他の楽器を改造して、二胡を作ることができますか? - 二胡弦堂


別の楽器を二胡に改造している例1  ケースバイケースでしょう。参考になる写真がありますので1つ掲載いたします。こういう二胡は、北京の秋葉原・中関村(中关村)あたりの路上で結構見ることができます。これは河南の楽器で坠胡と言います。この楽器は商品として販売されているものは筒が真鍮になっており、円筒の二胡のようで奥行きが短いものです。それよりも三絃の方が安いので盲人演奏家らが改造して使っているものと思います。

 本稿の内容と関係ないのですが、足に付いている打楽器の機構はおもしろいですね。足を踏みならすと、パンパン音が鳴るのですね。これはこのような路上パフォーマーの間でよく使われている装置です。これも既製品ではありません。 別の楽器を二胡に改造している例2 中国の老人はこういうものを使っていなくても二胡を拉きながら足を踏みならすことがあるので、そのあたりから発展して作られたのかもしれません。

 坠胡に改造されている中国三弦は、日本の三味線、沖縄三線と比較して大型です。沖縄三線の場合は、今のものより昔の方が細身だったようなので、中国から渡ってきた時に小さくされ、時代と共に若干大きく戻されたようです。しかし、最近は昔の三線を復刻する動きもあります。この古い型の三線には中国弦が合わせられます。

二胡の一部を改造している 二胡は、規格統一以前は様々な大きさがあり、その時代のものは今の二胡より小さいものが結構ありました。

 現行の二胡を音質改善の目的で改造する人もいます。右の写真の二胡は、初めから隙間があったもので、ここに緩衝材を入れていたのですが古いのでコルクに交換したものです。コルクによって棹と胴に分離する方法は音質を向上させると言われ、ここに隙間がなくても削ってコルクを入れる事例もあります。

 一方、工作がしっかりしている二胡は、堅く填っていてガタがありません。こういう二胡は、湿度の変化による柔軟性がないので、妙な雑音の原因になることがあります。もちろん、製品としてはガタがあるのは良くないのですが、楽器としてはどちらが良いかというのは難しいところです。二胡を一旦バラして再度組み立てると問題が改善することがあります。

 福建・潮州の音楽で使われる二胡があります。福建人の多くは華僑となり世界各地に移住しましたが、そのうちの1つにタイ・バンコクのヤワラートがあります。弦堂創業時なのでだいぶん前ですが経由で少し立ち寄った時にヤワラートにある楽器店で潮州二胡の棹を見つけました。自作者が大雑把なところまで外部に委託展示している商品は半分ぐらいは新品の楽器なのですが、それ以外は売れ残りで、もう何十年も放置してあるようなものまであります。弦楽器については新品は紅木二胡で北京ではおよそ見かけられない程質の低いものばかりで、古いものはというと福建の二胡のほとんどは壊れたものになります。件の棹は一瞥するなり本黒檀であることがわかったので、これをターゲットに定め、親父に全然違うものを指差しては価格を聞き、3番目にその黒檀を指しました。急に価格が上がりました。「何でや!」と突っ込むと親父は平然と福建訛りで「わからん者は帰れ」と言いました。粘りましたが親父は頑として価格を改訂せず、やむなく撤退しました。それから何年も経ってからまたヤワラートに行くとその棹はまだありました。世の中には親父好みの物の価値がわかる人間はいないようです。親父は「またお前か」こちらは棹を一切見てないふりをしつつ「まだありますね」と意味深長なことを言うと親父は以前の価格を繰り返しました。しょうがないと思って黙って金を出しました。それから約1年かかって呂建華のところから戻ってきたのが以下に掲載しているものです。潮州云々はこだわらずに、まあ、とりあえず使えるようにということでオーダーしたものです。こういうのも改造の一種でしょう。なかなか風流で面白いものが出来上がったと思います。

 この計画はまず棹を見つけたところから始まっています。弦軸はありますが胴は失われているという前提ですので、その復旧のために考えられる方向性は2つあります。一番ベストなのは福建の工房に送って元のように使えるように戻すことです。そうすると高胡に近い感じになって福建の音楽をやらなかったとしてもそれなりに使えるところはあるのではないかと思います。もう一つは二胡のように使っていこうという挑戦です。棹が二胡のものとは全く違うわけですから二胡の音を期待するものではありません。だからこれは計画段階から滅茶苦茶です。本来やってはいけないことです。自分で勝手にやるなら良いですが、工房に依頼するわけですから依頼された方が迷惑です。中国ですから適当に請け負って適当に胴をつけて返してくるといったこともあります。そこでこれをどうして二胡として使うのか、明確な理由があった上でそれを共有できる工房に依頼する必要があります。その理由とは一体どういうものだったのか、古楽器をやらない人には説明できないし、この個体に関して理由を知ってもしょうがないと思うのでここでは言いませんが、それぐらい改造というのは難しいものです。少なくとも既成のものが如何にどのように優れているのかを知っていなければ、それとは違うことはできません。なぜなら既成のものは全てが洗練されており疑問の余地がないわけで、それを超えたところで理論展開しなければ成立しないからです。そうでないと訳のわからないオーダーになってしまいます。それでも自分がやるわけではない、ジャッジする立場だからと思って無責任にオーダーする人は必ずいます。しかしこうしたアブノーマルなものに胴を当てがい、全体として完成したものを作ろうと思えば試作を重ねる必要があります。5個の試作を作るとその費用を払うのはオーダーした人であるべきです。しかもその5個は全て特注なのです。既製品の数倍のコストがかかるのであれば、無責任でいられる人はいないでしょう。プロとかハイアマチュアの世界です。憧れとか遊びでやるには高リスクであるし、知識と経済力を同時に必要とします。改造なんてものは二胡に限らず何でもこういうものです。当たり前のことですが、あまりにもわかってない方々からの問い合わせが時々あるのでわざわざ説明した次第です。改造は最終オプションで喜んでやるものではありません。困ったからやるものです。弦堂のような販売者は様々なことをより知っている必要があるし、自分が人柱になってあらゆる可能性を点検しておく必要があるので避けてはいられませんから、様々なオペレーションを実際に実行していなければなりません。その一環で今回のような改造計画が出ることがあるし他にももちろんありますが、やらないで済むのであればそれがベストでしょう。

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