二胡用琴弓 - 二胡弦堂

 


  弓(馬尾のみは除く)はゆうパック120サイズになります。1万円以上で送料無料です。

 二胡琴弓に関する以下のご説明は東京で製造しております光舜堂謹製琴弓がなかったらという前提になります。大陸が日本のように作り込むのは無理でしょう。中国音楽なのだから中国弓でなけばならないという方もおられると思います。中国弓も決して悪くはないと思います。


李懐剛琴弓


李懐剛二胡琴弓
  ¥ 9,000

 親子二代続いている北京の老舗琴弓工房です。老舗の工房ということもあり、李懐剛琴弓は長年、呂建華に提供しています。呂工房ではすべての弓が李氏のものではありませんが主要な扱いになっています。呂建華には昔の価格のままで品質も選別して送ってくるとのことなので、直接李氏工房から購入よりも良いということから呂建華より購入しております。紅竹なのですが、王小迪であれば湘妃竹のものに迫る価格水準なので、大陸ではかなり高価なものです。王小迪はたゆまぬ改良がありますが、これは良いことだと思うのですが、変化を嫌う方もおられます。その場合は李氏の方がいいと思います。北京の代表的な琴弓です。



寿康弓


    ¥ 5,500


 いわゆる南方弓です。普通、寿康弓というと白地のラベルが貼ってありますが、これには何もありません。馬乾元工房へ卸した分で、単体の商品ではないからラベルを省いているのですが、一般に流通している寿康弓より質が良いということで購入することにしたものです。状況は呂建華と李懐剛の関係と同じなのでここでは説明を省きます。

 北京弓との大きな違いは弓魚での馬尾の固定方法です。このような固定方法を採用すると馬尾が少し捻れるのですが、この方が理に適っているということは二胡演奏の実際を考えると容易に想像がつきます。そうしますと北京式の弓には改善の余地があるように思えますが、実際その通りのようで、王小迪の弓には捩れが施してあります。弓魚は北京式の方が扱いやすいのでそれはそのままに捩れだけ入れてあるという、馬尾をぶら下げると弓魚が90度横を向きますのでわかります。そういう概念の最初期のものが上海弓であって、これがその代表的なものであるという、クラシックなものですが、今でも根強い人気があります。




柳氏琴弓


柳氏二胡琴弓
  ¥ 6,000

 呂建華さんのところで扱っている弓の別のものです。あれこれ、いろいろあってもしょうがないと思うのですが、これが良いとのことで、ほぼ無理やり受け取らされたものです。柳氏工房はよくわからないのですが、製品は結構出回っている、おそらく最近のところです。ですから現代的な、これはもちろん大陸での現代的ですが、要望を取り入れたような感じの仕上がりです。まず、馬尾は漂白していない、それから竹の材料も良し、長さは84cm以上と長め(全部測っていませんが)、パッケージも文化的、節は一見無い、無節に見えますが、手で撫でると処理されていることがわかります。節が出ていると二胡に当たるなどという苦情もあるらしいですね。今の会社は大陸であっても、そういう顧客に「ばかやろう」と言わなくなりました。何でも言うことを聞くようになりました。その進化系ですかね、これは。だからとても使いやすいです。




王小迪琴弓 劉長福特製

琴弓を整理する王小迪
    ¥ 8,000


 北京・中央音楽学院教授 劉長福が王小迪と開発した琴弓です。パッとみた感じ普通の弓と違いはありません。それで王女史に「どこが違いますか」と聞いてみます。「いろんなところがちょっとずつ違う」そうです。これではわかりません。はっきり違うのは手持ちのところの馬尾を巻いている布?が特殊で、一般的なこの種の皮よりも少し短いということです。しかしこれは重要な点ではない筈です。演奏のフィーリングが違います。劉教授はこれにかなり自信を持っているということで生徒さんにも勧めているそうです。柔軟性を高めたチューニングをしているようです。確かに使ってみるとそういう感じです。この秘密の1つには福建山中の野生の竹を使っているということがあるようです。ここでしか採れない竹があって清代から知られており、その特殊な地形によって産出される紅竹から楽器弓に使える素材を選んでいるということです。使った感じは適切な表現かわかりませんが、女性的な感じがします。軽くて柔らかく、運弓をしている感じが少ないというイメージです。非常に安定的で、腕の延長のようなナチュラルさがあります。女性向けという意味ではなく、弓自体が女性的な雰囲気です。これを女性が好むかどうかはわかりませんが、男性から見た場合、好印象なのは確かです。

