普洱茶(プーアル茶)というのは茶の原点らしい。つまり雲南省あたりから茶というものが各地に伝播したということです。世界の茶類分布の中央付近にあるようにも見えます。さらにその中心地は西双版納(シーサンパンナ)というところです。上の地図がその全体図で、位置は中国最南部で右の地図で赤で囲ったエリアです。その北の普洱、臨滄からも、さらには四川省に至るまで生産されています。この茶はかつては中国歴代王朝がチベットとの交易で、馬と引き換えに送っていたものです。チベットは4000m級の高山地帯なので植物の生育が悪く、必要な栄養を輸入された茶で補っていました。漢方薬としての価値もあり、現代ではダイエットに効果があるということで料理に油を多用する特に広東地方で重宝されています。
普洱茶は生茶と熟茶に大別され、それぞれ製法が異なります。生茶は緑茶に近く、熟茶はコーヒーのようです。生茶は一般には宜興の紫砂茶壺を使って淹れられます。そうすることで茶の雑味が取れてまろやかになります。一方、熟茶は一般には白磁やガラスを使います。熟茶の茶渋は強く、長く使うと茶壺の内面にべっとりと膜ができたようになります。また優秀な茶壺ほど熟茶の良さを消します。生茶と熟茶は全く別の茶として扱わねばなりません。
写真は雲南茶界の重鎮・王樹文が自ら製造している茶です。王は「越陈越香」(古くなる程、味わいが増す) という普洱茶の概念を最初に提唱した人物で、彼が老樹からのみ茶葉を採取して製造しているものが数種あり、これはその内の1つです。王の普洱茶に関する論文は普洱茶というものがどういうものかよくわかる内容ですので、翻訳を以下に掲載致します。
お茶を飲むなら普洱茶を飲もう~20年以上普洱茶を飲みつづける王樹文の体験記
伝えられているところによると乾隆が85歳で退位する時にある臣下がそのことに触れて乾隆に「国は君を無くしてはあらず!」と言ったところ、乾隆はひげをひねりながら意味深にも「君は茶無くしては一日もあらず!」と答えたという。ある記載によれば乾隆9年に雲南が献上したお茶の中に普洱茶があったという。
1, 普洱茶を飲み始めたきっかけ
1978年パリの聖アントニー医学臨床教育主任アミア・カールビ医師の臨床実験の結果によると、普洱茶を飲むことで体重を減らし、体内の脂質化合物である脂肪やコレステロール、血尿酸の割合を減らすことができると証明された。フランスのヘンリー・ルンド医院も普洱茶はダイエットの助けとなり、脂肪に対する新陳代謝の作用も明らかで、一ヶ月に毎日三杯普洱茶を飲んだ人の血中内に見られる脂肪量は13%下がり、また血液中のアルコール量も下降した。
当時私は中年の世代に入ったばかりで、仕事上の付き合いも多く、体重も徐々に増えていた時で、また、健康への意識も生まれはじめたたこともあり、普洱茶を飲み始めたが周囲の人はそのことを不思議に感じていたようだ。
以下は私が普洱茶への確信を強めた出来事である。
(1)1985年4月に参加した雲南茶葉輸入出会社が香港で行った考察から、私は香港での小売価格や、在庫、経営方法に深い興味を覚えた。それで昆明に戻った後に‘香港における雲南普洱茶’という記事を書き、その中で普洱茶の価格が非常に高いことについて報告した。
(2)1986年6月に参加した雲南大学医院の‘雲南普洱茶の高血脂病医療への効果’に関する臨床試験鑑定で、‘雲南普洱茶を医療目的で用いた高脂血症患者55例と、脂肪を減らす効果が比較的あるとされるアントミン治療を施した31例を比較したところ、普洱茶の医療効果はアントミンより高く、さらに長期使用による副作用はなく、中国医科学院心血管研究所の提出したデータによるとコレステロールは33%下降し、脂肪は41.4%の下降に効果が見られた。’
