人間の耳は、周波数にして20~20kHzまで聞くことができると言われています。実際には耳以外の体の皮膚からも音を捉えるのでもっと広範囲の低音を捉えることができ、高音は50kHzまで聞くことが可能とされているため、ハイグレードの音響では50kHzまで保障されています。楽器から出ている音が演奏者によって違うなら、それぞれの周波数帯で音の大きさが違う、ということを意味します。例えて言うなら、1kHzにおいてはある人の演奏の音が大きければ、別の人は2kHzで大きいとか、波にずれがあるということです。人によって骨格とか肉体の質量が違うのでこれが出音に影響があることがあるからです。特定の周波数帯が常に響くのであれば、二胡の音質の変化と成長は所有者によって違うということになります。これがまず1つの要素です。
もう1つは、全体的な音量についてです。音は大きければ倍音を多く発生させます。小さければほとんど発生しません。倍音は響きとも言えますから、響き続けられたものとそうでないものとでは当然音に違いが出てくるものと思います。二胡は皮を使っていてこれに響きが載ります。駒から響きが伝達され、放射状に響きが記憶されるので、駒は位置を変えるべきではないと言われます。二胡の場合は駒の位置を移動したりはしないので問題になりませんが、高胡であれば位置は幾つか考えられるので、楽器ごとに確定させた方が良いと思います。
この2点で響きと個性が決定づけられるのではないかと思います。蛇皮だけでなく木材にもかなり響きが乗ります。
かつて二胡は人生に1把を共にし、それとともに自身も朽ちてゆくような所有がされていました。死後に遺族によって売り払われたものが骨董や楽器店で見つかることがあります。美しい音ではありますが、あまりに個人の個性が染みついていて、癖が強い場合、演奏が難しいものもあります。新しい蛇皮、白いキャンパスの方が癖がなくて良いと思うこともあります。これが名手の所有物だとまた違った印象になるのかもしれませんが、このことは二胡とどのように付き合っていくかを考える1つのきっかけになることがあります。