音の良い二胡はどのように選べば良いでしょうか? - 二胡弦堂


ソーナーと言う中国のラッパ。二胡と一緒に演奏することがある。  二胡という楽器は、値段と音質が比例しないと言われます。どんな楽器でも多かれ少なかれこのような傾向はありますが、二胡の場合は顕著であるとされています。もちろん一般的な基準はあり、紅木よりも紫檀の方が良く価格も大きな開きがあるなど、一応の目安となるものはあります。それにも拘わらず、紅木の方が良かったということも珍しくなく、価格の違いがありますので少なからずショックをもたらすことがあるのも事実です。そこで、悩ましい二胡の選択をどのように解決するか考えてみたいと思います。

 これには回答や結論の類は存在しないという考えもありますが、それは確かに一理あります。しかし原器と呼べる物があれば比較が容易となり評価がしやすくなります。西洋東洋共にこの基準となる楽器があります。かといって基準があるからそれがすべてだとは言えないことも確かです。それでもとりあえず、まずは西洋の基準について考えてみることにいたします。

 バイオリンでストラディバリウスというイタリアの最高の名器があります。音の魅力に関して言えば、このバイオリンより良いものはもっと他にあります。ストラディバリウスは音が硬いです。およそ聞き惚れる音というには、ほど遠い感があります。以前にテレビで、2把のうち高級な楽器はどちらかを当てるという企画をやっていました。ほとんどの出演者は安価な普及楽器を選択し、最後に専門家の回答を聞いてショックを受けていました。しかし楽器を持ってきた先生によるとその評価は間違いではないという・・・名器はホールで鳴らさないと美しく鳴らないと。どんな使い方をするかによって何を以て適切とするかが違うということのようです。プロ演奏家は演奏する環境が似通っているので基準も同じようになりますが、アマチュアはもっと複雑で多様な要求があるので、そのための基準を見いだすのは難しいかもしれません。

 これと全く同じ事はギターでもありますし二胡にもあります。基準は多様なので、楽器に対する自分自身の評価は別の基準で測ると間違っているということがあり得ます。しかし自分自身が良ければ、別の用途で良いパフォーマンスを発揮する楽器でなくても構わないということはあるでしょうからそこはあまり問題になってこないと思います。この基準がもし価格であるとか他人の決めた要素に左右されるなら自分にとって良い楽器は見つかりにくくなります。これは理論的にはわかっていても実際にはすごく難しいものがあります。

 スペインの有名なチェリストでパブロ・カザルスという人がいます。彼は「なぜストラディバリウスを使わないのですか?」と聞かれた時に「自分にはもったいない」「自分には合わない」と言って拒否したと言われています。資金が無かったからお断りしたわけではありません。カザルス程になってくると無償譲渡を受けるのも容易なので「無料でも要りません」と回答したことになります。カザルスの美観は狂っていたのでしょうか? 彼の代表作の1つにバッハの無伴奏チェロ組曲があります。これを聞いた多くの人は、美しいとは思わないようです。彼はキャリアを通して1把のチェロのみを愛用しました。これは弦楽器の最高の産地であるクレモナの楽器ですらありませんでした。彼には自分の理想とする音がすでに自分の中に有り、それが明確だったので他人の評価に左右されなかったのです。ところが現在ではカザルスがヴェニスの楽器・ゴフリラーを使っていたということで、チェロに関してはストラディバリウスよりもゴフリラーの方が上であるなどと言う人もいます。しかしここまで読まれた皆さんは、どちらの方が上かという議論自体がパロディだと感じられるに違い有りません。

 名器と一般?の楽器の違いについても考えてみます。名器は音が必ずしも魅力的とは限りません。魅力的な音を獲得するためには、中音域の密度を高めねばならず、そうするとレンジが狭くなります。高音と低音が出にくいということになります。一方、レンジを広げると音の密度が薄くなります。名器はこのバランスを考え、一見不可能という領域まで踏み込んでいるところが評価されています。中域だけ鳴らせば、名器より安価な楽器の方が美しく鳴る場合が多々あります。これは単純な例ですが、このような相違は複雑にいろいろあるので、もし個人的に拘りがあるなら、いわゆる名器よりも個性的な楽器の方が良いことになります。下の記事に関わっている人々は、音のレンジの広さと密度の関係が解っていません。しかし一方で、この記事の内容も真理を突いており間違いではありません。音色は新しい現代楽器の方が良いかもしれませんが、楽器というのは音色だけで測れるような簡単なものではないということです。

