二胡駒は、何を使ったらいいでしょうか? - 二胡弦堂


二胡等、中国楽器の駒  絹弦でも金属弦と同じものを使います。二胡駒を交換すると音が変わりますが、その傾向は絹弦、金属弦共に同様です。まず弦の固有の音があって、そこから駒を替えていって調整したりすると思いますが、スチール弦と同様に変わっていくと思います。

 右の写真に掲載しています駒は中国で購入できるものです。様々な中国胡琴類に使う物で、いろんな種類があります。

  • い:二胡用の最も安価な駒です。細かい柾目の美しい材ではあるものの、荒さがあります。二胡駒としては意外と問題無く使えます。京二胡に使うこともできます。
  • ろ:京胡用の駒です。脂分の多い特殊な竹を使っています。あまりに小さいのでこれで絹弦を使うのは難しいものがあります。絹弦で京胡を演奏する場合は、高胡の駒を使うこともあります。
  • は:こういう駒はたいてい古楽器についているもので、楽器に合わせて個人が作ったものですから現代楽器の基準で見るものではありません。古楽器はそれ自体が個性的ですが、駒もこのように調整することによって独自のサウンドを作っていったのかもしれません。
  • に:高胡用の駒です。広東音楽を奏する場合は、蛇皮の中央より少し上に付けます。
  • ほ:板胡の駒です。これも高胡と同様、響板の中央より上に付けます。
  • へ:高胡用の木材の駒です。主に広東音楽以外の曲を演奏する場合に使います。
  • と:二胡駒の一般的なものです。普通容易に入手できるものはこういうものです。これと同型の黒檀も割と簡単に購入できます。
  • ち:中胡用の駒です。二胡用より一回り大きいです。中胡には一般に竹が使われていましたが、最近は木製が主流のようです。
  • り:申胡、中胡用竹の駒ですが、箸置きのようなものが付いています。これは蛇皮の正面から見て右の方に好ましくない振動が発生するのを押さえ込む目的と、弓を収めた時にこの上に載せる、2つの意図があると思います。

白木の二胡駒  名工によって作られた高級駒は、一般の店頭に売っていません。製作者は卸したいのですが、販売店が高価なので仕入れたがりません。日本だと絶対こういうことはないと思います。それで良質の駒は、直接製作者に連絡して購入する場合があります。中国では拘ったものが好きな人が少ないのですが、台湾出身者を中心にそういうものが好きな人は少ないながらいないことはありません。そういうコミュニティのWebサイトで村山工房の象牙駒が紹介されたこともあります。この辺は、大陸と島国の違いでしょう。

 在りし時代には一般的だったと思われる中国の老人たちの駒の買い方は現代人から見ると独特のものがあります。右の写真にはたくさんの駒が入っていますが形はバラバラです。これはある二胡販売店に実際にある販売ケースの中身ですが、元はすべて同じ規格の駒が入っていたようです。購入者は持ち帰った後、削って自分の二胡に合うように調整していきます。しかし二胡は変化してゆく楽器なのでいつまでも合うわけではありません。それで要らなくなった駒をここに入れ、新しいものを買うのです。別の店で買った物をこの中に捨ててゆく人もいます。長年繰り返してこんな風になってしまいました。後で買いにきた人が以前に別の人が工作したものを買う場合もあります。なかなかおもしろいものが見つかるときもあります。(この駒ですが無くなっていたので店のおばちゃんに聞くと、日本からこの駒、ケースごと全部買っていった人がいたようで今はありません。古楽器を使うような人が駒の細工をやる傾向があるのですが、これも古楽器に使うような駒がたくさん入っていますが、そういうことでこういった駒の溜まり場のようなものは市中すっかり無くなりました。生涯に一把しか持たない人が駒を削る傾向があります。もちろん現在でも同じように駒は販売されていますが、誰かが削ったものが放り込まれているということはなくなりました。例えば、下の写真のような状態です)。



 駒の購入の仕方は神経質になるとかなり難しく、自分の二胡に合う駒を探すのはたいへんですが、大陸の奏者はそのあたりを深く追求することはありません。楽器街で入手できる駒も白木か黒檀ぐらいしかありません。紫檀あたりが見つかると珍しいぐらいです。結局のところ、そういう駒で十分であって、特殊な駒など買おうものならかえって相性の問題に悩まされるのでスタンダードなものが一番良いということになって市場もその方向で落ち着いています。春夏秋冬で駒を換える4点セットとか村山駒のコピーとかいろいろ面白いものもありますが、市民権を得るには至っていません。そして駒を削るなどの昔ながらの方法が採られることもなく、スチール弦は駒の溝を壊していきますので、ある程度使ったら捨てて新しいのを持ってきてそのまま使うのが一般的です。(二胡の駒はどのように選ぶべきでしょうかも参照)。

 二胡駒の標準の溝の間隔は6mmです。だいたい5~6.5mmというところです。駒は容積が小さい方が音響的に理想ですが、そうすると溝幅は狭くなる傾向があります。この理由で名師作の駒は溝幅の狭くなるものが多いです。ある程度技術のある奏者でなければ、馬尾が多い弓など使うと内外両弦を同時に擦ってしまい、雑音まみれになることがあります。あまり自信がない向きには弓と駒に関しては普及品を使うのが無難です。時々6mmでも狭すぎるという理由で6.5mmとかより大きな溝幅の駒を探そうとする人がいます。しかしそうすると内外弦の切り替えにスムーズさが少し失われます。上手な人は問題ないですが、上手じゃないから問題に当っている訳で、そこに来て換弦でもペナルティを受けてしまうと例えそれが僅かであってもそういう人にとっては大きな問題になりかねません。それでこういった問題に当たった場合は、正しいことを学んでいないと考えるのが妥当です。小店は販売店ですから色んな方がネットで訪問して来られますが、中国の仕様に対してクレームを付ける方が時々おられ、もちろんそこは説明させていただいていますが「先生が教えている。あなたが間違っている」「先生は誰?」「・・・」となることも結構あります。大陸で決定されている事柄に信用がないためだと思いますが、確かに改良した方がいいところもあるのですが、改良するにしてもどうして中国でこのように決められてきたのかぐらいはわかってからでないとまともな改良もできないでしょう(こういうことをネットに書いても良いものか、かなり思案したのですが、あまりに横暴なので言わないわけにいかなくなって記載、となったのですが、意味がわかられた方が多かったのか、後にこの問題は激減しました)。たとえ5mmで切ってある駒があっても、馬尾がてんこ盛りの弓があってもそれらには一切の問題がありません。これでも演奏はできます。そこへさらに太い絹弦を使ってさらに間隔を狭めたとしても、それでも何ら問題ありません。後1mm狭めても大丈夫なぐらいです。京胡あたりになってくるともっと狭くなってきます。3mmぐらいでしょうか。一定以上の水準の奏者はその組み合わせで演奏できます。この問題に関する重要なヒントは、弓の圧で音量を操作するよりも速度で加減するべき、ということです。中国製に対する信頼があまりにも低いことが不必要にすべてを疑うことに繋がってその結果正しいことがわからなくなる事例が多いのですが、この問題もその一つです。普通のものを普通に使うのが基本です。安いものはそれなりに質が悪かったりはありますが使えないことはないし、それで問題が出た場合ほとんど自分が悪いということです。これがわかるとだいたい一ヶ月ぐらいで問題解決、もう何でも使えるようになっている場合が多いです。こういった事情でくれぐれも道具を自分好みに性急に変えないようにして下さい。




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