二胡用スチール弦ガイド - 二胡弦堂


二胡のスチール弦は、中国国内では北京、上海、
国外ではドイツ、オーストリアなどで製造されています。
それらは、国やメーカーが違えば、様々な個性が見られます。
もし普段スチール弦を使っておられれば、この中からご自身の演奏スタイルに合ったものは何か
見極める必要があります。
この多様性は、絹弦にはない特徴と言えます。
それで、いろいろ交換してみるという絹弦とは違った楽しみ方ができます。

ここでは、数多くあるスチール弦の中から幾つか選び出し、評価をしてみたいと思います。
基本的には「弦堂」店主の主観によるものですが、客観的な意見もあれば掲載しています。

評価には、価格との比較も重要な点です。
最高の価格の弦を「100圓」とし(実際には比率の関係?で、99圓が最高になっています)
それを基準に価格を表示しています。

(注記:本稿は、販売ではありません。
また、欧州弦は価格が上がっていく傾向がありますので、価格比較は正確ではありません。)


「紅龍」二胡弦 ピラストロ社(ドイツ)

レッドドラゴン二胡弦
価格:88圓

最も高次元で完成された二胡弦です。
表現力と安定性で優れており、以下、これを原器として評価していきたいと思います。

ピラストロ社は、バイオリンなど西洋弦楽器の弦を多く作っている会社です。
パッケージの中に入っている弦の袋は、簡素なものでありながら、洒落ていて、弦の取り出しから楽しませてくれる、そんな配慮があります。

この二胡弦は、西洋人が作ったものですので、この弦に漲る感性は、中国のものではありません。
まるで、バイオリンのように鳴ります。
これは、この弦の唯一の欠点であると言えます。
西洋音楽を演奏するなら、相性は良いかもしれません。
中国のレパートリーを演奏するなら、雰囲気の点で他にいいものがあります。
しかしこの弦の素晴らしさは、その欠点を覆って余りあります。
一度、使っておきたい弦です。



「二胡」 トマスティック・インフィールド社
        (オーストリア)

インフィールド二胡弦
価格:99圓

上記、ピラストロの二胡弦より高額なものは、このウィーン製の弦のみです。

オーストリアとドイツは共にドイツ語圏ですので同じように思われがちですが、国民性は全く違いますので、音もやはり違うものです。
ウィーンは、宮廷文化を受け継いだ独自の弦楽器の伝統と誇りがありますから ”ウィーンの美” というものから一歩も譲歩しないようなところがあります。
それで、東洋の楽器でさえ、欧州の古き佳き貴族サウンドで鳴らすべきだといわんばかりの鳴り方をします。
ドイツの弦は、こんなに融通が利かないことはなく、何とか別文化にも巧みに対応しようというものが感じられますが、ウィーン製の弦には、そういうことを考えたこともないような一種の頑固さが見受けられます。
それだけ自信があるだけに、出てくる音は素晴らしいものがあります。
こんなに美しく輝かしい鳴りを示す二胡弦は、おそらく他にないでしょう。
素朴な弦楽器だと思っていた二胡が、黄金色のサウンドを放ちます。

この弦についてはとにかく「このサウンドでなければいけない」という譲れない理由がない限り使わない方が良いと思います。かつてウィーンは帝国の首都で非常に華々しい都市でしたが、当地の宮廷歌劇場のサウンドもそれを反映したもので、ここにしかない独特のサウンドを持っていました。それはガラス細工のような弦楽器の紡ぎ出す音に金管のメロウな響きが纏わりつくというものでした。この”甘美”を得るためにすべてが組織され、彼らの弦楽器も、歌劇場の裏口を出たら向いにある小さな工房で作られていました。ここ楽器の音は多くの人の評価では良くなかったとされ全く美しい音で鳴りませんでしたが、宮廷楽団の演奏家が弾くとぜんぜん違う音が出たと言われています。トマスティックはまさにその音が鳴ります。すべての音楽をウィーン宮廷の響きに変えます。そして低音が出ません。ウィーンの伝統は低音が弱いのです。かつての栄光を懐かしむようなこの響きをどうしても得たい場合のみ手にすべき弦です。



