中国で二胡を買って日本へ発送する時の注意点 - 二胡弦堂

 


 中国の楽器街で二胡を買うのは簡単ですが、その後の手続きは先に考えておかなければいけません。まず、CITESを取得します。これは半月以上かかりますが時間さえあれば可能です。中国の販売店はCITESを「簡単に取れる」と言いますが、二胡を購入して支払いを済ませると必ず「極めて難しい」に変わりますので注意が必要です。それでは「CITESを取ってから購入します」という方法も考えられますが、これはすぐに了承されます。そして幾ら電話しても「もうすぐ」と言われ永遠に取得できません。絶対に自分でやらなければならないと自覚して下さい。

 CITESを取得しましたら楽器を持ち帰ります。中国側の税関は「海关」と言います。ここでは二胡を所持していると、中国文化支持者となりますので丁寧に送り出されます。問題は一切発生せず、書類チェックはないし「二胡ですか」「そうです」「どうぞ」というやり取りで通過できます。中国税関では一切やることがないというのが1つ目のポイントです。CITESは日本の税関で必要です。通産省のCITES部署に電話して聞いてみますと、2012年7月以降法律が変わり二胡は個人の持ち物であれば4把までCITESなしで通関できることになったと教えてくれました。しかし税関では2把までという職員もいれば、CITESがないと通せないという職員もいて状況は乱れています。いや、乱れているのではなく、役所というのは普通にこういう状況です。現状ではCITESは必ず取得すべきものという認識が必要です。日本と中国は太陽と月ぐらいに違う国ですので、常に業務で接触している役所同士はあまり関係が良いものではありません。日本の職員が中国のものに対して冷ややかな見方をすることは普通ですので、全てにおいて嫌疑をかけられないようにしておく方が望ましいと思います。

 皆さんの多くは短期滞在なので、中国で信用できる人物を見いだしCITES取得後に二胡を日本に後から発送してもらうということがあるかもしれません。この場合はCITESがあっても通関を止められることが結構あります。うちはこれまで何回税関から電話がかかってきたかわかりません。小店で二胡を予約されたことのあるお客さんの中には、なかなか通関できない二胡をしばらく待たされるということがあって驚かれる方が結構おられます。特に難関が大阪税関で、小店は関西ですが、カーゴ会社の都合で東京に廻されたりすると、その方が速く到着することさえある程です。全国どこに住んでおられても大阪税関を通る可能性があるので、難しくなるとご自身で関西国際空港へ行かなければならなくなります。もちろん、他の税関が必ずしもゆるいというわけではないので注意が必要です。税関は専門職ですから異動がほとんどないようで、そのため長期に同じ状況となる場合が多く、責任者の交代はほとんど期待できません。通関できない理由は首を傾げるようなものもありますが、彼らの判断は絶対なので担当者が一旦結論を出すと何を言っても無理です。二胡を中国から買ってくる方がおかしいという認識が普通ということを把握した上で慎重に行動する必要があります。アメリカの品と同じ扱いはありません。我々は社会で肩身の狭い楽器を演奏する人々なのです。空港荷物のエリアは基本は立ち入り禁止区域ですが問題があるとここへ入域できますので、通関トラブルでここへ入る人は割といます。本稿の警告を無視して通関を試み禁止区域への入域の必要が発生する、或いは入域達成のためにトラブルを待っていたという強者の皆さんのために、大阪税関入域法をレクチャーしたいと思います。

関西国際空港一階  これは関西国際空港一階です。到着ロビーですので、皆さんが海外から帰られた時は、検疫、パスポートコントロール(イミグレーション)、ターンテーブルで荷物受け取り、税関と通過して最後にここに吐き出されます。帰国時にこの税関でやることがありますので、それは後で説明します。ここから外に出るとバスターミナルがありますので、バスで帰るか、鉄道で帰りたければまず2階に上がります。もしバスで来られた場合は国際出発ロビーで降りますので4階になります。いずれにしても立ち入り禁止エリアを目指す場合は2階の鉄道改札方面へ向います。

鉄道駅  2階に上がるとこのような渡り廊下があり、これを渡ると鉄道駅です。この中へ進入します。左が券売機で右に改札があります。そこをまっすぐ通過します。関空にはもう1つ奥に建物があり、エアロプラザと言います。ホテルなどがあります。そこへも渡り廊下で行けるようになっていますが、今回はその廊下は渡らず、その手前まで行きます。鉄道駅は関空に3つある建物の真ん中に当たります。この1階が目指すところです。

鉄道駅を過ぎて一階に降りる階段  エアロプラザは正面奥に見えます。そこまで行かずに渡り廊下の両脇にある階段を下に降ります。写真の例は左側の階段です。どちらの階段を降りても構いません。渡り廊下の真下に向います。そこに入域証を取得できるブースと禁止エリア専用バス停があります。階段を降りたらすぐのところにあります。

入域証の取得ブース  入域証を取得するブースで何をしにいくのか告げて書類に必要事項を記入します。空港職員のほとんどはこの場所を知らないか説明できないので、そこら辺の人に聞けば何とかなると考えないようにした方が良いです。空港の組織は大きく複雑なので全体を把握している職員は少なく、インフォメーションに聞いても全くわかりません。禁止区域内の勤務の人がいればわかりますが、彼らがこのあたりにいる場合は勤務を終えているので利用客と区別がつきません。本稿をしっかり読み、自力で向う覚悟が必要と認識してください。