バイオリンの音質比較についての読売の記事

古い二胡  いずれにしても、あらゆる楽器を探し尽くした人が最終的に到達するのは古楽器であり、二胡に関してはこの分野の知識は閉鎖されており、一部の文化人のみしか理解していません。しかしこれとて万能ではありません。それどころか非常にクセがあります。ハイアマチュア用と言った方がいいかもしれません。昔はプロがハイアマチュア的マニアックな存在だったからでしょう。最大の注意点は、琴托がない楽器は、現代楽器より美しく聞こえるということです。演奏者自身が直接聴く音は、琴托がない方が綺麗に聞こえます。琴托は音を遠くに響かせるために付けられています。それで離れたところで聴いた時の音が評価されるべきものです。自分で音を確認すると古楽器の方が美しいので現代楽器を否定するのは簡単ながら、そのような評価の方法は拙速であるかもしれません。しかし一部の人は決して多くの人の前で演奏を披露しようと思わないので、古楽器のデメリットは彼らにとってデメリットではありません。それに琴托がない楽器が遠くで聴いて美しくないということもありません。そもそも古楽器は戯劇で使われていたので、遠くで美しく響かなければ使えませんから。

 自分で良い楽器を選択することに不安を感じると言う方もおられると思います。その場合はだれかが「これだったらいいですよ」と言う楽器を買うことになりますが、いつまで経っても育って来ない楽器を掴まされないようにだけは注意しておく必要があります。音を聴いてもわからない、ということが前提になっているので、それ以外の要素で判断していくことになりますが、重要な点は材の選定の時に2号材を購入しないということです。最初に楽器を買う時は高い楽器を購入しようとは思いません。それで紅木を買うことになる場合が多いと思います。紅木でもいろんな価格があります。採ってきた部分によって価値に差があるからです。安いのが1万円ぐらいで売っているのに高級品は6万円ぐらいするかもしれません。そこで安かろう悪かろうでは困るということで6万円に決めるとします。しかしよく見ると、老紅木の安いものがそれぐらいで買えるということで、その方がいいかなと思うかも知れません。この場合、老紅木が3号材(というのは聞いたことがないですが2号材より劣る感じのものはありますからね)であれば、1号材の紅木の方が音が良いです。それでもそこは人間、見栄があるので、老紅木を買います。だから中途半端な材でも売れます。紫檀となってきますと2号材でも非常に高価ですが、これに30万払うなら、紅木の6万の方が良いです。紫檀の1号材に100万払うなら問題ありません。どの材の楽器を買うかより、どの部材を使っているかの方がはるかに重要です。これを言うとすべての人が特級品を欲しがります。しかし供給の問題から主に2号材以下しか出回らせることができないのが現状です(これは主に中国の話で日本では販売店によると思います)。つまりわかっていないのに本当に良い物が欲しいなら出費は必須となるでしょう。だけど理解するには浪費が不可欠です。身銭を切らない人にはいつまでもわからない分野です。良い友人がいれば助言を得て一発で成功もありますが、しかし学習は失敗の中に多くの要素があります。2号材の中から非常に良いものを探しても、人の助言でそれを一回目に掴んだ人には価値はわかりません。大変難しい問題です。二胡の音を調べる製作者価値観の違う友人と楽器を交換するなどすれば、コストをかけずに勉強できるでしょうね。同じ価値観の友人は自分と同じものを選ぶので幅は広がりませんが、将来自分が落ちるかもしれない罠に、彼或いは彼女が先に落ちたという悲報がもたらされることもあるし、自分が落ちて友人も学習するということがあります。人が近づいてきて「おい、あれは絶対に買うなよ」「なんで?」「貸してやろうか」といったようなことは実際、あると思います。この罠にハマるのがまた面白かったりもするのですけどね。そうではなくて、使い方が間違っていると友人が指摘してきて良いものだと言いながら返してくることもあります。落ちたと思った筈が引き上げられることもあるのです。弦堂は商品を探すので「これはアウトだろうな。あーだめかな。やっぱりな」はしょっちゅうあります。時々予想外のこともありますからね。周囲に人数がいれば成長はしやすいと思います。

 製作家の場合は楽器を鳴らして音を確認したりはしません。この写真のような感じで確認します。二胡の場合は新琴の段階では音は硬いし、本来のパフォーマンスではない状態での出荷になります。新琴の音には変わるものと変わらないものが混在しています。そこを読むのは二胡奏者の技術の1つですが、それでもそれは実際に演奏しての確認になります。こんな風に皮を弾いたりはしません。これは訓練が必要だと思いますが、いずれかの技術を身につけておくと、二胡の現物を見た時に判断がしやすいと思います。




二胡弦堂
創業2008年 二胡弦堂