「二胡弦」 北京乐海乐器厂(中国)

阿丙牌
価格:35圓

中国音楽家協会二胡学会 元会長 蒋巽風(蒋风之の子)の監修による二胡弦です。

価格は安くなりますが、純中国産の二胡弦としては、高級なものです。
これらの国産高級二胡弦の特徴は、大師(巨匠)が監修していることです。
他の特徴としては、材料に銀や錫を使っていると大書してあるものが多いことです。
この二胡弦もそのうちの1つです。

中国文化を良く理解した良いもので、二胡を中国楽器として本来の持ち味を生かしながら鳴らすのであれば最良の弦です。
東洋独特の神秘性が宿ると考えれば、それを活かした表現を模索できるかもしれません。
音量を下げるような感じで静かに擦れば、奥ゆかしさがあって、独特の世界がみえてきます。



「銀二胡套弦」 中国北京常青制琴社(中国)

常青牌二胡弦
価格:35圓

上記、蒋巽風監修のものと比較して、確かに違うものではありますが、同じ会社が作っているのかと思うぐらい感覚に近いものがあります。
こちらは、王国潼監修になります。

常青牌は、パーケージの裏側の説明によると北京星海楽器の退役職人によって設立された会社ということで、ベテランの職人による良質二胡弦を手にすることができます。

奥ゆかしい、品のある鳴り方です。



「中芸科技 二胡弦」 中国芸術科技研究所(中国設計・ドイツ製造)

頂級二胡弦
演奏家級二胡弦

価格:78,68圓

中国芸術科学技術研究所が開発しドイツに発注して作らせている弦は、中国国産と外国勢の間を取ったようなところがあっていいものです。その最高グレードは、SOLOというもので、純度を極限まで高めたものにしか出ないような甘さがあります。かといって、頭が堅い技術者が作った感じは(しっかり作っているという良い意味では幾らかあるものの)それほど無く、表現もよく練り上げられています。この二胡弦のサウンドは新しいです。その名の通り、プロにでもなるなら良かろうかと思いますが、愛好家が楽しんで弾く音ではないようなところがあります。何か、勝負に出るときに抜く細身の剣のようで、争いから離れた人が使うものではないように思えるのです。それゆえ、演奏会、コンクールなどでソロを弾く場合などは、最適かもしれません。



「FangFang 二胡弦」 不明(中国)

fangfang弦
価格:25圓

上記、中国芸術科技研究所が、これだけ完成度の高いものを作れるなら、安価なモデルでもいいのではないかということで、選択したのがこれですが・・・
製造会社を示す表示がありませんでした。しかし科技研の開発で間違いなく、一方で製造は北京です。

品質が抜群に良いからか、音楽院にも売っています。

耐久性を高めるために無理な設計をせず、使用期間は2,3ヶ月と割り切って、音色を犠牲にしていません。
パッケージもシンプルで費用をかけず、内容を重視した誠実な作りです。
練習する二胡弦としては、価格とのバランスを考慮して、これが最適です。

これは、上級モデルにありがちな堅さがなくてすごくいいものです。
高級バージョンのいいところだけを取ってきたような感じです。
パッケージを読むと、耐久性が劣るだけでさほど変わりはないようです。
上級品にはない余裕が感じられます。
不思議とこの弦のビブラートからは中国の音が香ります。

この弦は仕入れました。



「敦煌型 二胡弦」 上海民族楽器一厂(中国)

敦煌牌二胡弦
価格:10圓

普及品の二胡弦ですが、多くの初心者が練習に使っており、南方の楽器店であればどこにでも売っています。

ベテランの演奏者は、結構この弦が好きだという人は多いです。
この種の弦を使う人は、弦が1つ切れたら、もう一方も同時に交換せず、切れた方だけ新しくするのか、パッケージが外弦と内弦で別になっており、それぞれ別に購入できるようになっています。