劉長福特製二胡弓



王小迪琴弓 張鋭特製


王小迪二胡琴弓張鋭特製1
紅竹  ¥ 10,500
湘妃竹 ¥ 12,500

 王小迪(wang-xiao-di)が張鋭(zhang-rui)のために特注した胡弓用弓です。張鋭についてはこのリンク先の下の方も見て下さい。

王小迪二胡琴弓張鋭特製 先端  長さは約83~86cmあります。二胡から二泉胡、中胡弓まで使える規格です。しかし張鋭は二胡に使うために発注しています。ただ3cm違うだけで特に他に変わるところがないので、自然に任せる形で素材を使っていく考えのようです。最大の特徴は馬尾です。1/3花毛(黒毛ではなく茶色)、2/3栗毛(白毛)です。演奏は紅竹の方が適しています。それを犠牲にしても美観を得たい場合は湘妃竹になるでしょう。弦堂個人はこれに関しては紅竹しか持っていません。

王小迪二胡琴弓張鋭特製 毛  一般に絹弦における粗弦の演奏では黒毛の弓が使われます。うちでこれが1つ壊れたので王女史に注文いたしますと、女史は新製品を作って見せるので待つようにということでした。そこでしばらくして指定の日に行きますと出来上がっていた弓がこれでした。張鋭は白毛だと甘すぎて良くないというので、王女史が幾つも弓を作り最終的に選ばれたものがこれなので、あなたも気に入るだろう、ということでした。しかし張鋭はスチール弦を使っているので絹弦にも合うのかという心配があります。実際に使ってみると全く問題はなく、低音楽器の発音に以前から疑問をお持ちだった方はこれで納得するのではないかと思います。たぶんこれを使うようだと白毛の弓は要らなくなると思います。

 これはそのまま二胡にも使えます。穏やかな流れの曲の場合に使うことを想定しているようですがどんな曲でも問題なく拉けます。ただ、新しい蛇皮の二胡には、かなり高い確率で相性が悪いです。雑音が結構でます。これまで白毛の弓で拉いてきていたものがだんだん二胡が古くなるに従って駄目になっていくという場合は、この弓に換えると非常に美しい音を出すようになります。この弓は完全に"黒"毛ではないものの、その特徴は一般の弓と比較して、白黒ぐらいに対称的です。これまで白毛の弓で何の不満も感じなかった場合は、この弓に手を出さない方が無難です。この弓のカリッと香ばしい音は新しい二胡では全く出ない場合が多いです。

 張鋭は白毛二胡弓について、音色は美しく繊細で多くの外国曲もこれで拉くに何ら問題はない、しかし哀愁に満ちた兰花花, 二泉映月などのレパートリーでは音色が不足し表現しきれないと言ったということです。そこで王女史は数度張老人の家を訪問し、幾つかの試作を経てこのバランスに落ち着いたということです。老人は 「不是我在拉琴,是琴在拉我」(私が二胡を拉くのではない。二胡が私を奏でるのだ)とおっしゃられたとか。色んな見方が出来ますが、道具が合わないとこういう心境にもなりません。それにしても90歳を超えられても新しい事柄に情熱的に取り組んでおられるというのは驚きますね。写真で記録に残っているのはいいものですね。この弓が評価されれば歴史に残ると思います。

