二胡スチール弦は文革期に屋外で演奏するために使われるようになったと言われています。文革期のデザインは現代芸術家の作品にも影響を与えていますが、特徴的な意匠は弦の袋にも反映されています。毛沢東の語録が印刷されているなど、時代を偲ぶ物となっています。
文革期の二胡弦、両弦揃ったセットです。マニアから通称「白毛女」と呼ばれているものです。白毛女という曲があります。上部には「最高指示」とあります。最高とは党主席、毛沢東のことです。指示は何でしょうか? 「私たちの文学芸術は人民大衆のためのもの、まずは工農兵のものであり、工農兵のために作られ、工農兵のために利用されるべきものである」。米16代大統領の有名な言葉を思い起こさせます。工農兵とは何でしょうか? 紅衛兵です。単に芸術と言わず、文学芸術とするところに、格言を使った言葉で伝えようとする並々ならぬ意気込みが感じられます。
文革期の二胡弦、両弦揃ったセットです。中の袋まで毛主席語録が印刷されています。文学芸術による教育がとても重要ということがわかります。「革命の追究が生産を促す」。
毛語録はありません。文革が終わってからのものと思います。
登場人物は、毛語録の収録された赤本を持ち、背景には共産党を表す大きな太陽を背にして、豊かな収穫物を手にしています。しかし語録はありません。
高音二胡とあるのは、普通の二胡のことです。二泉胡と区別するため以前はこう呼ばれていました。
ありました。上部に赤地に黄色で語録があります。「人民、ここに人民のみがあり、それこそ世界の歴史を動かす力の創造である」。スケールが大きいです。そして万里の長城です。これほどまでに評価された人民が歴史上あったでしょうか。
解放期初期の弦です。
同じく解放期初期の弦です。
阿炳牌初期の弦です。
Malisという名称で知られたメーカーの少し古い弦です。
古い安価な二胡弦です。
上より少し古い二胡弦です。
これも北京の安価な二胡弦です。
京二胡用です。普通二胡用ではありません。袋が厚手で立派な物です。最高指示は同じものです。
高胡用セットです。これにも紅衛兵が優先利用すべきと注意書きがあります。
パッケージがほとんど同じですし、一方は貿易会社なので、作っているところは同じかもしれません。これと同様のパッケージは今でも使われています。
星海牌の古い二胡弦です。
文革期の二胡弦です。かつて二胡弦の製造は小さな公社も含めて割とたくさんあり、それらが絹弦からスチール弦の製造に移っていったようですが、その頃が文革の頃だったので、革命思想に沿った牌子(商標)に換える必要が出てきました。この向阳牌は元は「企鹉牌」という名称でしたが裏面には「品質はこれまでと変わりません。さらに品質の向上に努めますのでご指導をよろしくお願いします。」と書いてあります。
人の描き方がアラブっぽいのが気になりますが、太陽の上に作物と工場が描かれているあたりは、当時の思想を反映したものです。毛語録の説明では、「政治において何を行うかはすべて、経済活動の生命線である」。経済をどうするかが当時の最大の懸案事項だったことがわかります。毛沢東亡き後、経済が復興したのは皮肉なことです。でも、語録を言う人はいなくなりました。
後ろの内弦の袋は、青い部分が高さがあり毛語録もありません。新しい外弦の方はいわゆる"指導"でスペースを上部に空けたと思われ、語録が入っています。毛語録「大衆の代表たらんとする者こそが大衆を教育し、大衆を教育する者こそが大衆を先導する」。毛主席ご本人が語録で手本を示しておられます。そして挿絵は天安門広場に面する人民大会堂です。日本で言う国会議事堂です。
踊る2人の女性の意匠ですが、どういうわけかバレエで、右下に「紅色娘子軍」とあります。文革時の紅衛兵を指すものですが、踊りの意味としては、毛語録「文芸は工農兵の職務のためなり」。文芸とは文学芸術ですが、何のことでしょうか。第一義的にはおそらく毛語録を読むようにということだと思います。しかしこれは二胡弦なので、二胡も奨励されていたことになります。革命歌の推進のためと思われます。今でも革命歌の楽譜は販売され、ご老人から人気があります。
非常に古い二胡弦のパッケージです。毛語録がないので文革前のものかもしれません。
コード番号が「413」と記載されているのは珍しいです。西洋の影響が感じられます。
これは現在、金とか赤とか黒のパッケージで各種出している有名メーカーの昔の二胡弦です。これは金に相当する最高グレードのものです。
2000年製造。あまり昔ものではありませんがすごく古さを感じます。時代の流れは意外と速いのかもしれません。
2002年製造。上海民族楽器一廠製による姉妹品です。
1996年製。デザインは現行品と大きく変わっていません。
上のものより少し新しいものです。スペースを作れそうですね。どんな語録を印刷しましょうか。