ともかく、二胡のレッスンを始めてあまり期間の経っていない方は、この弦で練習するべきではありません。老師が「これでいい」といっても、替えた方がいいです。
このあたりは、上手な人には分かりません。

音の立ち上がりも遅く、この弦で綺麗な音を出すのはかなり腕が要ります。
数が多いということもあるのかもしれませんが、大概中国で二胡をやめた人が売りに持ってくる楽器にはこの弦が付いています。
初心者ほど、高級な弦を使った方がいいです。



「二胡弦」 中国北京常青制琴社(中国)
      北京星海福音琴业有限公司(中国)
      北京堤琴厂(中国)
      河北新海乐器琴弦有限責任公司(中国)

常青牌二胡弦
星海牌二胡弦
旧星海二胡弦
河北二胡弦

価格:すべて、それぞれ5圓


上記、上海の敦煌型に対し、北京とその近郊で作られている二胡弦です。
品質は、あまり変わりません。
やはりこれも、初級者が練習に使わされるのは、耐え難いものがあります。
しかし常青牌は結構良く、価格も他に比べて上昇気味です。



「二泉弦」 北京乐海乐器厂(中国)

二泉弦
価格:40圓

二泉弦は中国産に限られるようです。
欧州勢は、手がけていないようです。
普通の二胡弦より少し高価になります。
普及品の弦から、右のような高級品まで幅広くありますが、高級品は見つかりにくい問題があります。



満江紅系列「二胡弦」 広州羅漫士乐器製造有限公司(中国)

満江紅二胡弦
価格:40圓

最近、新規発売されたと思われるこの二胡弦を見つけたので使ってみました。
演奏家級のもので、他の中国製高級弦と同様、これも銀入りです。
非常に綺麗な音で、繊細に響きます。



 ということで中国で販売されている弦の代表的なものを幾つかみてきましたが、ここで全体を総括したいと思います。まず出回っている敦煌牌ですが、これを使って内弦が出にくいとかバランスがおかしいと思わなければ、あなたは結構上級者なのでもう今や弦を何にするか悩むことはなくなっているし、敦煌牌で何も疑問を感じないと思います。ここまで行くのは1つの目標なので敦煌牌は使えないと感じても捨てない方が良いということになります。敦煌牌の問題は実際、問題ですらなく単に個性なので、決して悪いわけではないのです。それどころか中国の上級者、というと凄く上手な人たちですが彼らには非常に人気があります。だけどもし「内弦が出にくい」と少しでも思ったら、とりあえず敦煌牌はやめた方がいいと思います。気になって肝心なことに集中できず、進歩が遅くなるからです。置いておけば、そのうち使えるようになりますし、今これで何とかやっていこうとするのは、疲れるだけだと思います。

 欧州の代表的な建築では知られているもので、ノイシュヴァンシュタイン城、モンサンミッシェル、サグラダファミリアなどがあります。これらは立体的で天に向ってそびえ立っています。中国は異なり、故宮は横に広がっています。音楽も同じで、欧州は立体感がありますが、東洋は平たい表現になります。そういう文化的背景から、中国の弦は構成感が出ません。西洋音楽の後、中国音楽に入られ中国の弦を使うと違和感に悩まされます。しかし中国の弦は、まさにこうでなくてはなりません。これに慣れないうちは、少し距離を置いて無理をしないのが結局、早く理解できることに繋がると思います。FangFangは中庸を得ており、かといって中途半端という感じも全くない完成されたものなので、何を使うか迷うようであればこれにしておけば問題ないし、結局ご自身で調べられてもそうなると思います。中国のサウンドを追求することに楽しみを感じるようになると、虚心坦懐を地で行く安い弦がどんどん好きになると思います。安い弦は「安物」ではなく、単にスタンダードなだけです。とても良いものです。

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