中国音楽用機材 - 二胡弦堂

中国で巻いたトランス

現代中国製トランス  現代に製造された音響トランスです。パーマロイコアを使用したマイクロフォングレードで、さらに同じパーマロイによる銀色の四角のケースに収めた上で端子と接続してあります。トランスは2つ、ステレオ仕様です。

 現代の中国では世界の大半のものが作られていますが、音響トランスも例外ではありません。機械で大量生産された安価なものが大部分ですが、それらは家電など音響用途以外が主で、一部に音響用も作られているので最新研究を反映した手巻き生産ものも入手できます。このトランスを巻いた会社は英国や日本の有名オーディオメーカーにも供給していますので品質は問題ないのですが、我々が求めるのはそこではなく中国特有の毒が出るか否かなので、こういう外国御用達の技術に優れたメーカーが大いに本領を発揮して高性能だがおもしろみのない、或いは外国ナイズされた思想の欠片も感じられないものは必要としていません。機械巻きだとどうしてもこうなりますが、手工生産、そして外国から指示を受けずに自分たちが思うように製造するとやはりお国柄は出るもので、中国が作ると中国文化の感じさせるものになっています。現代はよりハイファイなのでヴィンテージ程のコテコテの毒はないですが、その代わりに中国音楽の魅力は十分に伝えつつ、いろんな音楽をそれなりに乗りこなす幅広さがあります。一般的にはこれがファーストチョイスだと思います。完成度が高いのではないかということでご紹介することにしたものです。

          ¥8,000

 中国製の音響トランスについては、中国音楽の再生と録音をご覧下さい。端子は上が入力(600Ω)、下が出力(10kΩ)ですが、逆に挿すこともできるので比較してどちらかで使うことができます。トランス自体はマイクインプットにも使えるのですが、出力側のインピーダンスが10kΩなので後続の適切なマイクアンプはそれほど多くないと思います。アウト600Ωという選択もあって迷ったのですが、現代の機器では10kΩの方がぴったり合うし、トランスの味が出やすい、600:600だと味が薄いということでこちらに致しました。




ヴィンテージ・トランス

 建国(1949年)~文化大革命期(70年代)に制作された各種トランスです。かつてオーディオというと高級な趣味だったので、そういうものに使われたトランス、さらに軍用で朝鮮戦争以降に作られたトランスも含まれています。まずこれは中国にしかないであろう独自のビューティフルサウンドです。コテコテに艶やかなサウンドが展開され、世界のあらゆる音楽を中国4000年の歴史に基づき再規定します。アルゼンチンタンゴ、戦前戦後のウィーンの交響楽、三文オペラ時代のベルリンの音楽などを半端なく濃い毒まみれの音楽に変貌させます。最も相性が良いのは30年代租界時代の上海歌曲、テレサテンなどの中華物です。つまり廃頽色の強い音楽向きです。椎名林檎とかそういう感じの。しかし空間系とか立体感を重視した音楽には向きません。この立体感がないというのは不明瞭になるという意味ではありません。むしろ非常に鮮明になって迫力が増します。音のキレも鋭くなります。ドラムは破壊力を増し、ベースラインまで聞こえるようになります。YouTubeの視聴は快適になります。鮮明さについてはこれは特に中華のトランスだけの特徴ではありません。トランスを入れるというのは大体明瞭さを増すものです。そこから欧州のものであれば立体感はあるし、東洋は濃密になるという特徴の違いがあるということです。東洋の妖艶さは西洋にはないものです。写真は蓋を開けて撮影していますが発送される時には閉まっています。4種類ありますが指定いただくこともできます。新しいものであれば特性上のばらつきがなく、ステレオペアも簡単に構成できますが、こういう古いものは全部モノラルで特性がバラバラです。それである程度大量に購入できないとマッチングを探せません。それでも現代の製品のように完璧には合っていません。わずかなので使用上問題になってこないと思いますが、厳格な要求がある場合は現代に製造されたものになると思います。