王小迪と張鋭



二胡琴弓用馬尾A


   ¥ 8,800

 内モンゴルの限定された地域の馬尾です。これぐらいになってくると中国では普通に高級弓を買った方が安いぐらいですがそれでもこれを扱うことにしました。まず黒い伸縮チューブを竹棹に通します。毛の先は固めてあるのでそれを弓の先の穴に通します。この穴に松脂の粉を入れておくと尚良いです。折り返してビニール糸で千斤と同じ要領で縛り伸縮チューブを被せてライターで炙って締めつけます。注意点は弓魚の位置と張り具合のバランスでご自身の好みで調整する必要がありますのでここが無頓着であれば張りが硬過ぎたり緩過ぎたりします。弓の長さは最長84cmまで対応しています。毛を通す穴は直径5mmぐらい必要です。それ以下の場合は毛を少し減らして入れる必要があります。

馬尾A

二胡琴弓用馬尾B

馬尾B
       ¥ 2,000

 安価な交換用馬尾です。標準的83cm用です。掲載されている写真の通りのものですが、それ以外のもの、折り返した毛を固定する紐などの付属品は一切ありません。裁縫用のものなどを使う必要があります。これも同様に基本的には弓棹の先の穴に毛を通して固定するだけなので交換は難易度の高いものではありません。
 大変高級な弓毛はバイオリンなどに使われますが、これらの西洋楽器と二胡は異なるし、そもそも音域が違いますので、条件面をしっかり考えると安価なもので十分、むしろこちらの方が良いという人もいます。古典曲であればこちらの方が良いということもあると思います。それでも比較してしまうと音の透明感は違いますね。そもそもその透明感は必要なのかということも考える必要はありますが。



王小迪(wang-xiao-di)二胡琴弓 湘妃竹(xiang-fei-zhu)


王弓 湘妃竹二胡弓 黒檀
    ¥ 9,500 販売停止

 王小迪はブランド力があるので一定の支持がありますが、仕様のマイナーチェンジが多い工房です。頻繁に細かいところを改良しています。進歩するから外観に配慮したものも作るわけで大いに結構だと思うのですが、日本ではこの「変化」が非常に評判が悪く複数回同じものを購入される方でこのクレームをつけない方はこれまで一人もおられません。中国にはこういうタイプの人は全くいなかったのですが、民族音楽の衰退に伴ってだんだん日本に近くなってきています。王小迪は大陸ではプロが使う弓なので今後も改良されていくものと思われますが、そうであれば今後も日本の使用者とは合わないということが想定されます。王小迪はずっと変わって来ているのに最初に手にしたものは良くて、次はよろしくない、その次を最初に手にした人は良くて、その人もその次はよろしくない、弓の問題ではなく変化を嫌うということなのだと思いますが、そうであれば変わらないものを最初から使っておけば良いのではないか、王小迪より老舗もあるわけですからね。それで李懐剛工房に変えることにしました。

 王氏二胡弓の最高グレードのものです。外観が美しいので中国ではテレビ出演で女性演奏家が使っているのを見かけることがあります。

二胡弓を作る王小迪  いずれも節は2,3あり、比較的柔らかい特徴があります。太さはバラバラなのでご注文の時にご希望があれば太めか細めのご指定をいただくこともできます。太さも均一ではないので計って選別というのは不可能です。大ざっぱな感じで選ぶしかありません。細いものはしなりが強く、表現力はありますがテクニックが要ります。太いものは運行が安定し演奏しやすくなります。

