二胡の音程はどのように合わせますか? - 二胡弦堂

 


 内弦をD(レ)、外弦をA(ラ)に合わせます。しかしかつては正確に決まっておらず、奏者によって、或いは演奏するその時々によって音程が違っていたようです。それは二胡が伴奏楽器であったことと関係があるとされ、歌手に合わせてピッチを変えていたためだったようです。京胡は今でも音程を自由に変動させて演奏されているだけでなく、楽器の大きさも大小様々、規格は一律に決まっていません。

 それでも両弦の音程が完全5度というのはほぼ決まっており、地方によって4度に合わせる場合や特殊な作品を除いて、ほとんどの状況で5度に合わせます。

 西洋音楽でも平均律を導入するまでは比較的規模の大きい複音楽は少なく、その頃の音の基準は東洋と同様バラバラだったようです。音の高さはHz(ヘルツ)で表され、現代ではA=440Hzが標準ですが、これより高かったりもっと低い場合もあって混在していたとされています。その後、バロック時代にはA=415Hzが標準として定着したようで(A=440Hzであれば、415HzはG#ですから半音低い)、時代が下るに従って徐々にピッチが上がっていったと言われています。この現象について、弦楽器制作家フィリップ・クイケンによると、他人を上回りたいという人間の本能的欲求がそのような変化を生み出したとのことで、複数で演奏するときに他人より大きな音であるとかピッチが高いと優越感があり、その逆は劣等感を感じさせるので、人間の自然な欲求のままに楽器や音程が変化していった、しかしある一定のところまで上昇したらまた大きく戻すような反動もあったと分析しています。現代は古楽の研究が特にアムステルダム、ロンドン、ウィーン、パリで熱心に進められ、時代ごとのピッチがモダン楽器の演奏にも反映されるようになっています。

 A=440Hzとされたのは1939年に開かれた国際会議でのことで米国主導で決められたとされています。しかしナチスドイツは基準音程が人に及ぼす影響を詳細に研究していたとされ、その研究によると標準ピッチはA=432Hzでした。この研究は軍事転用が目的だったので国際会議の場では提示しなかったと言われています。これは水を打って波を起こした時の波動と同じと言われ、自然界のあらゆるものがこの波動を持っているがゆえ、人間の聴覚にとって最もナチュラル、安心感を与えるピッチだとされています。ヒーリングミュージックやインド音楽で使われています。そうであるがゆえに米国のアグレッシブな音楽には合わないようで、こういったことは楽曲それぞれに対しどの基準ピッチを採用するかということに何らかの示唆を与えるものです。合奏の場合はピッチを変えられない楽器もありますので、曲毎に変化をつけていくということは難しいしあまり変えると統一感も失いますので、あらかじめ楽団で標準ピッチを決めている場合があります。その場合、音程が変えられない楽器は特注します。アマチュアでもこういうことをやっている楽団はあります。

 中国音楽の場合はどのようにピッチを決めれば良いのでしょうか。西洋と同じように作品の成立時期によって決めるのは間違いが少ない決め方です。440Hzあたりは現代の作品に限り、古典は415Hzまで大きく下げる奏者もいます。現代作品においても普段は432Hzぐらいにしておけば音が柔らかくなるし、弦の寿命も伸びます。また楽譜に指定がある場合があります。劉天華編曲による「漢宮秋月」は、開放弦をAE(或いはこれより半音高く)に合わせます。そうしますと弦の張力が下がるので、標準ピッチを動かした時のような効果にもう少し味を加えることができます。張力の低下を嫌う場合は、長城弦というAEの弦があります。ピッチはほんの少し移動するだけで、他の演奏とは雰囲気がまるで違ってきます。職業演奏家はこのピッチの設定で人気も変わってきますので、安易に決めることのできない要素です。

 できれば中国古典音楽に関しては、415Hzを基準に考えたいところです。そこから加算で考えるのが中国古典音楽には合うと思います。バロック時代のピッチは415Hzでした。バロックの和声は宣教師たちが中国から齎したものでした。この時に中国の楽器も欧州に持ち帰っていたならば、その可能性は低くはありませんが、415Hzは中国の影響だったという可能性があります。ルネサンス期の標準ピッチは無秩序でした。それが突然統一というのも不自然です。そう考えると中国の古典が415Hzで合うのは不思議ではないし、このピッチは中国らしい雰囲気があります。欧州ではハイドン、モーツァルトの時代になると422Hz程になりました。これはピッチを上げたくなった時に参考になる指標です。19世紀には標準調子なるものがあって、それは435Hzでした。

 波動に関しては戦後も研究が進められ、1952年には米イリノイ大のドイツ人研究者によってシューマン共振というものが発見されました。地表と電離層の間で共鳴している7.83Hzというものでした。しかし現代は様々な電磁波が多くなりこれによりシューマン波が消されているので、関口機械販売㈱がシューマン波を生成する特許を2001年に取得しています。同社はアコーステック・リバイブというブランドのRR-7で製品化しました(その後、RR-77,RR-777に改良されました)。うちは一号機のRR-7を発売開始後すぐに購入しましたが、今から考えると何ですぐに手を出したのかわかりません。理論上、これはかなりいけると思ったためですが、それにしても低周波を出すだけですからね。もう少し冷静になっていれば見合わせていたでしょう。しかしすぐに圧倒的な効果があることがわかりました。音が力強く鮮明になります。かなりはっきりわかります。冷静じゃなくて良かった、これは必需品でしょう。今や大手レコード会社のスタジオには尽く納入されているとも言われています。当然でしょうね。ライブでも効果は間違いありませんが、聴衆には言わない方がいいでしょう。変なものなので嫌悪感を抱く人もいそうだからです。旧式でもこの効果ですが、新型はもっと精度が上がって効果も強いとのことなので驚きです。新型にグレードアップする改造を公式にやってもらえますが、うちではやっておらずその代わり電源は綺麗にしています。そこでこの波長を基準に計算して正確な数値を求めると415Hzはほぼぴったり7.83Hzの53倍です。この理論に基づけば、415Hzは自然界と調和した波長ということになります。19世紀の422Hzは厳密には54倍の422.82Hzになりそうです。432Hzは55倍の430.65Hzです。実際には430.65Hzに合わせた方が音は収まりそうです。56倍は438.48Hzで少し440Hzに届いていません。440Hzよりも少し下げた方が収まるかもしれません。21世紀初頭以降は442Hzに上げていく流れもありましたが自然界とは共鳴しません。ピッチを改めて見直し古楽の研究も進むようになったのは潜在的な不自然が背景にある可能性もあります。また一方で、必ずしも自然界に合わせなければならないかというとそれもわかりません。しかし快適な音を追求する参考にはなりそうです。また快適な音が常に正しいとも限りません。歴史的に少しづつ高い波長が選ばれる傾向があったということは少しずらした方が適度な綾もあって具合が良かったという可能性もあります。どれが正しいかというよりも特徴を掴んで使い分けたいところです。