          ¥18,000

 幾つか接続の方法があり、出荷状態ではインプットが400Ω(5-7)、アウトプット1kΩ(3-4)になっています。ヴィンテージトランスもう一つ5kΩ(1-2)も使えます。市販の多くの機器はアウトプットが150Ωなので、この3つのうちどれでも繋げられるし、機器のインプットは10kΩなので、こちらもやはり3つのどれでも繋げられます。出荷状態が一番具合が良さそうなのでこうしていますが、逆に1kΩをインプットにする方が良い場合もあります。

 ケースの外面に傷が目立つものが1つあります。15,000円になります。カートのメモ欄でご指定下さい。




高周波用トランス

 トランス ~ 中国音楽の再生と録音でBATPUREに使用しているトランスです。普通のスピーカーには直接使用できませんがラインレベルで使うことはでき、その効能についてもリンク先で解説してあります。ケースはヴィンテージトランスと同じものです。BATPUREは付属していません。

        ¥18,000



中華マイク

 マイクの生産はドイツ、日本、中国で、多くの製品が現在中国製になっていますから、中国製のマイクを手に入れるのは簡単です。むしろ、中国以外の地域で作られたものを手に入れる方が難しくなってきています。しかし入手できる多くの中国製マイクは外国からの要求に沿ったもので、完全に"中華"を体現したマイクではありません。大陸ではこのことに不満を持っている層がまだ一定数いますので、中国国内でのみ販売されている純中華のマイクがあります。各役所や企業で予算を決定する人たちの世代が変われば、こういうものはなくなっていくのだろうと思いますが、今の所はまだ色々あります。二胡を収録するためにはやはりこういうマイクの中からダイナミックマイクを選択したいものです。特性としては外国のものの方が優れているかもしれませんが、二胡とマッチングしなければどうしようもありません。高い親和性を求める場合、どうしても中華純正マイクになってくるだろうと思います。そこで旧北京第一無線電機材廠製造のマイクで高グレードの(必ずしも高グレードが良いかどうかは別なのでそこは比較していますが)しかしやや特殊な形状のマイクですが、これがベストなのではないだろうかということで入荷することにしたものです。非常にコッテリした濃いサウンドで、甘さも感じられますが、一般的に普及しているダイナミックマイクと比較してゲインが20dBほど高いので使いやすいということもあると思います。マイクプリに業務機材を使っておられる方であれば問題ないと思いますが、市販の安価なミキサーを使っているという場合は、利得が60dBぐらいで、確かにその最大値あたりでも音自体は出るのですが、どうしても歪みが目立ちますので控えて使いたくなります。このマイクであれば、そこを40dBぐらいに落として使えるというのは大きなアドバンテージです。このマイクは振動膜に純金を被せてあるのでメーカーの方で"高グレード"とランクしてあります。外観の雰囲気もそういう感じを漂わせています。こういう素材を使うのは昔にはなかったものなので、古い設計ではありません。しかしこのマイク自体はすでに相当なロングランで、金箔に関してもすでに20年前に開発したものなので、基本設計自体は伝統的なものです。中華のこれまでの長年の土台の上にさらに高められた新設計ということになります。これが現代の録音シーンで中華の味わいを求めるのにベストなのではないか、このように感じられるものです。

        ¥11,000


 周波数特性は低域は200Hz付近から減少しています。高域はせいぜい10kHzまでです。メーカー発表では50~14kHzになっていますがグラフを見た方が特徴はわかりやすいと思います。見るからに凝縮された二胡の音が集音できそうです。さらに+2dB前後のピークが2kHz付近、7kHz付近にもあります。7kHz付近はその前後をかなりカバーしていますが、二胡はこの辺りの音は出るものの弱いのでそこが強化されているのは使いやすいと思います。グラフは+20dBで表示されていますが、グラフでこのように表示するということは意図的に高ゲインで作ってあるのだろうと思います。二胡は音がそれほど大きい楽器ではないので、マイク自体がしっかり音を拾うのは使いやすいものです。あたかも「二胡専用設計」なのだろうか?と思うほどですが、実際にはこれはスピーチ用です。スピーチ用というのもまたそれほど多くありません。一番多いタイプはカラオケ用だと思います。スピーチ用は声を真面目に考えて作ってあるので、その辺りが二胡にも合う理由でしょう。

