古来の調合による本山朱泥具輪珠 - 二胡弦堂

 

 原鉱の朱泥としては、黄龍山、趙庄、小煤窑などから採れるものがあって、現代これらの泥を使う場合はそれぞれ基本的に高純度の泥が使われます。コンピューターで温度管理できるようになったから可能になったもので、昔は極めて製造困難なため調合されていました(朱泥についてを参照)。かつての趙庄朱泥は20%の黄龍山朱泥が混ぜられていたということで、それを現代に復刻したのが本品です。一方、本山緑泥の方は天然のままです。

 新品の段階では緑泥の方は綺麗な明るい感じですが、朱泥はオレンジ色で冴えません(写真では濃く写っていますが、実際はもっと冴えない浅い色です)。それで「朱泥」と言います。しばらく使っているとツヤが出てきます。最初は茶の成分を非常に吸いますので、全く味のない茶が注ぎ出されます。安価な茶でなじませたりします。これを「開壺」と言います。そのうちこういうものに慣れてくると一々開壺も面倒になり割り切って白湯だと思って飲んだりします。旨い茶が淹って外観も光沢が出てくるまで少しの時間を要します。緑泥は育つのに時間がかかります。

 茶壺を幾つも持ちたくないという場合は、このどちらか1つがあれば良いと思います。しかしどちらにするかは悩ましいところです。現代の作品なのでバランスのとれたフォルムで、昔の具輪珠のような歪感はありませんが丸型で砲口、或いは水平壺という飽きのこない造形です。茶壺はマストアイテムとしてまずは朱泥と言われますが、古来の中国では段泥でした。段泥の最良のものが本山緑泥でした。緑泥は鉄の含有量は約2.8%と少ないのですが、世界で最もコバルト含有量の多い泥でその量は0.00395%です。漢方の観点から価値があります。小店においても古い茶壺を置いていますが、朱泥か紫泥で段泥はほとんどありません。中国は段泥天下なので需要が高いのです。日本では圧倒的に朱泥の価値が高いですが、茶や茶器の創始は信楽です。やはり段泥系です。朱泥と緑泥はどちらも重要な位置付けの泥とみなされてきたものです。

 現在黄龍山は閉鎖され、泥の採掘も禁止となっていますが、大陸の話ですから、表向きそういうことになっていることが多いので実際に採掘が止まっていると思っている人はいません。そこで政府の方で、堂々と泥の調査の報告書を出したりするようになってきました。やっぱり掘ってたか!と思った人も多かったでしょう。門は奉行所のようで全体は立派な塀で囲って中は見えなくなっています。泥は採掘後しばらく風化が必要なので採掘状況がわかるのは何年も後だったりします。

朱泥 145cc前後 ¥0

緑泥 135cc前後 ¥20,000


 朱泥は何でも淹れられます。かつて日本で朱泥が最良と言われていたのがなぜなのか、本品を見るとご理解いだける筈です。泥の調合は焼きやすいというよりも味の方中心で決められたのではないかぐらいに思えます。本山緑泥で発酵茶(紅茶、普洱熟茶)は基本的には避けます。表面の色が徐々に黒くなってきて見栄えを損なうという理由だけなので、実用であれば何でも淹れられるし、味わいの観点からはむしろお勧めできます。緑泥に普洱生茶は非常に合います。