潮州レポート - 二胡弦堂

 

 2017.12.23~27に広東省にあります潮州に行ってまいりました。潮州が非常に独特な場所で、東南アジア文化の発祥地であることなどについては、陳逢章作 潮州二胡の方に書いてあります。ところで茶文化は東南アジア全域に広まったのでしょうか? いわゆるスワトウ製の質の低い茶壺は主に東南アジア向けに出荷されたということなので、そうであれば結構見つかっても不思議はない筈なのですが、実際に東南アジアで見かけることはほとんどありません。どうしてでしょうか? そもそも茶葉がないんじゃないですか。輸入だと高級品になるし生産地から離れるほど質はどうしても下がります。昔の話ですから。こういうことであれば茶文化の定着は難しいでしょうね。如何に潮州の文化が魅力に満ちていたとしても適切なものがなければ好まれないと思うのです。楽器の場合は、今でも東南アジア諸国が潮州に製作依頼したりとかなり密接な関係にあるのは、楽器や楽譜の場合はとりあえずそれだけ手に入れれば、そして伝承されれば質が保てるからだと思います。潮州茶が素晴らしいのはもう中国全土で知れ渡っていますが、だけど潮州のようには親しまれていません。どうしてでしょうか。答えは明白です。潮州人はよく外地人にこう聞きます「普段は何を飲んでるの?」「何でも飲むけど、最近は白茶が流行ってるんじゃないかな?」「白茶?あんな味のないもの?」とこういう話になります。潮州茶が他の地域で飲むと味がないのは知らないようです。潮州市内で販売されている鳳凰山の茶を知っている地元の人が「世界でこんなに素晴らしい茶はない」と遠慮なく発言するのはどうしてか実際に確認しに行くとわかるし、どうして潮州茶が他の地域であまり定着しないのかもわかります。潮州市内は安い茶でも旨い、だから多くの人が茶を飲むのだと思います。高級茶に関しては老茶と言って何年も保管した茶になるのですが、販売店の人が「古いだけ。好きじゃない人もいる」などと言い放ちます。こういうところにプライドが感じられます。価格に関係なく一定の品質のものしかないから言えることだと思います(もちろん価格によって結構差はありますが)。

 潮州は街中が茶器だらけで、どこに行ってもあります。路上にまであちこちに置いてあるという有様です。これらは個人の持ち物で、商品は各販売店の店内にきちんと並べてあります。つまり茶はこの街では好き嫌いの問題ではありません。普通に嗜まれます。若い人も同様です。これはすごいことです。なぜなら多くの地域では地元の伝統的なものが現代化された商品や西洋文化、例えばコーヒーなどに圧倒され、スタバあたりが提案するカフェスタイルに人々が魅了されますが、ここはお茶だらけでスタバすら入る余地がないからです。中国人は元々、苦いコーヒが嫌いな人が多かったのですが、外資系が展開する洗練された雰囲気に幻惑され、最初は我慢して飲んでいましたが、徐々に落ち着いて今では大抵の人はコーヒーの良さを普通に理解しています。「ビールも苦いよ。そのうち皆んなコーヒーも好きになるよ」と言っていたら、あっという間に広まったのです。それぐらい外来文化はインパクトが強いのに、伝統的なものが外来のものを逆に圧倒しているというのは如何に潮州文化が魅力あるか、このパワーで東南アジアを席巻したのはどうしてなのか、街を歩くだけでその一端を垣間見ることができます。無料で茶を提供するタンクを道路沿いに出しているのも見かけられますが、これは東南アジアでもあります。東南アジアの場合は仏教で徳を積む意味がありますが、潮州では茶を振る舞うのが普通のことです。



 街中に茶の販売店があります。商店が並んでいる通りで茶店がないところはないと言っても良いほどです。



 茶器は新品はもちろん、骨董店にまで溢れる程あります。潮州茶は潮州泥が合いますので、それ以外のものはほとんどありません。



 潮州茶・鳳凰单叢については様々な種類があります。主に香りによって分類されています。

 鳳凰単叢の淹れ方です。茶葉に直接湯を当てないように注ぎます。茶壺を使う場合は湯を溢れさせることで灰汁を流せますが、蓋碗では脇に寄せます。1回目は捨てます。茶は確実に注ぎ切ります。生産家曰く、単叢は茶葉は7gでなければならない、とかなり強調されます。茶葉7gで淹れるべきということです。これは茶器の容量を度外視しています。どんな茶器、どんな容量のものでも7g使用するべきということです。小さな茶器であれば本来はそれに応じて茶葉を減らします。7gは結構な量なので100ccほどの茶壺であれば一杯になってしまいます。それでも構わず7g使うということです。大きな茶壺には湯を満たすことはありません。そうすると灰汁が残ります。これは流さないということになります。湯を注いで1回目は捨てますが、それでは灰汁は残ります。それでも構わないということです。

 7gはかなり濃厚な茶が味わえます。生産者がこういう茶を飲んで欲しいというのはわかります。しかし6g、場合によっては5gでも良いように思えます。薄い茶を飲みたいこともあるからです。さらに飲み進めると、徐々に薄くなっていきますが、7gであればかなり長く飲めます。薄くてもそれなりに香りが残るからです。5gでは薄すぎて捨ててしまいます。ですから、7gがもっともエコノミー、それでいて濃厚な香りも楽しめるということのようです。そこで濃すぎるのは困るとなると、如何に素早く注ぐかが重要になります。湯を注いですぐに出すということです。潮州人はここにこだわるのはそのためでしょう。またすぐに注ぐことで飲める回数が増えます。





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