ユーラシア大陸の音楽 - 二胡弦堂


 世界におそらく民族音楽がないところはありません。旅行すると「ここは全くないな」と思ったりすることはありますが、保存状況はまちまちなので接することが難しい場所もあるというだけです。そこで上の地図を見ますと、色のついていないところはどうなんだろうということになりますが、つまり東南アジア一帯ですが、こういったところはどうなんでしょうね。注目されている音楽はほとんどないようです。思うに島国というのは何かと閉鎖的だから、ハワイとか沖縄のように特殊な状況でもなければ保存は難しいのかもしれません。そう考えると日本とかジャワというのも例外的なような気がします。大陸にしても島国にしても「宮廷」というものの存在が音楽文化にも大きな影響を持っていたということは言えると思います。比較的安定した王家の存在があれば音楽も発展できたということです。カンボジア(クメール)の音楽はインドと中国の影響を受けており、宮廷で発展したものがタイにももたらされたとされています。しかしどちらかというと中国の影響の方が強いようです。

 それが東南アジアの島々にも伝えられたらしいということはジャワの音楽を見るとわかります。ガムランという金属打楽を特徴としており、これは中国の影響です。一方で現地で自生する竹を使った木琴もあり、巨大なものではジェゴグが有名ですが、リンディックという小さな室内楽器もあり、バリ島ウブド市内を歩き回ると、あちこちからリンディックの音が聴こえてきます。リンディックを使うアンサンブルは完成された形式をもっており、リンディック2台がスリン(笛)を支えます。バリの打楽は必ず2台編成、互いに半音ずらしてチューニングしますので、これは事実上、スリンに対して伴奏を1つ付けたシンプルな形式です。ジャワ島のジャカルタより南方にも保存状態の良い伝統音楽があって、こちらはバリの音楽よりも穏やかです。スンダ人と呼ばれる部族が住んでいてケチャピスリンという室内楽が知られています。リンディック2台1組にサロン(鉄琴),ケチャピインドゥン(弦琴),スリンという構成です。これはおそらく江南絲竹の影響です。絲竹は福建あたりまで伝播したものが現代まで残っていますが、ポルトガル人の交易などで交流がありましたから、その過程で伝えられたのかもしれません。二胡は朝鮮、クメール宮廷などに伝播しジャワ近辺にもルバブという楽器があります。バリは宗教音楽、スンダは民俗音楽ですが、ジャワ中部には宮廷音楽があり、いずれも個性が異なります。

 チベットの音楽というのは宗教音楽ですが、宗教と同様、音楽もインドの影響を受けています。そしてチベットから中国に渡りました。現在でもチベット仏教関係の建物が北京市内に多数あります。

 中国北方と南方の音楽は異なりますがいずれもシルクロードよりもたらされた音楽から影響を受けました。中国に影響を与えた中東の音楽は、インド、欧州にも伝播しました。

 こうして相互に影響しあっていて、また逆流もありますが、交通の発達していなかった時代には土地固有の風格が残っていて、音階からぜんぜん違ったりします。こうした相違を考えると、現代でも他国の音楽から新しい作品を生み出すヒントが得られるかも知れません。




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