二胡弓はどのように手入れをすればいいでしょうか - 二胡弦堂

 


 新品の状態であっても、洗うことでかなり綺麗になります。ある程度はすでに工業的な手順で洗ってありますが意外と汚れているもので、綺麗にしますと音がクリアになります。新弓は2度洗うことになると思います。1回目の洗浄で温水で洗いますと動物園のような匂いが立ちこめるからです。もう1度洗って自然乾燥させます。乾いたと思ってからさらにもう1日置きます。水分が残っていると松脂を付けたときに固まって雑音の原因になります。ドライヤーを使いますと縮れ毛になります。それでも使用には問題なさそうなので急ぐ場合はこのようにしてもいいと思います。新しい弓の場合は松脂が乗りにくいです。もし上記の方法で洗っておられたのでしたら、松脂はすごく乗りやすくなります。汚れとか動物の脂が落ちているからだと思います。

 洗うのは中性洗剤を使います。シャンプーでも良いのでしょうか。弓屋さんの光舜堂に伺いますと「油が含まれているからいけない」とのことでした。「髪はシャンプーで健やかになりますよね」「油がいけない」「リンスは?」「それもいけない」とのことでした。小店で確認した時はそおらくDHCのシャンプーだったら良かったのかもしれません。これは結構髪もパサパサになります。そうであれば、中性洗剤は無難な選択です。油分が含まれると松脂が乗らなくなります。

 湿度の高い地方では塗られた松脂が固まって異音を発する場合があります。上級者は弓圧が強いので繊細な配慮を払う必要はほとんどありませんが、初級者はとにかく松脂を使い過ぎないようにする必要があります。これは弓を放置していたら発生する問題なので演奏者の技術とは関係ありません。それで誰であれ、松脂の多用は良くありませんが、弓圧の強い人が松脂の使用量が少な過ぎるのも良くありません。演奏会で長時間演奏しないといけないといった事情で大量の松脂を付ける場合がありますが、これは問題が発生しないわけではなく、弓を一晩置いた後ガリガリ音が出る弓に圧を最大限掛けて固まった松脂を飛ばして使ったりします。弦堂が初心者の頃には雑音まみれの弓を持っていくと老師が強拉きして飛ばした後レッスンしていました。これは思いっきり強く拉くだけなので別に難しいことではありませんから誰でもできます。状況によっては消音器を使えるでしょう。だけど弓は傷みそうです。理由なく無駄にこういった問題を招くより松脂の使用量を抑える方が良いということです。松脂の使い方は最初に学ばねばならない技術の一つです。

 板胡や京胡の場合は二胡よりもたくさん松脂を使います。まず全体に薄く松脂を付けます。その後振るって細かいカスを落とした後、また松脂を塗ります。これを5回ほど繰り返します。これが板胡、京胡用の新しい弓の松脂の付け方ですが、二胡の場合はまねしない方がいいと思います。いずれの楽器の場合も以降は、表面に薄く塗るだけで大丈夫です。

 弓を数支持っている場合はどうしたらいいでしょうか? 弓は1つ同じ物を使い続けているとコンディションに波が出てきます。音が良い日と悪い日があるのです。酷使すると疲れてくるのか、休ませて別の弓を使って後日再度戻すと良いということが多いです。疲れるというのも奇妙な話ですが、そうとしか表現できない変化が多々あるのです。「弓は疲労する」という前提でローテーションし、松脂は付けてから1日置いた方が音が良いので、これも効果的にやっていきますが、3本もあれば計画性を考えなくても簡単にできます。同じブランドの弓を使っていると弓自体のクセが同じなので、自分の欠点がわからなくなってくることがあります。たまに別のものに変えると、フォームが狂ってきているらしいといったようなことが自主的にわかることがあります。この修正を怠ると、完璧に決まった規格の弓しか扱えなくなることもあり得ます。それと、あらゆる物質は使うと消耗しますが、使わないのも消耗します。それで複数の弓を持っている場合は保管しておかずいずれもある程度使用するのが良いだろうと思います。

 バイオリン弓であれば特注もあってかなり繊細に作られていますが、二胡弓は竹をそのまま使っているものがほとんどです。「あらゆる弓を扱える」というのも二胡の技術の一つです。そうでなければ、二泉胡、中胡、高胡、板胡と楽器が変わったら演奏できなくなります。二胡以外は演奏しないと決めていれば問題はないでしょうけれど、中国ではそういう感覚ではなくて、拉弦楽器をやるにあたりまず二胡から入り、そこから別の同種の楽器に移ります。そのため考級では二胡の1級は本当に初心者ですが、他の拉弦楽器の1級は簡単ではありません。二胡は練習楽器として適しているためです。しかしそういう意味で何でも扱えるというのと、弓のクォリティは別問題ではないでしょうか。そこで中国では二胡弓も木を使おうということになって実験されたこともあります。竹では繊細な調整に適さないからです。木は使えない、合わないということになって竹に戻っています。ところが東京・光舜堂が竹を繊細に削り込んだ弓を製作しています。製作に1日平均1日かかるというたいへんなものです。

 写真にありますような金具は市販の多くの弓で取り付けられています。金属は二胡の胴に当たると傷をつけますのでチューブで保護してあります。それでも外した方が良いと思います。平らにするよりも束状の方が理論的に正しいからですが、駒の溝間隔を狭くして早弾きするようになってから必要になってきたものかもしれません。それでも本当に必要かどうか、個人によって感じ方は違うと思うのでテストの必要がありますが、外した方が良いと感じられると思います。

 呂建華師は弓を楽器に付属する前、また弓だけ販売する時に、このようにライターで炙ってから引き渡します。北京のような乾燥気候のしかも冬にこういうことをやっています。湿度を飛ばしています。この後、吹いてきた松脂を払い落とします。松脂は固まりやすいものですので、これぐらい気を遣います。松脂が付いていなくても火にかけます。馬尾が締まって良くなるとのことです。ビデオの中では「音が綺麗になる」と説明しています。