 付属品はグリップのみです。グリップは非常にチャチなので、気になる場合は洗濯バサミのように固定できる、もっと高グレードのタイプのものに変えれば安定します。とはいえ、付属品のままでも特に問題は感じません。価格はマイクだけだと思っていただければと思います。マイクの方は長期間使えると思います。




二胡ピックアップ

 二胡にピックアップをつける方法はいろいろ考えられます。付ける場所が悪いと音が暴れたり、弓棹が胴を打つ音などが入ります。一番ベストな方法は、ピエゾを控制綿で包むことです。本品は中国弦楽器に最適な大きさで作ってもらっています。全長は30cm前後です(ロットによって長さがちょっとずつ違って一定していませんが問題ないでしょう)。フォーンプラグを挿して接続しますので、ミニプラグのように磨耗に悩まされることはありません。接続先はマイクプリ、インストルメント端子、アクティブDIのどれに挿しても使えます(マイクプリはインピーダンスマッチングが取れない筈ですが、波形を見ても変わらない、聴感上も問題ありません。いわゆる電流駆動になるようです)。必要なゲイン(音の増幅率)は、音の小さい古楽器、その中でもさらに小さい上海皮、さらに音量が下がる絹弦という悪条件?でも20dB程です。コンデンサーマイクと同じぐらいありますので、ダイナミックマイクからこのピックアップに変えると大幅に音量が増しますから、安価なミキサーのようなヘッドルームが低い機器でも十分にドライブできます。ファンタム電源は要りません。コンデンサーマイクとは違い、ハウリングに非常に強い設計です(設計というよりもピックアップを綿に包んでいるために過度の振動を受けないからでしょう)。ゲインが下がるパッシブDIに使う場合は注意が必要で、その前にアンプを繋いでゲインを稼いでおかないとノイズがかなり載ります(後段でゲインを稼ぎさえすれば一応音は出ますが)。話し声とか会場のノイズ、別の大きな音がする楽器の被りが入らないのでライブではマイクよりはるかに使いやすいと思います。平面の方(写真左)が吸音面で、蛇皮、弦のどちらに向けるかで音が変わります。どちらも使えますので楽器の特徴や演奏の狙いに適った方を使ってください。蛇皮に向けると重心のある安定した響き、弦に向けるとソリッドになります。尚、ピックアップを弦に、或いは蛇皮に密着させるのは良くありません。しかし一回試してみると傾向がわかるので綿の巻き方の参考になると思います。AcoFlavorを使ったものと比較した録音も参考にしてみて下さい。

         ¥2,500

二胡ピックアップ



二胡用ダイレクトボックス(DI)

 二胡にピックアップを使用した場合に使えるパッシブDIです。パッシブDIというのはつまりトランスなのですが、高いインピーダンスから低いところに変換するのでゲインをかなり失います。しかしここにトランスを使うのは音質面で非常に効果的です。確かに多くのゲインは失うのですが、その代償として得るものが大きいのでギターやベースでは現代に至るまで使われています。これまで二胡用のピックアップは問題が多かったので、その後段に使うDIもありませんでしたから、ここで用意することにいたしました。普通この種のDIは単チャンネルですが、これはペアで2チャンネルとしました。ダイレクトボックスピックアップにアンビエンスマイクの音を混ぜたいという時に2チャンネルあった方が良いということや、ペアで演奏する時、またステレオ再生で使用する時にも使えるからです。2つあるのは何かと用途が広がります。トランスは50~60年代真空管用だったものです。インピーダンスは1次側が50kΩ、2次側が600Ωですが、端子は600Ωを上、50kΩを下にしてあります。DIとして使う場合は下がIN、上がOUTです。

