広東音楽を演奏する時は、高胡を使わなければいけませんか? - 二胡弦堂


高胡の駒の位置  広東地方は中国の最南部にあって中国の中心から大きな物理的距離があるので、独自に文化を発展させてきました。広東の商人は諸外国と活発に交易を行い、その財力が音楽文化を発展させてきた側面もあります。広東音楽は日本の芸能にも影響を与えてきたので、中国の他の地域の音楽より広東音楽の方がどちらかというと親しみ易い場合もあるかもしれません。

 広東音楽を演奏するためには、高胡という楽器を使います。これは二胡より4度音程高く、二泉胡より1オクターブ高い音の楽器です。開放弦は、G,Dなので、バイオリン曲を転調せずに演奏できます。それゆえ、バイオリン用に作曲された「陽光照輝着塔什库尔干」や、西洋音楽の「チャールダッシュ」といった上級者に人気の曲は、高胡の10級の曲目に指定されており、二胡よりも高胡の方が相性が良いものです。すでに気に入った二胡を持っておられる方は、次に高胡を購入するのはいいかもしれません。

高胡を演奏する劉天一  右上の写真は、高胡に駒を付けている様子ですが、広東音楽の場合はこのように高めにセッティングします。広東音楽以外のものを演奏する時は、二胡と同じように蛇皮の中央に駒を置きます。二胡は足の上に楽器を置きますが、高胡は足で挟んで演奏します。演奏している写真は、広東音楽の巨匠・劉天一が演奏している様子です。

 高胡は、広東音楽で使われる以外に楽団の高音部を担当するのにも使われます。それで二胡のように演奏できるように改造された高胡もあります。本場の広東高胡にさらに北方独自のタイプの高胡もあります。広東高胡は粤曲(yue-qu)など広東地方独特の曲を演奏するための専用琴です。それ以外の高胡は二胡よりも高い音域を担当するものとして何でも演奏できるように考えられています。それで広東高胡は避けた方が良いように思われますが、事実使っているのは広東人ぐらいで、他の民族での使用者はほとんど見かけないようです。しかしそれでも実際によく調べてから高胡を選ぶ人もおり、ある人は広東高胡を選ぶ場合があります。音量が豊富で他のどのタイプの高胡よりも音が魅力的だからです。弦堂としても、合奏や西洋音楽を演奏されるのみの方におかれても広東高胡をお勧めする次第です。広東高胡を聴いたら演奏会用高胡は買う気になりにくいものです。

 広東高胡は足に挟みます。浅く挟めば音は高めに感じられ、深く挟むと深みが出ます。広東人はこの微妙な効果を使って曲を表現します。これもまた高胡演奏の醍醐味です。この特質ゆえに二胡やその他の楽器とは全く違う楽しみがあります。

高胡を改良した劉天一と陸全  高胡はもともと20年代に二胡から改造されて作られた楽器です。呂文成が楽器製作者の陸全(写真の右の方。左は陸全と共に高胡を改良した劉天一)と共に開発し、それまでバイオリンを使っていた広東音楽に革命をもたらしました。呂文成は進取の気性に富んでおり、いち早くスチール弦を高胡に採用したので、高胡という楽器は元々生まれた時からスチール弦を使っていました。しかし劉天一は内弦に絹弦を使い、外弦はスチール弦を使うという新しい方法を70年代に採用しました。内弦に使われる絹弦は二胡と同じものです。二胡はDですが、この同じ弦を高胡ではより高いGに合わせます。高胡の開発者・陸全の楽器はすでに幻となっており見かけることはありません。彼の息子らが父の店を継ぎましたが、弦堂の調査では該当住所にはすでに店舗はなく電話も通じませんでした。

 高胡を買いたくない場合はどうしたらいいでしょうか。二胡の千斤を下げて高胡の音域を得ることによって代用できます。下げ幅は下の糸巻きから駒までの距離のちょうど真ん中です。駒は二胡用のままでもいいと思います。広東音楽を二胡用に転調した楽譜も売っています。でも曲の雰囲気が変わってしまうので、できれば高胡を購入するか、二胡の音域変更で演奏する方がより楽しめると思います。

 ベトナム音楽は中国の影響が強いと言われていますので、地理的な位置の関係から広東音楽の影響があるのかと思って動画サイトなどでいろいろ見てみますと、必ずしも広東の影響だけではないようですが、二胡に関しては広東の影響が強いようです。下の写真ですが、腿に挟むだけでなくあぐらをかいて楽器を接地させて演奏する方法も見受けられます。足の裏を使って押えるのは微調整が可能なだけに細かい変化をつけやすく、これもまた1つの技術のようです。

ベトナムの二胡




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