Path松脂(旧タルティーニ松脂) - 二胡弦堂

 


  厚さは28mmですので梱包も含めるとレターパックプラスになります。重量は50gちょうどです。1万円以上で送料無料です。

 情熱的なトーンの輝かしい音色とすばらしい流れなどという全製品共通の説明に続き、製造についての記述があり、松の主材料に6つの天然素材を加えているとあります。主にこのバランスによって様々な表現の方向性を探っており、幾つかの製品を製造しています。

 Path松脂は、元イタリアのタルティーニ松脂だったものです。様々な事情により、モデルが変更されてきましたが、詳細は商品説明の後に記載しています。

 写真の松脂を包んでいる布の色は違う場合があります。

 Path社は2014.7.27に倒産しました。製造権は他社に売られました。本ページ記載のものは売り切れにて販売停止になりますが、大量に買ってあります。



Path1松脂   Path1松脂
         1個 ¥ 1,800

 メーカーの説明では、パワフルな演奏家用です。弦への食付きが良いようです。西洋楽器では、バイオリン、ビオラに使われます。二胡は西洋楽器よりも食い付きを求めるので、こちらの方が中国松脂の配合に近くなると思います。



 タルティーニ松脂の歴史は、イタリアの名バイオリニスト・パガニーニが使用していた松脂に遡ります。これを、アンドレア・パンという骨董好きの人物が購入し、研究を重ねて現在に蘇らせたのが、タルティーニブランドの松脂です。パンは、この松脂を外注で作らせていましたが、何らかのトラブルで契約が破談して、パンは「アンドレア」を新規に開発、これは現在も販売されています。以前に外注で作っていた製造会社は、タルティーニのノウハウがあるので引き続き製造できますが、タルティーニ松脂材料の供給をパンの会社が扱っていたので、手配に時間がかかりようやく製造を再開したのが、後にニュー・タルティーニとして知られるようになった松脂です(写真)。それがリニューアルしてPathになりました。

メーカーの人  右の写真の方が製造しています。(写真は、そのまま貼り付けるのはおもしろくないので、エフェクトを加えてみました。)

 「ニュー・タルティーニ」はおそらく法的な理由で商標権を失ったために名称変更、それだけでなく製造の方も一歩進めています。Path社の開発能力は、ニュー・タルティーニ以上の評価を受けている彼らのオリジナル商品「Path」が証明しており、タルティーニ研究を活かしてさらに上を目指したのではないかと思います。

 そこで気になるのは、Pathのどこが優れているのかということです。音ではなく製造の方です。パガニーニの松脂を復刻している、昔のものを研究して生産しているのです。ですから、他の松脂とはまるで質が違うのです。我々の抱く一般的な松脂ではないのです。どんな手を使っているのか? 企業秘密ですからわかりませんでした。

 後に「光舜松脂」を開発するようになってそのテストピースを見た時、これだ!と思いました。同じ製造法だと。ということはパガニーニは天然熟成の松脂を使っていたことになります(下記の「天然松脂」参照)。当然なのでしょう、昔は皆そうしていた筈です。パンはそれを知らず、パガニーニのものは人間が製造したものと思い、自分で開発してしまったのではないかと思います。しかし本格的にやるとあまりにたいへんでコストもかかります(ですから光舜松脂は決して安価ではありません)。そこを量産型にしたのではないかと。そのためPathは湿度が高い環境で湿気ますが、光舜松脂はほとんどそのようなことがありません。しかし簡略化で十分だったのでしょう。小店では既製品ではPathが世界最高であると評価していました。しかし世間では評価されていません。ですから小店でしか販売されていない筈です。ほとんど話題にすらなりません。購入者は限られた少数で熱心なリピーターのみです。この理由は、おそらくこの種の松脂が他にないので、慣れない、馴染まないからだと考えられます。しかし昔はこういうものだったのです。

 メーカーは経営が苦しくなってきたのか、内容量が徐々に少なくなってゆき、そして消えました(小店に残留しているものは質量が減ったもののみということを告白しておかねばなりません)。Pathはなくなっていきますが、高価なものが購入できない方はPathを使って下さい。劣りますが、その他市販品よりは良い筈です。Pathも光舜松脂と同様、他の松脂より必要塗布量は少ないです。製造法の基本は同じですから。


