茶について始めに - 二胡弦堂


 二胡は中国文化に属するものですので、その延長で茶も嗜むという方は少なくないと思います。茶はプロの中では明確な基準がありますが、単に質が良いというだけで自分が好むとは限らないし、消費者が各々ジャッジを下して好みのものを購入することはあると思います。明確な基準はほとんどの場合、価格に表れますのでその辺りから参考にすることもある反面、必ずしも安いものが悪いとも限りませんので悩ましいところです。結局自分本人が良ければいいのでその辺りは大きな問題にはなってこないのだろうと思いますが、そこから一歩踏み込んで色々理解したい場合は客観的なものを求めることになるので結構難しくなります。日本茶に関してはあまり問題ないのでしょうけれども、中国となるとまた事情が違ってきます。よくわからんことが多いのです。それでも専門のウェブサイトもたくさんありますので世の中の情報としてはすでに必要充分なのだろうと思います。もうそれ以上ともなると、そこは経験の蓄積での知見がほぼ全てではないかと思います。それでもまだまだ曖昧な点も多い分野ということで、そういう部分を中心に弦堂の所感を本稿で少し扱うことに致しました。個人的に話している時には、曖昧な事柄には「わからん」と言って慎重に対応しますが、ある程度確信があることでもあまりはっきり言わないこともあります。個人の感じ方は違うと思うからです。しかしこういう個人間ではない公共のところで割と突っ込んで見解するのは皆さんが少し距離を置いて見れるので良いのではないかと思った次第です。

 茶というのは単に葉を入れる、お湯を注ぐというただこれだけにも関わらず何かと難しく、天然のものを扱うだけに確定要素も曖昧ではっきりしないことは多いものです。日本は古来より緑茶で、後に紅茶が入ってきた程度、中国茶はまだまだ一般的とは言えないので、主に日本緑茶と紅茶の二種類が主なところだと思いますが、そうしますと中国の多様性と比較するとそれほど多くの茶が嗜まれている訳ではないということになりますし、その観点から中国茶を見ると少し難しさを感じることもあります。

 中国茶は発酵度によって様々な種類の茶があります。それぞれに扱い方というものがあります。一口に例えば緑茶といっても、それが基本的な淹れ方は同じであっても産地など変わると応用が必要であったりします。茶器でも味が変わってしまうし、使っている水でも随分違ってきます。茶商は自社の茶葉に関しては割と明確なことは言えるものの、顧客の使う茶器や水についてまでは何とも言えません。茶を買った時には美味しいと思ったものの、家に帰って淹れると全然違うと感じられることもありがちなことです。おそらくこれが理由の1つで中国の茶商は積極的に顧客に試飲させるのかもしれません。日本であれば煎茶かその類に限られてくるので、顧客の方でもある程度扱いはわかっていることからその辺りはあまり問題にならないということはあると思います。中国でもスーパーに行くとある程度は日本と同じように茶が並んでいたりしますが、街中で茶専門店は非常に多く、そういうところで買う方が一般的です。そういうところでは必ず試飲できます。

 まずは日本緑茶の扱い方を充分に把握した上で中国茶に入る方が無難というのは言えると思います。なぜなら、日本の水は日本緑茶と親和性が高いからです。特殊な水をボトルで買うのは大変なことなので、できれば水道水を使いたいというのはあるだろうと思います。決まった自宅の水に、決まった浄水器で水に関しては確定してしまい、変動要素を1つなくすことは重要なことです。日本の水を知るのは日本の茶がわかりやすいので、それから他国の茶を見ていく順序が手堅いだろうと思いますし、まず日本茶にはいずれは慣れておかねばなりません。同じ理由で、中国在住の場合は中国茶からの方が良いと思います。

 中国茶は製法によって大まかに6種に分類されます。同じ茶葉でも発酵度を変えれば別の茶になります。後発酵茶は製造工程の後に微生物によって発酵されます。

  1. 緑茶
  2.  不発酵
  3. 白茶
  4.  軽発酵
  5. 黄茶
  6.  軽(後)発酵
  7. 烏龍茶(青茶)
  8.  中発酵 20~70%
  9. 紅茶
  10.  重発酵
  11. 普洱茶(黒茶)
  12.  重(後)発酵

