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呂建華師がこの楽器を作った経緯については聞いていないのですが、学習と研究のためであったのかもしれません。呂建華師は製琴師ですから戯劇にも造詣があり、劉明源と沈立良を聞いてどう違うかを解説するぐらいです。背景の概念、戯劇との関連性などについてです。そしてこの2名は板胡を主に奏する演奏家でしたが、本品はまさに劉明源、沈立良のあの音が出る楽器、何かの特別なテクニックを要するわけでもない、この楽器だったら誰でもあの音が出てくるという、つまり劉明源がオーダーしたそのままに作ってあります。実際に彼らが使っていた楽器は張守義師の作られたもので呂建華製ではありませんでしたが、劉明源は二胡に関しては呂建華のところを訪問していたようです。弦堂は呂建華師の家から帰る時にたまたまいた張守義さんに車で送って貰ったことがありますが、このように製琴師は結構交流があるので、その過程で劉明源の求める、つまり中国電影楽団仕様の楽器、あの中国の古い映画の音の製作法なるものを伝授されて作ってみたのかもしれません。
呂建華師の説明によると椰子の殻の工作に特徴があると、つまり表板はわずかに盛り上がっており、まっすぐの平板ではないということです。弦堂が「普通はこうではありませんね。盛り上がっているのは見たことがない気がしますが」というと確かにそうであるらしい、そして後ろ側、中まで磨いてあって、開口部の形状も違うということです。確かに言われてみるとその通りです。弦も特注で、一般のものより少し太いということです。これは各弦製作会社に「劉明源仕様で」と発注すると今でも作ってもらえるとのことです。大量発注が求められます。
もちろん、一般の板胡に問題があるとか、それよりも劉明源仕様の方が優れているという意味ではありません。その証拠に、現代の多くの奏者は劉明源仕様が絶対だと思っておりません。比較すると普通の方が良い筈です。張守義の作品は素晴らしく、こちらの方に惹きつけられるのが普通であろうと思います。しかし劉明源、マイクで録音する前提の職場において、いかに優れた音を作るかを徹底したらこうなったのでしょう。そしてそれは電影楽団の音になり、多くの人が昔を懐かしむ響にもなっているのです。甘美的な甘さ、中国の毒を体現したような響きです。