 ピックアップからこのDIに直接接続することは好ましくなく(ノイズが多くなる)、間にブースターかアンプが要ります。弦堂の方からは、PureGainerを推奨しています。

         ¥18,000

 固有のサウンドを確立するためにマルチ録音の初期から使われてきた手法で、有名な例として下に資料を1つ貼っています。もともとモータウンが使っていたトランスはUTC社のもので、こうしてアメリカの音楽にアメリカのトランスでよりアメリカ色を強めていたのですが、トランスを使うのがDIの位置だったということで、この手法は今でも使われています。これはギターの中にアンプが入っているタイプ、エレキはそうですが、アコースティックでもアンプで増幅された音をDIに入力します。増幅された音はDIでかなり失いますので、利得を得るためにマイクアンプに繋がなければならないと書いてあります。
Acme Motown D.I.
 このDIは見たことがないので仕様からの推測ですが、トランスは1つで入力が2つ、出力が1つです。まさか1つの巻線に2つ入力しているわけではないと思うので巻線は2つあると考えたいですが、インピーダンスの異なる別のものを互いに挿す可能性が高いのでそれでも干渉しないということであれば結構特殊なトランスだと思います。アッテネーター(ボリューム)は必要なのでしょうか? ゲインがかなり下がるところをさらに下げるという話なので奇妙ですが、普通はパッシブDIの場合、ボリュームは無いものが多いと思います。無駄につけているわけでは無いと思うので、ボリュームあたりでも音作りをしていこうということなのかもしれません。単純には比較できませんがこのDIは1つで6万、2つで12万ですが、デトロイトで古いものを復刻すると結構コストがかかるのでしょう。最近、米国の産業界が、中国の人件費が上がったから本国に生産を戻すと、それなのになぜか米国製になったら何でも非常に高価になってしまいました。問題は他国の人件費ではなくて自国の雇用ではないかという気がします。中国の人件費は確かに上がっていますが製造水準も高まっているので分野とか物にもよりますが、むしろ安くなっているものも結構あります。こういうトランスの場合は作った地域の文化が出るので米国の音を得たければ米国で巻かねばならず、だからこそデトロイトにこだわっているのですが、こういう考え方は経済度外視なので贅沢なものです。1個6万だと、中国人から「何で? うちに任せなさい」と言われてしまいかねません。スペックは完璧、しかも驚愕の速度による納品さえ可能なのです。それでも文化を考えるとトランスは各国で巻いて欲しいと思います。




弦堂謹製イコライザー

 中国音楽にマッチングするイコライザーは、一般の市場の中では該当するものが無いような気がします。もっとも「中国音楽用」なるもの自体がほとんどありませんが・・。なければ使わなければよいので、それ以上は考えてこなかったわけですが、その一方で市中に出回っているCDやネット上の録音など二胡の音を聴いて満足できるものがほとんどないから、少なくとも自分は何とかせねばならないという感じもありました。しかしだからと言って、イコライザーの必要性が思い起こされる、手段がイコライザーに限られるということもありません。そもそも問題点もよくわかりません。全ての録音が悪いわけではありません。かなり良いものもあるのですが、そこにどんな秘密があるのかも明確にわかりません。弦堂自身が自分で録音しても何か違う感じが払拭できません。そこでトランスで解決する方法などに至って一定の成果を挙げていました。
 古い記録を辿ると、かつて上海の中国唱片廠では中華製の機材と欧米の機材は分けて管理されていたことがわかりました(詳しくはイコライザー ~ 中国音楽の再生と録音参照)。最新式の欧米機材が輸入されてきても、中華真空管コンソール、トランジスターコンソールも同時に運用されていました。いずれも用途によって使い分けていました。中華機材は中国唱片廠が自社開発したもので、同社が市販品の設計もしていました。ジャンルによって機材も変えるというこのような役割分担が理に適っているのであれば、我々が現行の欧米機材を調達しても、中華機材で表現できるものは決して得られないのではないかということになります。頑張って何とかなるのであれば、わざわざ中華機材は製造しないであろうからです。中国唱片廠設計の古いものを現在入手するというのも現実的ではありません。当時の中華機材を観察するとこの時にようやくイコライザーが重要らしいということがわかってきます。