(3)1986年7月パリで行われた雲南普洱研究報告会でパリのヘンリー・ルンド医院ベルナール・マイカトール教授はある医院での臨床試験について述べ、20名の血脂含量が高い患者に一日三杯普洱茶を飲むように指示したところ、一ヵ月後には血流中の脂が22%下降したのに対し、同様に他のお茶を飲んだ患者には変化が見られなかったと伝えた。パリ大学栄養生理試験室主任ルードン教授は‘雲南普洱茶には一種または多数の脂肪に対する新陳代謝作用を起こす特殊成分があるようで、水に溶けた後新陳代謝を促しコレステロールのバランスと規制を行う不思議な効果がある’と述べた。彼が指揮した栄養生理学試験室が二グループのマウスを用いた実験で、一組は普通の食物を与え、もう一組にはコレステロールが多く含まれる食物を与えてそれぞれに普洱茶も与え9週間後に血液検査を行ったところ、一組目は10%の脂肪下降率だったのに対し、二組目は30%も下降が見られた。
以上のことから私は普洱茶を飲むことへの確信を強め、また同僚の中にも普洱茶を飲み始める人が出てきたのである。
2, 普洱茶を知る
1989年に長砂で招集された北京と中国茶研究所専門家達による‘中国~茶葉のふるさと’大型画集編集審査会上で‘酒は古いものが良く、茶は新しいものが良い’と書き表す際に私ははっきりと‘普洱茶は古いほど香りと品質がよくなる’との事実を打ち出し、数十名の専門家と編纂委員の賛同を得て先ほどの文章をすぐに削除した。このことからも茶界にも普洱茶の認識の問題が見られたことが分かる。
長年普洱茶の宣伝と研究に関わりまとめた3つの真理がある。
(1)抽出物が最高のお茶である。
私達の大葉種茶は高い海抜と低い緯度の場所で成長し、年間の温度差が小さく、一日の温度差が大きい特殊な自然環境の中、ポリフェノールが豊富で、抽出物が世界で最高、独特のものであり、とりわけ恵まれているということが言える。
茶葉に含まれる成分比較表(紅茶も含む)会社誌p.91
項目 | ケニヤ | スリランカ | 雲南大葉種 | 雲南大葉種のブレンド | 中葉種 | 小葉種 |
---|---|---|---|---|---|---|
ポリフェノール | 19.22 | 19.26 | 23.07 | 20.3 | 14.31 | 12.3 |
茶中に含まれる黄色の要素 | 0.91 | 10.89 | 0.77 | 0.91 | 0.64 | 0.42 |
茶中に含まれる赤色の要素 | 11.94 | 12.41 | 14.1 | 9.53 | 10.76 | 10.3 |
カフェイン | 3.91 | 3.8 | 4.06 | 4.17 | 4.04 | 3.63 |
合計 | 39.98 | 36.36 | 42.03 | 34.91 | 29.74 | 26.69 |
(2)古いほど香りと品質が良くなる。
1990年以前に私が中国語、英語、日本語など国内外の十以上の文献でたとえば<中国輸出商品>、<中国伝統保険飲料~雲南普洱茶>に載せたように‘雲南普洱茶は古いほど香りと品質が良くなる特徴があり、長期保存が可能だが、湿気が多いところに置かない、また密封も避け、においが付くものと一緒に置かないように’と発表した。
近年古い普洱茶の価格は既に吊り上り、列挙に暇が無い。
普洱茶主要成分% 会社誌p.132
水抽出物 40.99 | ポリフェノール 17.31 | カテキン 5.7 |
粗繊維 15.15 | カフェイン 2.89 | 1グラムの茶に含まれるアミノ酸 2.2mg |
茶中に含まれる黄色の要素 0.22 | 茶中に含まれる赤色の要素 0.39 | 茶中に含まれる褐色の要素 9.11 |
(3)保険効能が特に良い。
