐらい、数百Wのものさえあるので外観が小さく安かろうともこの種のものは小出力アンプとは呼ばれていません。こういうのは元はカーオーディオから来たものと思うので、悪いとは言わないですがここでお勧めするものではありません。そこで具体的にどういうものか探してみたのですが、バブル期には結構あったものがずいぶんなくなっていて、おそらく現在ではエル・サウンドぐらいしかないと思います。オークションで中古を探すとかガレージメーカーを探すこともできると思います。自作ではミニワッターという1W以下のアンプもあります(完成品がオークションで買えることもあります)。参考に、弦堂は2inchという小型のスピーカーをヘッドフォンアンプで鳴らしていますが、マニュアルを見て計算するとおそらく0.1Wぐらいです。普通のICを使ったものです。巨大な音は鳴りませんが十分に大きいのでボリュームはせいぜい2時ぐらいまで、それ以下でしか使わないぐらいです。それぐらい出力なるものは不要です。だんだん出力が低いものに変わってきて、ついに行き着くところまで来た感がありますが、本来は0.1Wは下げすぎでもうちょっと余裕があった方が良いと思います。しかし変えようとも思っていません。人が10人以上来ても音は大きすぎるぐらいなのですから。トランスで音の密度と浸透度を高めれば、圧が結構あるので大きな音は近所など考えれば出せないのですが、そうなってくるとなおさら大きな出力はいらないのです。ヘッドフォンアンプのような小さな音のものでスピーカーを駆動するのは異常ですが、能率の高いユニットであれば全く問題ありません。しかしこの使い方は多くのメーカーが推奨しておらず、実際すごく熱くなって壊れるものもあるので気をつける必要があります。スピーカーのインピーダンスは4,8,16Ω、大まかにはこの3種ですが、ヘッドフォンアンプの出力インピーダンスが使うスピーカーユニットよりも低ければ問題なく使える筈です。しかしメーカー発表値なので実際に使う場合は熱くならないか慎重に見るべきです。スピーカーの能率は95dB以上のものを選びます。そういうものはほとんど市場にありません。しかし本当に真面目に作っているものは高能率です。中国の伝統的なユニットで低能率のものはありません。中国は意外と肝心なところを抑えていることがあるのでおかしいと思っても安易に判断しないように気をつけねばなりません。
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