 あらゆる機材を試すこともできないのですが、今はソフトウェアモデリングがありますから、欧米の名機に限定すればいろんなテストは可能です。そうしますと、米Pultec社のイコライザー回路が中国音楽に非常に合うということが判明し、理論的にも適っているという結論になりました。そもそもこれは普通のイコライザーではありません。周波数特性に波を起こすダイナミズム系機材です。中華系の伝統的な録音はコンプレッサーを使わない傾向があります。これといったものが開発できなかったからかもしれませんが、それよりも昔の中国人がコンプレッサーを嫌った可能性の方が高いように思います。トランスなど巻線系のものを多用していました。イコライザーに関しては中華ヴィンテージ機器の回路などを参考にしたところ、スパイス程度の使用であったと思われます。それでもインダクターは使っていました。徹底して巻線中心の音作りでした。当時はさらにLPかテープに録音していました。ここでもかなりのコンプレッションがかかりますが今のデジタルはHiFiです。あらかじめトランスでコンプレッションするのはどうでしょうか。しかしそれはやった上でテープですから。だからこそデジタル時代にはコンプレッサーが必須であろうという考えが出てくるのですが、しかしおそらくもっと良い選択はPultec式イコライザーでしょう。イコライザーというよりも「潰さないコンプ」という感じですが。もしこれが早い段階で中国に入っていれば、中国音楽録音の歴史も変わっていたのではないかと思える程です。それならこれと中国唱片廠で決定された共振周波数(これもソフトウェアモデリングで確認可能)を合わせれば、さらに中華のヴィンテージパーツを使えば良いのではないかということが想定されます。

 中華の伝統的な概念では低音は重視されていません。昔のLP時代には高域もカットされますが、それと同じように低域もカットし、これは何も中国に限ったことではなく、現代でも低域のカットは重要な技術としてレコーディング関係の機材にはこういう機能があちこちで見られる程です。しかしそれは主にミキシングで使われるもので、全てのパートから低音を大きくカットするわけではありません。中国のそれはかなり高いところから全て切り捨ててしまうという特徴があります。欧米だと全部カットするにしても60Hzとかせいぜいその前後ですが、中華は200Hzぐらいです。何でこういうことをするのかは実際に中国楽器を録音して周波数特性を調べればわかります。そもそも低音は全然出ていないのです(かつて中国は非常に裕福な国で、そのためにアヘン戦争まで発生したぐらいでした。経済水準の高さと音楽の音域の高さは比例します)。かといってペラペラの音になるわけでもないという独特の響きを持っています。それだったらそこはカットして中域にエネルギーを集中した方が良いということになり、そのあたりから「中華の毒」というものが熟成されてきたのではないかと思います。低域の欠乏は弱点ではなく1つの特徴でした。強い魅力をもった完成されたものの1つでした。しかし綻びがあるとそこは弱点になります。それはLPやテープを使わなくなったことと関係があるように思います。デジタル時代に入って機材もデジタルを意識したものになっていますが、録音の基本的なやり方は昔からそれほど変わっていない、トランスが使われていたとしてもHiFIになってしまっていることで、以前にあった濃厚な響きが失われているように思います。テープエミュレーターぐらいでは追っつかないぐらい違ってきていると思います。
 録音において最も大きな影響力を持っているのはマイクで、その次がトランスです。これらを吟味した上でテープに録音すれば古典的な録音が可能な筈です。しかし今更テープは難しいものがあります。デジタルで録音するのですが、シミュレーターを使うか使わなくても既にそれなりの水準には迫っていて大きな問題はないと思います。ここまでのところで、そもそも全く悩んでいない、ここで何を言いたいのかよくわからない方は多分欧米とか日本の薫りがしても気にならないのでしょう。欧米のマイクも合わないかと言われると絶対にそういうことはないし、弦堂自身も欧米のマイクは使ったりします。欧米の薫りがしても良いのではないか、たまにはそれも一興ではないかという特に理由もない一種の余裕のようなものであろうと思います。しかし何か作品を作るとなると狙いにもよりますがそれはちょっとどうかなということも有り得ます。マイクで中華と欧米だったらそれぞれオプションとして分けて考えたいところです。特にダイナミクス系機材でコテコテの中華のものが見当たらないという問題点があります。中国人は昔からこういうものに関心を払わなかったようですがそれも当然で、あるがままに自然に録音したいということであればトランスだけで十分だからです。だけどテープやカッテングマシーンには大きく周波数特性を変えるイコライザーは付いていて音はそこを必ず通っているし、その状態で記録して再生時にまた戻したりします。デジタルにはこの過程がないのが弱点になっているのではないか、それに対する一発回答になり得るのが弦堂謹製イコライザーです(そもそもここまでやる人もいないと思うので自分だけやろうかと思っていましたが、一応選択肢として用意しておいた方が良いだろうということで並べることにしました)。やはり回路に通すことによって深みが出るし、それはコイル類だけが齎すものとは別種のものだと思います。

