中国における二胡の流通はどのようになっていますか? - 二胡弦堂

 


 出来上がった二胡を最初に購入する権利が得られるのはたいてい演奏家です。演奏家自身が工房を訪れ、試奏を繰り返して選別してゆきます。しかし演奏家の楽器はほとんど特注なので、こういう場合に購入されたものは弟子に販売するのかもしれません。その後、有力な販売店が残りの全部を買い上げます。そして9割を返品します。選別にはある程度時間をかけます。数日拉いて、すぐには決定しないといいます。返品され余った9割は一般に出回ります。この情報は裏情報でも何でもなく、普通に市販の音楽雑誌に書いてあって9割返品する店主が写真入りで登場して説明していました。

 それで良い二胡は一般には手に入りにくいように思われますが、どうなんでしょうね。名工が受注で作っているようなものであればこういった選別はないので、気になるようであればそういうものを買えば良いし、選別されるのはある程度大量に作っているものですから、そういうものを個人的に買うのに質を過度に云々するのは意味がないようにも思えます。

 こういう商品の流れについて中国ではある程度知られているためか、有名な演奏家の鑑定書付の二胡などが出てきて、二胡の胴に彫り込みを入れている物さえ有りますが、日本にも入ってきているのでご覧になられたことがある方はおられると思います。これは本当に選別されたものかどうかわかりませんが、有名演奏家との契約が交わされているのは間違いないと思います。二胡配給券鑑定書は純粋に商業的な目的で作られたもので、たいていの工房ではこのようなものはありません。

 さてここまで来ますと、安い二胡で選別したものが購入できないか、という疑問があります。安くて選別したものを購入できれば、非常に良い買い物だと考えるのは筋が良いといえます。しかしそういうものはありません。安い楽器を選別する理由と益が販売側に全くないからです。たぶん購入する側にもメリットはないと思います。

 右の写真は、文革期に配給されていた二胡を受け取るための整理券です。これで、二胡1把受け取れます。二胡は販売されるものではなく、配給制だった時代もあったということがわかります。文革期の二胡はすでに形状が現代とほぼ同じです。大量生産のものではありますが、なかなか優れた二胡が多いです。胴に白いペンキで大きく、所属する単位(職場)の符号が書いてある場合が割とあります。配給制であっても、個人ではなく、業績を上げた単位に支給されていた可能性があります。