王弓 梅鹿竹二胡弓 先端部  "王小迪"という牌子(pai-zi)、或いは、人物名については中国では津々浦々にまで知られています。知らない人を見つけるのが難しい程です。田舎の人ほど知っているという特徴があります。全く音楽に興味がない人でも知っています。
 中国には「老子号」(lao-zi-hao)というものがあります。これは100年以上看板を保っている牌子(ブランド)に対して中国政府が与える特別な称号です。看板に老子号と記す特別な許可が与えられます。今は(2011年)なので、すべての老子号は清代以前より営業していることになります。木製で歴史を演出した趣のある看板を掲げることが多いです。とりわけ北京の老子号は中国人の憧れであり、前門あたりに集中している本店や総店は観光スポットになっています。全衆徳(北京ダック)、六必居(漬物)、東来順(しゃぶしゃぶ)、内聯昇(履物)、(絹)、王麻子(刃物)、同仁堂(薬)、吴裕泰(茶)などです。これらは京都(北京)の伝統的牌子、かつて宮廷御用達だったものとして華やかな印象と共に愛されています。
 王小迪は老子号ではありません。しかし中国最高の牌子の1つとして知られています。そして京都の牌子として・・。最近、下の写真のように印鑑のような意匠が出てきましたが、そんな中国人の文化を愛する思いが詰まった品として観賞してみてください。

王弓 湘妃竹二胡弓 赤文字 蛇木
王弓 梅鹿竹二胡弓 全体



王小迪琴弓 蒋風之特製


二胡大師・蒋風之   ¥ 9,000 販売停止

 蒋風之(jiang-feng-zhi)がまだ存命中に王小迪に特注した特殊な二胡弓です。蒋は王を見いだした人物と言われていて、その後この2名は二胡弓を改革していきますが、その過程で出てきた弓の1種です。 蒋は録音も残っていますが古典的な演奏ですので、そのためには弓の形状も工夫したいというのはあったのかもしれません。

蒋风之特製二胡弓・湾曲  弦堂が王小迪の家で確認した時点では(注:これは"確認"でありまして、他人の家の室内を物色した訳ではありません。しかし室内は興味のそそられる環境であるのは否定できません。)確認時点では、蒋風之特注弓は1把のみ残っており、特徴としてはまず、竹が細い、馬尾が少ない、よって蒋の演奏は王女史の証言によると音量が極めて小さい、といったようなことですが、最大の相違は、手持ち部分の湾曲です。普通は縦に微妙なS字に曲げてありますが、これを横に曲げています。(左の写真を参照下さい。) このような湾曲であれば、弓の持ち方から微妙に変わってきます。鉛筆を掴むような感覚になります。現代的な演奏には合わないように思いますので、一般の教室でレッスンを受ける時には使わない方がいいかもしれません。特に型にうるさい教室では使えないと思いますのでご注意下さい。

 王女史の証言では、蒋風之はこの弓を使用して「漢宮秋月」を演奏し、まさに消え入るような小さな音量で演奏したということです。馬尾の量は150根で、一般の二胡弓の300根の半分ですが、今回作っていただいた物は200根と少し増量しているということなので、オリジナル程小さな音というわけではない感じで制作されています。

 王女史は「こんな弓は駄目ですよ」と言います。確かに現代二胡演奏の常識からは外れていると思います。しかしこの弓は美意識に対する観点が違います。「上手な演奏」と「美しい演奏」・・この2つは同じようですが違うものです。そういう違いが現代二胡弓と蒋風之特注弓にもあるように思います。

蒋風之特製二胡弓・先端部  弓の先端部分のこの独特の細工(右の写真を参照下さい)は、王女史が住んでいる北京民族楽器廠宿舎の1階のおじいさんが削っており、彼は王女史が蒋風之に二胡弓を供給する前に二胡弓を作っていた人ということなので無名の伝説的人物と言えますが、この方に削っていただきましたので、在庫限りで販売停止になります。蒋风之に供給していた二胡弓に以前からこの細工を施していたようです。それでこの手間をカットするのは美意識の観点から譲れないという話なのですが、そうすると棹全体の制作をその伝説的人物が請け負っているのかもしれません。

 蒋風之の古典奏法を学ぶことは二胡奏者にとって重要なので、そのためにオリジナルの弓も用意するというのは贅沢ですが、現代の二胡音楽とはだいぶん違うものだということを考えると古典奏法用に弓を1つ持っておくという考えもあると思います。繊細な表現にこだわったら1つの可能性としてこうなる、という見方もできると思います。

蒋風之特製二胡弓・手持ち部