 現行の業務機材は中が非常に微小なパーツで構成されていて、回路は複雑なのですがコンパクトに作られています。パソコンの中身と似たような感じです。こういうものとハイエンドのデカいパーツを使っているもの(上の写真例はシーメンスのモジュール)では音の有機質が違うのではないか、業務機材は大まかにこの2種で大別できるように思います。二胡のようなサウンドの楽器にとって音の有機質は極めて重要、おそらく中国楽器全般にとって音の濃厚さは重要ですが、そうすると音を通すパーツは無視できません。しかしパーツにそうやって拘ると、機材は大きな、そして重いものになります。あちこち移動して演奏活動する人が、ライブで提供するサウンドをより良くしたいという場合は負担になり諦めることもあり得ます。コンパクトで軽く、使う機能だけあれば良いというものがあれば、非常に有用なツールになります。
 このことと、現代の我々の周囲の一般的な機材を見た時に、Pultec元機に内蔵されているバッファーアンプは要らないのではないか、どういうことかというと、これは昔の業務機材なのでInとOutのインピーダンスが600Ωになっています。Inはすぐにイコライザー部から入りますので、ここは600Ωです。ここに1:1のインプットトランスが入っていますが、これを省き、トランスを入れたいのであれば前段に接続する自由があることでトランス選択ができた方が良いのではないか、これで軽量化もできます。イコライザー部のOutは10kΩで、イコライザー内部を信号が通過した時に最大で20dB程ゲイン(音量)も失うので、後段にバッファーを入れて失われたゲインを保障しインピーダンスも下げて600ΩでOutしています。しかしここを10kΩのままOutすれば良いのではないかということなのです。なぜなら最近のほとんどの機器は10kΩまで受けられるからです(説明書で仕様を確認せねばなりませんが、書いていないものはほとんど問題ありません。半世紀前の欧州大陸系コンソールモジュールはバッファーアンプなど以外はIN400,OUT300Ωがほとんどですが、このような業務機器を使う場合は注意が必要です)。元々イコライザーはパッシブでPultecが後段にアンプを置いたのが画期的だったぐらいなので、ただ昔のやり方に戻っただけです。
写真の例は世の中で販売されている最も安いミキサーの一種、演奏の仕事で自前で機材が必要な時に最初に買いそうなものの1つですので、これに繋いでみます。この接続例はイコライザーから1番のLINEに刺してアウトはここではAUXを使いましたが、マイクを使う場合は、マイクから1番のマイク端子に刺し、同じようにAUXから出し、イコライザーに繋いでそのOutを2番のLINEに刺せばいけますし、もっと簡単であれば、イコライザーをINSERTかEFFECTのどちらかに刺せば(それ用のケーブルは要りますが)それでもいけるはずです。これらはINが10kΩまでが仕様なので、そこに繋ぐのに600Ωに下げる必要はありません。またトランスをイコライザーの後段に入れることもできます。INは10kΩ以上(8kぐらいでも大丈夫ですが若干高域優勢。低域を上げ過ぎると音が重くなりますが、そのセッティングにする前提で敢えて8kというのはあると思います。お勧め不可)、OUTは大体低くて600Ωが多いと思います。弦堂で販売していますDIの例は、IN 50kΩ、OUT 600Ωなので(-38dB)、イコライザー(-20dB)と合わせて最大で60dB程失います。この場合はトランスOUTをマイク端子に繋ぎます。一見、何のメリットもないように思えますが、トランスは非常に音味が変わるし、聴き易い、落ち着いた音になりますから、一回入れると外し難くなるでしょう。Pultec元機はIN,OUT両方にトランスが入っており、イコライザー部と増幅部の繋ぎにもインターステージトランスが入っています。何で3つも重たい塊を投入するのか、1つ入れると理由がわかります。弦堂が販売していますヴィンテージトランスの例であれば、IN 1kΩ、OUT 400Ω(-8dB)でイコライザーの前に置けます。

