パソコンとインターフェース ~ 中国音楽の再生と録音 - 二胡弦堂


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 PCを使うデジタル環境は、録音にしろ視聴にしても現代では避けがたくなっています。特に録音でデジタルを捨てるのはかなり困難になってきています。PCオーディオという概念はだいたい08年ぐらいから出てきたものですが、当時から「PCなんかで音楽は聞けない」という否定的な意見が多くありました。その最大の理由の1つはPCはノイズが多過ぎるというものでした。しっかりした対策が求められますが、この環境はアナログとはまた違う新たな分野でした。デジタルへの挑戦は70年代から或いはもっと前から始まっていましたが(CDが出たのが80年)理論通りにいかない分野もあり、結局アナログには及ばないのではないかという雰囲気の中でのPCオーディオでしたから、否定的な意見が多かったのはしょうがないことでした。それでも利便性には優れていたので普及しました。そして現代に至るまでデジタル機器との格闘が続いています。その結果、かなり多くのことがわかってきています。

 PCのノイズで問題になるのは、アナログのような露骨な雑音よりも、聞こえないが音を曇らせるものです。ノイズと音声が潜在的に混濁します。このデジタルノイズのようなものはアナログにもあるし明確な区別はないのですが、それぞれ特徴は違うのでデジタル特有のノイズというものはあります。アナログのある種のノイズは快適なものもあります。しかしデジタルノイズで容認できる種のものはなさそうです。ノイズのタイプは異なるものの、対策の方は大筋で共通しています。それを踏まえた上でPCのノイズについてはおそらくおおまかに3通りのアプローチがあります。PCそのもののノイズを対策して消しにかかるか、PCから出た音からノイズ成分を締め出すか、或いはWi-Fiを使うというものです。無線を使うのはネットワークオーディオと言われます。適した機器を使うのでネットワークオーディオでの使用を踏まえた製品があります。かなり有効な対策とされていますが、録音もするという場合は採用しにくいのでここでは扱わないことにします。またオーディオ専用PCというものもあります。音楽を聞くだけに特化したPCです。これをWi-Fiと組み合わせる場合もあります。これらは現状では再生用です。

 PC内は様々な電磁波が発生しているのでこれが交錯してノイズを生み出すことがあります。そこでPCパーツブランドの玄人志向がNo-PCIというボードを発売し、銅箔を張った板で内部を遮断した上で最大のノイズ源である電源を浄化する平滑コンデンサーを搭載したものを用意していたことがありました。後にPC内部の基板が洗練されてきて、このような板で遮断などはしなくなりましたし、このようなやり方で電源を浄化することもなくなりましたが、おそらく現在までで中華のみがこのやり方を引き継ぎ、平滑コンデンサーをPCのあちこちの端子(ファンの電源,メモリスロット,PCI端子,PCIカードの外部電源,HDDのコネクタなど)に挿して電源を浄化してゆく対策をいくつかのメーカーがやっています。それらのメーカーの特徴はとにかくコンデンサーを爆発的に増やし(写真参照)、徹底したノイズ対策をしていることです。この辺の物量投入はいかにも中華という感じがします。確かに相当な効果があるでしょう。だけどこの対策で良しであればノイズ対策は簡単です。中華以外が全くやっていないのは、コンデンサーの値を高め過ぎると音のキレがなくなるからです(位相ノイズが生じる)。大量の並列接続は大容量のコンデンサーは大きくスペースに制限があるところに載せられないということもあると思いますが、それ以上にインピーダンスを下げる目的と思うので、このやり方でしばらく続けているということは一定の効果があるのでしょう。ではどうして中華はこのやり方を採用し続けているのでしょうか。まず商用電源220Vの品質問題があります。発電所からコンセントまでにいろんなものを通して電源が送られてきます。電圧も昼は205Vぐらい、夜は230Vに達します。安定した電源は期待できません。中華では人間の仕事の質は高くないのでコンピューターの仕事の方が評価されやすいです。演奏もです。皆さんは優秀な中国人演奏家の方々をご存知ですし、その先生方が日本で成功されていることもご存知なので「人間の仕事の質が低い」ということはないだろうと思われるに違いありません。しかしそれらの先生方は大陸に戻られると演奏会を開くことは難しいです。大陸でも演奏会はあるのではないでしょうか。しかしそれらの演奏会に代金を支払ってチケットを買って入っている人はほとんどいません。チケットはありますし金額も書いてあります。しかしそれは無料で関係者に回ってきたのもので、関係者でない聴衆が入っていることは稀です。そこで「チケットを売って下さい」と申し出るとどうなるのでしょうか。事務局に電話します。「売っていません」「売り切れたのですか」「席はありますがチケットがありません。あなたのように購入したいという人は初めてです」と言われ、世の中の物事に暗い気の毒な外人として扱われます。スポンサー企業がついているのは良い方で、ほとんどの演奏会は国や大学が主催して出資しています。演奏家本人が負担しているものもあります。皆さんがよくご存知の非常に有名な演奏家でも同じです。高級ホテルやレストランでは生演奏があります。しかし一般の人民にとっては流された音楽がはっきり電子音の方が安心感があります。8bitでも良いです。電子音でも生と変わらないものがありますが、そうではなくてはっきり電子音とわかるものが好まれます。どうしてなのでしょうか。音楽学院を卒業したような方々は皆優秀ですし、何かが特に足らないわけではない筈です。また優れた録音がないわけでもありません。しかしそれらは演奏者たちとは関係ないところで文革などの歴史的な背景というバイアスがかかります。それで西洋的なものを思わせる電子音は安心感があって好かれます。歴史認識的にクリーンなのです。ある意味、確実な仕事でもあります。これと同じ理由で二胡も西洋化に向かっています。北京市内を歩いていて聞こえてくる音楽は電子音ばかりです。こういう環境だと高容量のコンデンサーでがっつり整流しても問題にはなりにくいでしょう。質の低いPCと電源の盛大なノイズを退治できるなら、他に多少の問題があろうともその方が歓迎されます。またこのやり方は安く済みます。これは中国独特だと思います。このようなものはそれ以外の音楽、特にアコースティックには到底使えないと思います。では、対策はできないのでしょうか。PCそのものに対しては音楽専用PCを組むのでない限り特に対策しない、一般にはSSD(より速いM.2)に変える、メモリを増やす、100V電源の質に留意するぐらいではないでしょうか。