広西チワン族自治区と福建省の松脂
中国の松脂の結晶
 広西チワン族自治区と福建省の松脂の石のような塊の状態のものです。

 多くの松脂ロジンブランドは、こういうものをドラム缶で購入して独自のブレンドで製造します。この結晶が土台となります。しかし楽器用に製品化されたものではありません。ところがこれが一部で人気があります。こういうものを使うと、どうしてわざわざブレンドするのかと思う時があります。

 以下は塊のグラム数を記載しています。カートのメモ欄にて必要な量をご指定下さい。2500円の分は粉とか小さい塊など残り物を集めたものです。ライターなどで固めて使っていただかないといけません。

福建産松脂 61 57 41 38 35 23 115gの細かい残り(2500円)
  1g ¥ 55

広西チワン族自治区松脂 24 19+13 138gの細かい残り(2500円)
  1g ¥ 50


天然松脂
玉林山中で見つかった松脂結晶
 京劇の奏者は楽器の弓毛が当たる部分にマッチやライターで溶かした松脂を垂らして使います。その時に煙が出ます。欧州の古典派ぐらいまでのオペラはアリアなどの歌唱とレシタティーボと言われるセリフの部分が交代で構成されますが、中国の場合もセリフの部分は念白と言い、楽器を演奏しない時間があります。中国戯劇の場合は、武場という打楽器のみの伴奏の部分もありますので、これらの時に松脂補給を行うことがあります。現代では火災報知器がありますので都市では難しくなっていますが、田舎に行くと見られるかもしれません。この香り、そして煙で包まれる舞台というのが臨場感を高めたりしますね。現代の我々は、京劇奏者のような扱い方はできないので、この松脂が入手できた時に、市販されているような一般的な丸い形で使いたいものです。

 そしてこの松脂は、北京から遥か離れた中国南方で採集されていました。現地には松脂採集の職人がおり、演奏家と山で作業をする人たちが話し合いながら歴史的にノウハウを蓄積してきたものです。このようなものはおそらく中国にしか残っていないでしょう。京劇というと甲高い音という誤った概念をもっておられる方も多いと思いますが全くそうではない、こってりした濃厚なサウンドはこういう松脂あってのことだと気付かされます。本来は世界中でこういう松脂を使っていた筈です。いつしか工場から出た原料になってしまい、50年代ぐらいまででしょうか、その頃までの濃厚な弦楽サウンドは現代では出なくなっていました。

松脂採集地
 地図の箇所、玉林の郊外、松脂に関してはこのあたりのジャングルが特に優れているようです。木材の優良なものは広範囲に採れたので、香港(香は香木の意)という木材専門の港もできたわけですし、松脂に関しても良いものはたくさんあるのですが、玉林はその中でも絶品とされています。これは楽器に使った場合ということです。これが京劇関係者に好まれて使われていました。天然は森に放置されていた年数や状況によって品質にバラツキがあります。しかしそのようないい加減な状況では北京の音楽家を満足させることができません。玉林の森の人々は、どこにどのような木があるのか、すべて把握しています。森の状態をよく知っています。ですから確実にきちんと陳腐化した(陳腐は中国語では悪い意味ではなく高級感を感じさせます)しっかりと適度に古くなった松脂を供給することができています。上の写真にあります通り、古いチーズのような塊で採集され、これを溶かして、丸い形の型で作成しました。

      1g ¥ 500 (送料無料)

 目安としては、20g ¥10,000です。1gというのはかなり精密な重量ですので、僅かに多くしてあります。

 2つ以上をカートで決済するとまとめて表示されますので(例えば15gと16gの2つであれば、31が1つと表示される)、メモ欄でご指定されるか、こちらで判断して発送いたします。粒子が細かいので以前からご使用の松脂に上塗りすると以前の松脂の特徴が強く出てよくわからなくなります。添付のクリーナーで弓毛を綺麗にしていただいてからご使用下さい。少なくなってきたら薄く割れる前に新たに購入したものにライターで貼り付け、繋ぎ目は蚊取り線香で溶かして埋めて下されば使い切れます。
天然松脂完成品
 光舜松脂はこの天然の復刻ですが、サウンドはよりスピーディです。現代的な演奏を指向する場合は光舜松脂の方が良さそうです。