駒から千斤までの距離 - 二胡弦堂


二胡の駒から千斤までの距離1  現代二胡と弦の設計値は39cmが基準になっています。高胡は38cmです。演奏者によって手の大きさが違いますし考え方も違いますので適宜移動して構わないとされています。目安としては、肘を琴胴に付けて小指の第2~3関節ぐらいを千斤の高さに設定します。その前後が使いやすいであろう位置だとされています。ですが、この目安は規格が様々だった古楽器時代のものと思われ、現代の楽器は規格がはっきりしているので、ほぼすべて39cmです。或いは制作家の方で指定した位置です。

 二胡には、基本的に子供用の楽器というものがありません。千斤の移動で対応します。二胡の場合は楽器そのものの寿命が人間の寿命と同じだとされていて、生涯共に育ってゆくとされています。一方、蛇皮は2,3年でピークを迎えて、下り坂になると考える人もいます。この見解の相違は、音に対する考え方によるものと思います。古い皮の音は魅力的ですが、高性能とは言えません。

二胡の駒から千斤までの距離2  音楽院関係者はとにかく千斤を上に上げる傾向があります。例えば41cmぐらいとかなるべく高く位置取りします。そうすると39cmでの使用が前提になっている弦によりプレッシャーを掛けるわけですから弦の寿命は大幅に短くなります。そのため、プロ用の弦は硬く寿命を長く作っています。音は良くはないですが音程ありきの考えだからそれで良し、それが受け容れられない場合は短い間隔で弦を交換することを甘受します。楽器にも大きな負担を掛けることになります。二胡は指板がないので音程は不正確になりがちです。しかし張力を大きく硬くすると安定感が増しますので西洋音楽は演奏しやすくなります。音程に対する要求を厳しくしたい奏者が好む方法です。こういう奏者が増えてきているので、そういう使い方をある程度想定した上で作っている楽器もあります。北京にはこういう現代的な二胡と古典的な風格のものが混在していますが、蘇州・上海の方では前衛的なものは受け容れられにくいのか、現代的流派は江西や湖北あたりに移動して活動しています。古典的風格で作っているものを無理やり千斤を上げる使い方をすれば味を失うし、緊張感があるだけの音になってしまいます。むしろ下げた方が、例えば37cmあたりであるとか、緩めた方が風流な音が鳴ることがあります。

 広東音楽の弦楽器奏者の多くは高胡とバイオリンのどちらも演奏します。曲によって持ち変えます。それぞれの持ち味を有効活用します。どちらもG音からなので、どの曲であれ、どちらの楽器でも演奏は可能なのですが、表現の違いで使い分けています。西洋曲をやるなら高胡と決めることもできます。

 その他、千斤を上げてしまう傾向で、硬い弦を好むのは、ギターのような弦に慣れている場合ということもあります。西洋弦楽器はテンションが高いのでそれに合わせてしまうということです。中国弦楽器はもう少し緩いので慣れが必要かもしれません。