 それでもPCの中が効果的に浄化されるならその方が良い筈です。PCはデジタル信号を扱う箇所です。デジタルとアナログでは使うパーツが違います。ところが一部の中華メーカーはアナログヴィンテージパーツを使って平滑回路を組みます。このようなことをすれば、変な方向でかなり個性が乗ってしまいそうです。ネガティブに捉えられそうですが、これも電子音楽だと関係ないのでしょうか。ところがパナソニックまでが似たようなことをやっています。同社はある映像機器を販売した時に、使わないUSBポートを回路的に塞いでノイズ対策するパーツを無償で付けていました。これがたいへんな好評であったらしく、さらに改良して現在では有料で販売しています。内部の写真も見せていますが、使っている抵抗はアムトランス AMRGです。コンデンサは高周波通信機用ですが金田式アンプにも使われる双信 SEコンデンサで、これを3つ並列に使うという贅沢な仕様でパーツ代だけで高額になりそうです。AMRG抵抗は音感が巻線のような感じがあるし、SEはマイカ(雲母)を使う昔からある構造で非常に高価なのですがこのSEはインド・ビハール州に産するルビー・マイカを使用している高級品です。いずれも非常に上質なものではあるのですが少なくともAMRGはデジタル使用を想定してはいないと思います。しかし使用パーツが少量であればアナログ用のパーツでも結構使えるようです。USBは常に電流を流して何かが挿っているか否かを検知しますが、これがノイズを生むのでターミネートすれば、それだけでもクリーンになります。このコンデンサーは高周波成分をカットしてノイズを退治するものなので、中華のやり方とは違います。回路自体はほぼ同じなのですが、中華はUSBタイプでも容量の大きいコンデンサーを使い、パナソニックは容量の低いデカップリングコンデンサーを使うので回路の作用が異なります。パイオニアもDRESSINGという同種のものを製造していますが、こちらはEMIフィルター内蔵で基本的な考え方はパナソニックと同じです。うちには中華、国内のものに関わらず1つもないので自分で制作して確認しましたが、デジタル回路に対するアプローチとしては日本のやり方の方が理に適っているように思えます。この方がナチュラルでどんな音楽にも合い、一方でノイズははっきり減らします。空いたUSB端子にこのようなものを挿してPC内のノイズを適切に対策できるのであれば、もはや必須と言ってもいいのかもしれません。

