絹弦に合う駒 - 二胡弦堂


二胡等、中国楽器の駒  絹弦でも金属弦と同じものを使います。二胡駒を交換すると音が変わりますが、その傾向は絹弦、鉄弦共に同様です。まず弦の固有の音があって、そこから駒を替えていって調整したりすると思いますが、鉄弦と同様に変わっていくと思います。

 右の写真に掲載しています駒は中国で購入できるものです。様々な中国胡琴類に使う物で、いろんな種類があります。

白木の二胡駒  名工によって作られた高級駒は、一般の店頭に売っていません。製作者は卸したいのですが、販売店が高価なので仕入れたがりません。日本だと絶対こういうことはないと思います。それで良質の駒は、直接製作者に連絡して購入する場合があります。中国では拘ったものが好きな人が少ないのですが、台湾出身者を中心にそういうものが好きな人は少ないながらいないことはありません。この辺は、大陸と島国の違いでしょう。

 在りし時代には一般的だったと思われる中国の老人たちの駒の買い方は現代人から見ると独特のものがあります。右の写真にはたくさんの駒が入っていますが形はバラバラです。これはある二胡販売店に実際にあった販売ケースの中身ですが、元はすべて同じ規格の駒が入っていたようです。購入者は持ち帰った後、削って自分の二胡に合うように調整していきます。しかし二胡は変化してゆく楽器なのでいつまでも合うわけではありません。それで要らなくなった駒をここに入れ、新しいものを買うのです。別の店で買った物をこの中に捨ててゆく人もいます。長年繰り返してこんな風になってしまいました。後で買いにきた人が以前に別の人が工作したものを買う場合もあります。なかなかおもしろいものが見つかるときもあります。この駒の写真の掲載からしばらくして全て無くなっていたので店主に聞くと、ケースごと全部買っていった日本人がいたようで今はありません。古楽器を使うような人が駒の細工をやる傾向があるのですが、現代ではそういう楽器は使われないので、このような駒の溜まり場のようなものは市中すっかり無くなりました。生涯に一把しか持たない人が駒を削る傾向があります。もちろん現在でも同じように駒は販売されていますが、誰かが削ったものが放り込まれているということはなくなりました。例えば、下の写真のような状態です。


 駒の購入の仕方は神経質になるとかなり難しく、自分の二胡に合う駒を探すのはたいへんですが、大陸の奏者はそのあたりを深く追求することはありません。楽器街で入手できる駒も白木か黒檀ぐらいしかありません。紫檀あたりが見つかると珍しいぐらいです。結局のところ、そういう駒で十分であって、特殊な駒など買おうものならかえって相性の問題に悩まされるのでスタンダードなものが一番良いということになって市場もその方向で落ち着いています。春夏秋冬で駒を換える4点セットとか村山駒のコピーとかいろいろ面白いものもありますが、市民権を得るには至っていません。そして駒を削るなどの昔ながらの方法が採られることもなく、鉄弦は駒の溝を壊していきますので、ある程度使ったら捨てて新しいのを持ってきてそのまま使うのが一般的です。(二胡の駒も参照)。

 二胡駒の標準の溝の間隔は6mmです。だいたい5~6.5mmというところです。駒は容積が小さい方が音響的に理想ですが、そうすると溝幅は狭くなる傾向があります。この理由で名師作の駒は溝幅の狭くなるものが多いです。ある程度技術のある奏者でなければ、馬尾が多い弓など使うと内外両弦を同時に擦ってしまい、雑音まみれになることがあります。あまり自信がない向きには弓と駒に関しては普及品を使うのが無難です。時々6mmでも狭すぎるという理由で6.5mmとかより大きな溝幅の駒を探そうとするのは、換弦(内外弦の弓の切り替え)にスムーズさが少し失われます。様々なバランスを考えると6mmになるようです。しかしたとえ5mmで切ってある駒があって、馬尾がかなり多い弓であっても演奏に問題はありません。そこへさらに太い絹弦を使ってさらに間隔を狭めたとしても、それでも何ら問題ありません。京胡あたりになってくると3mm程ともっと狭くなってきます。この問題に関する重要なヒントは、弓の圧で音量を操作するよりも速度で加減するべき、ということです。