清代の趙学敏は<本草網目補充>(1765年)の中で‘普洱茶の澄んだ香りは独特なり。酔いを醒まし、消化を助け、胃をきれいにし体液の分泌を促し、効能は特に大なり。’と書き表した。
日本東方物産株式会社社長坂本敬四郎はまた‘雲南普洱茶のきわめて素晴らしい所は千年以上の時を経て今に至るまで持つ旺盛な生命力であり、常に飲むことで利尿作用があり、消化を助け、酔いを醒まし、脂肪を減らし、健康的で、食欲を増進する効果があり、全世界のより多くの広い地域の人々の健康のために飲むよう普及すべきである。’とも書いている。
雲南大学微生物研究所の1985年研究結果について、会社誌129ページには
普洱茶の発酵は微生物および酵素系と茶体酵素系の共同作用の結果、微生物は普洱茶の発酵中に主導的な役割を果たし、茶体中の発酵の作用は緩慢で二次的な場所を占めることが分かった。
<中国茶経>81~82ページ記載;
普洱茶の褐色は茶葉中のフェノールが後の発酵の過程の中で、外来微生物によってその酵素変化を促進し、酸素とアミノ酸結合が生み出す褐色素によるものである。多くの化学元素も変化を起こしカフェインなどを無くし、ビタミンPの含有量などを増やし、したがって脂肪を減らす効能が顕著である。
湖南、広東、北京、香港、台湾および日本医学と茶葉科研部門は普洱茶の保険効能について臨床試験を行って証明している。
<民族茶文化>2005年第二期30ページの<神秘的な普洱茶>は一人の昆明鉄道機械学校の18歳の学生李徳生について触れ、3~5月に毎日二杯の普洱茶を飲んだところ、体重が89キロから70キロほどに落ちたことを書いて それを典型的な人であると述べている。
私は普洱茶を飲んで30年近くになるが、体重増加の抑制、血脂量の抑制、風邪予防、老化予防、健康活力保持が明らかである。私はこれからも色、香り、味共に良い普洱茶を飲み続けるつもりである。それは‘酔いを醒まし、熱を下げ、消化を助け、痰を切り、胃をきれいにし、体液の分泌を促し、菌を抑え、脂を落とし、体重を減らし、血圧を下げる’のに有益だからである。
3, 良い普洱茶を見分ける
(1)見た目に良い~外形 しっかりしている 色艶は黒くて潤いがあり褐色がかった赤みを帯びている お茶の色は琥珀紅で目が覚めるように美しく透き通っていて茶葉はしなやかである
(2)香りが良い~独特の香りがある(蘭、ハス、くすのき、人参、沈香など)
(3)味がおいしい~味わいがなめらか、深みがあり、甘みがある
(4)飲みやすい~飲んだ後心地よく、胃にもやさしい
4, 普洱茶を保存する
雲南普洱茶には古い茶葉ほど香りと品質が良くなるという特徴があり、長期保存も可能だが保存の際環境に注意する必要がある:湿気が多いところに置かない、また密封もしない、長期間直射日光を当てることを避ける、においが付くものと一緒に保管しない。
最後に普洱茶は特殊な保健効能の優れたお茶である。そのため‘万人の健康茶’、減肥茶、美容茶、長寿茶などとも呼ばれている。
普洱茶は雲南の各民族の人類の健康に対する大きな貢献であり、私達はそれを知り、宣伝し、飲む必要があるのである。
2004年に私はこの主題と同じ講演をしたが、二ヶ月も経つと茶室は十数軒から百軒近くに増加し、お茶の文化に対する品位もますます高まり、普洱茶の消費量は増え、経済効果も高まっているのである。
私は多くの人に‘お茶を飲むなら普洱茶を飲もう’とお勧めする。
お茶から文化を味わい、健康を得、長寿を得るのである。
2006年3月22日
注;ここで出てくる横文字(人名)は中国語から訳しているので実際と異なることがあります。
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