 タワー型のPCは、PCI Expressカードが挿せるものもあります。そこに音響専用のUSBカードを刺すこともできます。おそらくカナダJCAT USB card FEMTO、後継のUSB CARD XEと韓国SOtM tX-USBexpの2社からの3種だけではないかと思います。現在JCATは海外から、或いはPCオーディオ専門のショップで取り寄せ可能です。SOtMはおそらく生産停止しています。いずれもたいへん高価ですが、その理由はクロックを独自に生成するためでしょう。高精度の水晶発振器は高価です。またPC内の汚れた電源を使うのではなく、外部から供給できるようになっています。電源は下記で扱いますアイソレーター類で解決できるので、クロックをどれぐらい重視するかで導入するかどうかが決まりそうです。ここまで費用をかける効果はなさそうなことから国内在庫として入荷しなくなっていったのかもしれません。うちではエアリア Straight2 KOUKI USB3.1 増設PCI Expressx4 ASMedia ASM3142という安価なものを挿しています。これは確かに安いが音響デジタル用途のOSコンを使うなど手抜きがない、USB 3.1で高速と不満はありません。USB 5V電源は別電源を引かないと供給できない仕様になっていますが、しかし調べると別電源なしでも電源は一応来ています。マザーボードが非力の場合に別電源で補うのかもしれません。いずれにしてもマザーボードのUSB端子に繋ぐよりもPCIカードの方が明らかに音が良くなります。音が澄んで濁りがなくなります。このようなものがあるのであれば、高価な音響専用カードは予算が豊富な現場に限られそうです。このような別途USBカードが挿せるPCI Express端子があるPCはかなり有利です。費用対効果が非常に高い、ですからオーディオ用PCには必ずPCI Express端子があります。

 PCでのオーディオ全般を考察する中で最も重要、不可欠とされているのはUSB端子からインターフェースに向かう間で断絶(アイソレート)することです。今や必須とさえ言われるようになっており、アイソレーターをインターフェースに内蔵しているものも増えてきています。アイソレートの最も基本的な構造はトランスで、これは一次と二次巻線が絶縁しており空気中で伝送します。これは実際のトランスを使って優秀な特性を得るのはかなり困難らしく、トランスの周辺回路と共にICチップに内蔵されたものが用意されています。ADUM3160です(リンク先に内部の構造が図解されています)。同じ規格で高耐圧のADUM4160と共に非常に使いやすいらしくまたコンパクトで完成品のUSBアイソレーターとして割と安価に購入できますし、インターフェース内蔵型もほとんどこれを使っていそうです。弱点は高速伝送ができないことです。USB1.1規格までです。表記は決まっており、

スロースピード 1.5Mbps USB1.1 mp3
フルスピード 12Mbps USB1.1 CD
ハイスピード 480Mbps USB2.0 ハイレゾ
スーパースピード 5Gbps USB3.0 映像

 現在はUSB1.1はありませんので、480Mbpsまでの3段階をUSB2.0規格で対応しています。ギアチェンジのようにスピードモードを替えて適切な伝送を行えるようにしています。地上波テレビで最大17Mbpsということなので、音だけであればUSB2.0規格で十分なスペックです。ハイレゾ(CDを上回る情報量)は480Mbpsが必要なので大抵のインターフェースはここまで対応しています。ですからADUM3160では繋がらないインターフェースがありそうです。一方、USB3.0は音響では使いようがなさそうですが、2020年ぐらいからUSB3.0対応のインターフェースが出てきています。しかしこのタイプは新しいのでUSB2.0でも繋がる配慮がありますし、実際にはせいぜい480Mbpsまでしか使っていない筈なので、アイソレーターの方でUSB3.0に対応したものは音響には必要なさそうです。しかし480Mbpsへの対応は必要になりそうです。そうしますと高速のチップが必要ですがこれはいろいろ難しいようです。高速アイソレーターを最初に作ったのはドイツのイントーナ社で2015年に発売された医療向け機器でした。音響用途には幾つか問題があったので克服した新型も販売しています。USBから供給される5Vバス電源も浄化されます。後発の他社ではiFi audio、HuMANDATA、HiFimeDIYなどがあります。