 現代のソフトウェアモデリングで検証した段階では全て仮説に過ぎなかったので、トレイに載せた試作品(上の最初の写真)を用意して確認しましたが、音を出してすぐに仮説が全て正しいことがわかりました(尤も特に難しい仮説を立てたわけでもありませんでしたが)。後はパーツなどの細かいマッチングを追い込むだけでした。使うパーツは古い中国解放軍製を重用しますので、全て単品製作となり、全く同じものはおそらく2つと作れません。パーツの誤差が大きいので1つ1つ計測して共振周波数を合わせていきます。古い、特に軍用パーツは何十年も耐久しますし中華の音が出ます。しかし一部は数が入手できません。製造不可能になった時点で中止し、また入手できれば作ったりになると思います。電子製品は中国から国外に発送できないので、弦堂自身で運んで中国税関で説明する以外に方法がありませんから、入荷状況は対応がかなり窮屈です。また年に1台ぐらいの供給になると思います。製造後、最低1ヶ月は弦堂の方でエージングして様子を見た上で出荷します。音については、弦堂の方で販売には問題があるパーツ(古いものですから汚いとか錆びているが使えるものなど)を集めて同じ回路で組んで、それを「学習」の項で使いますが、ここではトランスなども使うのでイコライザー単品での音ではないですが、ともかく聴いていただけます。
最後に勘違いないように付け加えたい点ですが、弦堂謹製イコライザーは中国楽器専門ではありません。それで西洋楽器用の共振点も用意したりしています。それでも中華のパーツと西洋楽器が合わないのであればこのような共振点は用意はできません。十分良い感じで使えると思います(アジア人だからそう思うのかもしれません。合わないと思う人もいる可能性はあるでしょう)。このことによって異なったオプションが1つ増えることになると思います。もし西洋楽器に全く合わないであろう機材があれば、それは特別に注記します。市販の録音は様々な機材が使われていますので、収録された音はいろんな特徴を持っています。この機材も録音に使うためのものですが、最初に再生で、一般に販売されている音源の再生で使ってみてください。そうすると合う共振点がアーティストによって違う、レコード会社を移籍したらまた違ったりということがあるのがわかります。こういうところからそれぞれの音に対する考え方がわかることがあります。またこの種のイコライザーを使う時のツボもわかってきます。それから録音やPAで使用した方が良いと思います。この機材自体のアクションが独特のものがあるので、一般の機材に慣れておられる方にもまずは再生で様子を伺うことをお勧めしたいと思います。おそらくイコライザーとも思わない方が良いように思います。


美味しそうだ。実に美味な薫りがしそうだ。





二胡弦堂
創業2008年 二胡弦堂