どんな二胡弓を選んだらいいでしょうか? - 二胡弦堂


二胡弓・紅竹と湘妃竹(香妃竹)  まず毛(馬尾)からですが、白毛が良いとされています。しかし白毛は生産量が非常に少ないので普通は栗色の毛が使われています。しかし白毛というのは真っ白ではありません。真っ白は多くの場合、漂白してあります。黒毛もありますがこれは主に京胡で使用されます。

 最高級の馬尾は昔はイタリア産のもので良いものがありましたがこの種は欧州では絶滅しており、その前に北海道に輸出された後裔が残っていますので、これを以て最高級としているようです(現在は逆輸入された模様)。これはプロのバイオリニスト用のものです。一般にはモンゴル(中国産は主に内モンゴル産を指すのでモンゴル産というと外モンゴルのものになります)産の馬尾が使われています。これも限定的な産地のものは高額です。他にも甘粛、西蔵、欧州各国、カナダなどで、良毛を産出しています。二胡用として販売されている量産物は安価な栗毛ですが、これを以て白毛として扱うことにしているようです。

 馬尾は死んだ馬からしか採れません。もし生きた馬から毛を切ってしまうと害虫をしっぽで払えませんので病気になるからです。

 竹材の最高のものは湘妃竹(香妃竹)という、かつては洞庭湖畔でのみ生育する白地に紫の斑点のある美しい竹です。しかしその生産量は少なく、細身の条件の良い竹はほとんど手に入りませんので珍重されています。最近は福建、広東、台湾で養殖されていますので価格も落ち着いています。節が多いのが特徴で二胡弓の場合は2~3節あります。

 紅竹、鳳尾竹(しのたけ)というものも使われています。上の写真の向かって右は湘妃竹(香妃竹)・潘栄亮作、左は紅竹・王小迪作です。

 弓の先端に目を移しますと、馬尾を留めておく結び目があります。この結び目はたいてい2つあります。馬尾は馬のしっぽの付け根から先の方まで状態が一定ではありません。そのため推弓、拉弓で条件が変わってしまいます。これを避けるために馬尾を半分に分け天地を逆にしています。固定している結び目を良く見ると大きさは揃っていますが、馬尾の状態は左右で少し違う場合があります。これは高級品の1つの条件です。安価なものは手間を省くためこのようになっていません。写真の例は王小迪のものです。 弓の先の結び目 しかし使う馬尾自体は安価な弓でも天地を混ぜているので結局ほとんど変わりません。(こういうことをネットを使ってこういうところに書くと、自分が買った弓に結び目が2つないと騒いで販売店を困らせる人が必ず現れるのでそういう人に一言言っておきますが、絶対に毛の結び目を2つ作る必要があると誰が決めたのですか。制作家によっては違う考えで作っている場合もあり、単に馬尾の天地を逆にするだけでなく、しっかり混ぜないといけないと思っている人もおり、その場合は結び目が1つということもあります。そうであれば結び目が2つあるのは雑な作りですか。あなたが考えているような単純なものではない、市販されているものより自分の考えが上だと勘違いしてはいけない、言いにくいですがこの問題はすごく多いので該当者は考え方を改めて下さい。)

 弓の手元では魚の形をした弓魚というパーツで馬尾を固定し、その先には竜頭があって留めています。その中には象嵌細工があしらわれているものもあります。

 弓の選択基準は人の体格や個性によって違いますので一概には言えません。いろいろなものを一度に買って試してみるというのもたいへんですので、まず最初に楽器に付属しているものを基準にして、次に弓を交換するときに今までのものと別のものを使ってみて比較するという方法が一般的だと思います。二胡弓は安価なものが非常に使いやすく、高級品は使いにくい場合が多いです。それでとにかくわからなければ安価なものを購入するのがベストです。安価な弓はまだ技術が達していない奏者も使うので、誰が使ってもとりあえず安定するような作りになっています。高級品は表現力を重視していますので、暴れ馬を御するような感じになる弓さえあります。いずれにしても素材に天然のものを使っている以上、以前と全く同じものが手に出来るということはないと考えておくべきです。素材の素性を見てそれに合わせて加工しますから、基本的に同じものはないと考えていいと思います。

 もし空弦(開放弦)で耳障りな音が鳴るとか、どうしても雑音がらみだという場合は、
開放弦で異音を発するのですが、どうしたらいいですか?
雑音を抑えるには、どうしたらいいですか?
 このあたりをご参照いただき、それでも直らない場合がありますが、少し太い弓に換えると直ることがあります。一方、高域が出ない楽器の場合は、細い弓に換えるとバランス良く全帯域で鳴り出すことがあります。駒を換える方法と共に検討できる部分です。これは雑音と高域成分のどちらかか両方で、内部の反響が変に混じるか、うまくブレンドするかの違いで問題が出るか、或いは綺麗に響くかの違いが出るのだと思います。素材の相性が良ければ、適当に弾いても雑音は出ません。

 二胡は使っているうちに状態が変わってきます。音色が変化してくるので割と簡単にわかります。相性が良いと思っていた弓も合わなくなってくることがあります。それでこの問題ではあまり神経質にならない方が良いかもしれません。あまりに合わないようだと竹を削って調整する人もいますが、それよりもいろんな種類の弓を持っておく方が良いかもしれません。そうすると合わない弓が幾つか出てきますが、それは数ヶ月後には合うかもしれません。湿度と気候も影響があると思います。

 二胡を演奏する人は中国の他の拉弦楽器も演奏するか演奏できます。もし特定の弓しか使えないのであれば二胡しか演奏できないことになります。弓を換えなくてもそれを使って二泉胡を拉くとフィーリングが違ってきます。「自分に合った弓を探す」という考えではなく「いろんな弓を扱えるようになる」という見方をすれば自身の二胡の変化にもついていけるようになると思います。二胡弓は標準が83cm、ニ泉胡や中胡は86cm、京胡などは76cmと短いですが、これは楽器が要求する表現に適ったもので演奏者側の体格に合わせたものではありません。従って子供用の弓などというものは存在せず、子供も大人と同じものを使います。弓毛は中央の張りが弱く端の方が硬いですから均一な音量で演奏するのは簡単ではないので練習曲で克服したりすることはあります。そうであれば中央部分がなるべく長いものを使って中央だけ使えば容易に安定した音が出るということで長い弓が好まれる流れもあります。86cmを二胡に使ったりするのはその例です。確かに安定すればそこに様々な表現を載せることも容易になるので理に適ってはいますが、しかし弓本来の特性を善用するのが中国音楽で、そうするとあまりに長過ぎる弓は使いにくいということになります。音楽そのものを理解しないと弓もわからないということは言えると思います。




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