入域証  このような札を貰います。番号はちょうど100番です。一時立入証とあります。この立ち入り証の裏に行き先でスタンプを貰い、確かに目的地に行ったという証明にしますので、このことを忘れないようにします。ここへ戻ってきた時にそのスタンプを見せて返します。

禁止区域専用バス停  このブースのすぐ前が禁止区域専用のバス停です。ここから乗って1つ目のバス停で降ります。結構距離があるし、途中に車用のゲートもありますので歩いて行くことはできません。料金は190円です。自家用車で向うこともできますが、わかりにくいので一回はバスで行った経験があった方が良いと思います。案内の表示などはありますが、一般の人には関係ないエリアなので職員でなければわからないような表示だからです。或いはバスは便数が多いので車で待ち、ついていくという方法もあります。ゲートでバスに先に行かれますが、ゲートを超えるとまっすぐ行くだけで郵便局が見えてきますし、それを左に見ながら通過するとこの次の写真の風景が見えて来るはずです。

 ここで必要書類についてまとめておきます。税関がどんな理由で止めているか、各事例で異なると思いますが、商業用は簡単に通しませんので(商業用とは友人のために買ってきて手数料を貰うという場合も含まれますし、一旦疑われるとそうでなくても商業扱いになります。これはどこの国でも、税関というのはこういう風に処理しますので大阪だけではありません。)手荷物扱いにするのが安全です。つまり、帰国時に別送品手続きを念のためにしておきます。黄色の細長い紙をフライト中に受け取るか、空港に着いてからこれにすべての旅客が記入しますが、この中に別送品にチェックする項目があります。そして裏に内容物を記入します。きっちり全部書かないと難癖をつけられますので注意します。2枚書かないといけません。この別送荷物にCITESが入っている筈ですので、帰国時に税関でそのことを言います。1枚は控えとして受け取ります。別送荷物は無事に通関すれば、何事もなく家まで送られてきますので、控えは捨てても構いません。税関で止められれば、この紙を持参で空港に向います。パスポートと荷物の発送票(なくても荷物の番号がわかれば良い)、保管料を支払ういくばくかの金があれば問題ありません。商業品として申告するか、決めつけられると消費税を払う必要があります。この辺は世界中の税関がこういうやり方で文句を言っても通りません。私は30カ国に及ぶ海外渡航履歴があり、多くの国境を超えていますので、このあたりは間違いありません。発展途上国では、タバコをやれば問題ないとか、いろいろノウハウがありますが、日本や中国のように裕福な国では一切通用しないので、理不尽な場合でも払って済ませるしかありません。

貨物税関の入り口  1つ目のバス停で降りると郵便局があります。その裏に回ると「貨物合同庁舎」の入り口が見えます。中に入ると右に警備員がいるので要件を伝えると、警備員の横のドアから中に入れます。その中が貨物の税関です。そこに行って必要書類を見せます。

JALカーゴの建物  荷物を保管する倉庫群の中のどこにあるかを特定できれば、2名の税関職員とそこへ向います。基本的にJALとANAがすべての業務を代行しているようです。この2社に各運送会社が取引させてもらっているという立場になりますが、郵便局が最強なので、EMSを使えば通関はしやすくなり、民間を使えば問題が発生しやすくなります。SALや航空便ではなく最も運送料が高いEMSを使うと免税されやすく何かと有利ですが、中国のEMSも国営なので役人相手となり、内容がやばいので詳しい話は避けますが難しい問題が発生しがちですので、民間に逃げたくなるという事情があって悩みが深まります。もし民間を使うなら、順豊を使います。この会社は中国で最も評価が高い運送会社で送料も他の倍額ですが迷わずここを使います。ANAカーゴの建物いいかげんな運送会社が幾ら値段を下げると言っても応じるべきではありません。さらにトラブルが増し打撃を受けるだけです。順豊は中国の会社なので日本の税関内での立場は小さいです。しかも送ったものが二胡であるとか、微妙な要素が複数重なるので、かなりの覚悟が必要です。順豊の社員では対応が無理であれば、あなたが本稿の手順で税関へ乗り込みます。尚、中国EMSでの問題を極力避けたい場合は、北京の場合であれば、荷物を郵便番号100001の建国門にあります本局へ自分で持ち込みます。ここはまともな対応が受けられます。話を戻しますが、荷物が見つかれば中を検査し、荷物を持たずに税関に戻ります。税関で手続きが完了したら自分だけ戻って荷物を受け取り、保管料を払います。保管料は大きさにもよると思いますが、1日100~200円と考えれば十分と思います。これで終了です。ここにJALとANAの上屋(うわや)の写真がありますが、どちらも同じ位置から撮っており、立ち位置はバス停ですので参考にしてください。JALの正面にあります。このバス亭は最初に乗った空港駅から2つ目に当たります。片道運行なので、これに乗って一周したら空港駅に戻れます。到着したら札が回収されて終了です。お疲れさまでした。