 中国で茶店に行って「これは何ですか?」と聞くと上記の分類で回答があることがほとんどだと思います。茶の名称で答えて顧客がわからなかったらいけないからです。これまでは中国全体で常飲されていたのは緑茶かジャスミン茶(茉莉花茶,緑茶に花を加えたもの)でしたが、おそらく2014年ぐらいから白茶に変わってきました。最近はもうどこに行っても白茶が出されると言っても良いぐらいです。どうしてでしょうね。保存ができるからかもしれません。緑茶は長期保管すると劣化しますが、白茶は価値が増します。しかし以前はほとんど作られていなかった茶なので老白茶は希少です。新しい白茶は丸い口当たりの緑茶、老白茶は丸みのある紅茶のようです。こういうものに接するとなぜ緑茶や紅茶を押しのけて支持を得ているのかわかります。最終回答か?と思うぐらい説得力があります。一方、黄茶はほとんどありません。烏龍茶は実に様々な種類があります。台湾の凍頂烏龍は発酵度が20%ぐらい、東方美人は70%でほとんど紅茶です。岩茶というものもありフルーティです。紅茶は日本では主にインドのものが嗜まれていますが、中国の方が本場ですし質も上だと思います。以前は中国物というと眉唾的な低質なイメージでしたし、実際に普通に旨い茶は限られた人しか買えませんでしたが、今は状況が激変しています。明らかにしょぼいとわかる茶を探す方が大変になってきているぐらいです。中国の場合「激動」あるいは「革命」といった言葉が好きなようですが、まさにそういう感じですね。普洱はダイエットの方向で強い支持を得ていますが、白茶が出てきたので非常に少なくなっています。普洱は非常に良いものですが雲南省で作っています。信用できません。実際過去にだいぶんスキャンダルも起こしてきています。白茶は福建なので仕事はきちんとします。その辺で水を開けられたのかなという感じがします。

 茶が非常にデリケートなものであるのは生産家も承知していますので、割と扱いやすいように製造してある茶葉というものもあるように思います。具体的には温度にシビアではない、だいぶん適当に淹れてもそこそこ楽しめる茶というのもあります。安価な茶は限られた予算内で一定の成果を求められるし、茶に詳しくない人も買うので、不特定多数に受け入れられるものを製造するのはかなり難しいものです。そういう観点から安い茶を見ると感心するものは結構あります。そこは二胡弓と同じでないかと思うこともあります。安価なものの方が非常に扱いやすいんですね。もちろん高級品が難しいということは必ずしもありませんが、高価なものは買い手に一定の素養(作法ではない)を求める部分は少なからずあるので、扱いが簡単とは言い難いと思います。

 茶葉、水、茶器のバランスが、茶を嗜むのに重要なのですが、これは何も細かいことにこだわっている訳ではありません。1つ変えると激変しますのでどうしても神経質にならざるを得ないのが茶というもので、これは安土桃山時代以来のうんちくとは関係ありません。科学的な側面における、純粋に茶に湯を通すという、ただそれだけについてのみ、それがかなり難しいのです。

 写真の例:湖南省長沙にて出土した「唐代青釉褐彩茶碗」です。茶という文字は唐代中期に発生したと言われており、歴史上、最初の茶専用碗として認められているものです。ここに「荼垸」と書かれています。荼は苦菜のことで、垸は湖北湖南における湖の堤防を指す古代の漢字です。

 茶葉を写しているものが3枚あり全て中国緑茶ですが茶葉の形状が違っているのがわかります。押しつぶしたようなものや蕾のようなものなど色々あります。3枚のうち上は黄山の太平猴魁で下は蒙頂山の竹葉青、いずれも現地で購入したものですが、広い中国ですので距離が大きく離れているから製法もだいぶん違ってくるということはあるのかもしれません。中央の茶は人からの貰い物で山東省の茶、山東で茶を作っていたというだけで驚きですので普通に生活していたら自分では決して買うことはなかったと思いますが、世間でも全く無名のものだと思われます。盧山雲霧と言います。一番茶で外観に白身が感じられるのが特徴です。普段は15煎ぐらいまでしか淹れていませんが、それでもまだ最後まで香りがあります。単に残り香があるだけでなく、非常に風流な空気が鼻から抜けます。これが10煎を超えてもまだ感じられます。こういうものが中国緑茶の良品の特徴だと思います。

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