 アイソレーターを使用しても尚、PCから流れてくる5Vはかなり汚れているのではないか、別に用意した方が綺麗なのではないかということで、アダプターのようなものもあります。Aurora Sound BusPower-Pro2iFi Audio iDefenderなどがあります。それなりに効果はあるとされていますが、製品はそんなに出ていない印象です。あまりにいろんなものを通しすぎるとレイテンシー(音の遅延)の問題が出そうなので、アイソレーターを使うのであれば、そこへ外部供電できる端子が欲しいところです。おそらく別電源化よりアイソレーターの方が重要です。尚、アイソレーターはPCからの入力をインターフェースに出力して使いますが、インターフェースを使わず、PC内蔵のスピーカーで鳴らす場合でも繋いでおけば音が綺麗になります。

 Mac OSは古くからUSBオーディオに理想的に設計されており、一方WindowsはCPU負荷が高い状態で低レイテンシー動作は現実的に不可能でしたので、この事情からプロが使うのは今でもAppleが多いです。OS XにはCore Audioという音響専門のソフトウェアも入っています。しかしWindowsも近年のものは改善されています。それでもまだ現状ではOS Xの方が有利です。OSはかなり重要です。USBにインターフェースを繋ぐのは何でも変わらないようにも思えますが、OSによって最適動作が変わってきます。

 オーディオインターフェースはほとんどの機種で、アナログ、デジタルの両方を入出力できます。再生専用のものもあります。録音業界ではインターフェースと言いますが、オーディオでは同じものでもDAC(デジタル/アナログ・コンバーター)と呼んでいます。我々は録音できるものにした方が良いです。録音は確実にしないという場合でも、ネットでレッスンを受けるのにマイクの差し込みはあった方が良かったとなる可能性があるからです。1,2万円ぐらいのものが多いです。それより上はかなり少なくなってきます。デジタル録音もそれなりに歴史ができてきたので何が良いのか集約されてきて、ハイアマチュアや低予算のプロではRMEを使っている人が多くなっています。もっと良いものもあるので最高ではないのですが、費用対効果も考えていくとこのあたりに落ち着くようです。上記のイントーナもそうですが、ドイツの音響デジタル機器は世界で抜け出しているのは間違いないと思います。ドイツ製にしておくとバッチリ仕事ができる感があります。買う前は「高いな」と文句を言いながら買うのですが、製品のクォリティがわかってしまうと「こんなに安くていいのか」に変わるのはドイツ製品全般に言える特徴です。諸国とは技術力がだいぶん違うように思います。日本製も同じような特徴がありますが、ちょっとニュアンスが違います。インターフェースに関しては他に米ユニバーサル・オーディオ UNIVERSAL AUDIOのApollo、英プリズムサウンド Prism Sound、日タスカム Tascamなども高い評価を受けています。



 アナログにはコンソール(ミキサー)がありましたが、インターフェースはデジタルなので上掲のように画面上のミキサーを操作します。しかしインターフェースに付属してくるこの種のドライバーは音を出し入れするだけで、そこはアナログのコンソールと同じです。コンソールも録音はしません。別途、古くはテープとか、現代だとPCとかデジタル録音機に音を記録するのですが、それに相当するものはデジタルではやはりPC画面上のDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)というアプリを使います。Appleの場合は始めからGarageBandというDAWが入っているので基本これで十分です。Windowsは別に用意する必要がありますがフリーのものが割とあります(PCに付属のソフトでも単チャンネルで録音することはできます)。インターフェースに付属で付いてくるDAWもあります。業界ではPro Toolsが有名です。無料版もあり、Apple,Windows共に使えます(無料版のFirstはディフォルトでセットされているもの以外のプラグインは使えませんし、制限が幾つかあります)。

 Appleはハイスペックなものは高くなってしまい、しかも拡張性を排除する傾向なので、その反発からか古いものを使い続けている人も多くいます。高級な機材はAppleしか対応していないというものもあります。その一方、Windowsは無料のソフトウェアがとても多くあります。PCも自作でハイスペックのものを作ることもでき安上がりです。どれぐらいのスペックのものが必要かは使い方によります。ソフトウェアプラグインを使う環境では大きなメモリが必要です。進化する度に要求も変わるのでDAWの必要スペックを参照して決めます。プロの製作環境でPCの能力に任せるのは無理がある状況では、インターフェースを専用のDSPカードに接続するPro Tools HDXシステムが使われています。

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