東南アジア音楽についての概論 - 二胡弦堂


 東南アジア音楽の中心になるのは古のクメール王国の音楽です。クメール王国は現代のカンボジア、ラオス、タイのほぼ全域を支配して、現在のシェムリアップに都を置いていました。アンコールワット遺跡群のことです。この時代の音楽はおそらく完全な形では残っていないと思いますが伝承はされてきており現代でもクメール音楽は演奏されています。この音楽と支流がかつてのクメール王国の領域内に残っています。それ以外にはベトナム南部のチャンパ王国に独自の音楽があり、北ベトナムにも別の音楽があってこちらは中国の朝貢国だったので中国の強い影響を受けているようです。

 アンコールワットより北部、国境を跨いでタイ北東部はイサーンと呼ばれていますが、ここにはケーンと言われる篳篥系の楽器があります。長さの異なる竹のパイプを多数使って音階を作り、銀と銅を混ぜた特殊な配合のリードを使って吹き鳴らします。オルガンと同じ原理でそのサウンドもまさにオルガンのようです。ケーンはカンボジアからラオスに至るまで演奏されていますが、ラオスからイサーンにかけての地域では中国の影響を強く受けていると言われています。

 アンコールワットの宮廷音楽は後にシャム(タイ)王国宮廷に齎されたとされ現代のバンコクで継承されていますが、形態は幾分変化しています。タイの弦楽では高音と低音で2種の擦弦楽器(Sow)を使いますが、クメールではその中間の1種を使う編成が多いです。楽器の基本構造はいずれも二胡と同じなので二胡奏者であればすぐに演奏できます。タイでは演奏にクメール色を強めたい時にクメール二胡(Tro)をチョイスすることがありますが、タイにある楽器はすべてクメールにもあります。タイで残っている古典楽曲には題名に「クメール」の語が含まれているものが多数あり、そのためクメール古典と認識されていますがタイ独自の発展もしてきたことも理解されています。タイの楽器工房では少数ですがクメール二胡も製造しており、タイ人の中にもこれを愛用する人は結構います。タイの楽器は完成度が高いのでイサーンでも使われることがあります。イサーンでは村毎に手製の二胡が使われており規格も音色もバラバラで統一されていないようですが、バンコクの楽器を持ってきて使った方が良いということでそういう流れもあるようです。イサーンにはピンという楽器もあり、これは3弦エレキギターですが、西洋ギターを参考にして近年導入したもので、ベースはアレンジせずそのまま導入するなど割と他地域のもので自分たちに合うものはすぐに取り入れる傾向があるようです。

 中国の弦楽も省が変われば音楽も変わりますが、東南アジアでも同様に違いがあって、クメール音楽、イサーン音楽、タイ宮廷音楽、チャンパ音楽などの種類があります。この中で最も学びやすいのはタイ宮廷音楽です。弦楽でなければインドネシア音楽もかなり発展していますので、学習環境は良いようです。タイ音階は7つの音を使い、ピッチの間隔はほぼ均等です。つまり調性は基本的にないことになります。イサーンでは中国の五音階が使われているとされ、クメールでは半音も使って和声を可能にしていますのでこのあたりが大きな違いになっています。




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